脇元華の挑戦を支える“黄金”シャフト 『SPEEDER NX GOLD』の真価

国内女子のレギュラーツアーでは未勝利ながら、その存在感を十分に発揮しているのが脇元華だ。一昨年は1度、昨年は2度も最終日を首位でスタートしながら、優勝まであと一歩届かなかった。当然、今年こそという思いは強いが、前半戦は思うような結果を残せていない。しかし、後半戦に入って強い味方がついた。藤倉コンポジットの新シャフト「SPEEDER NX GOLD」だ。
■アゲンストで飛距離を大きくロスするのが悩みでした

コースセッティングが年々厳しくなっている国内女子ツアー。特にピンポジションは左右に大きく振られることが多く、ピンに近づけるにはフェアウェイからできるだけ短いクラブで打つほうが有利となる。当然、ドライバーショットには飛んで曲がらない弾道を求められるが、クラブヘッドとともに、ツアープロがこだわりを見せるのがシャフトだ。単に長さや重さ、硬さだけの問題ではなく、キックポイントの位置やしなり感など、その要求は多岐にわたる。
今季ツアー初優勝を狙う脇元がシャフトに求めるのは、自分のスイングリズムに合った振りやすさだが、より具体的な数字をあげればボールのスピン量にある。「私の場合、ドライバーのスピン量が3000回転ぐらいだったので、まずはその数字が小さくなるシャフトが絶対条件でした」。ドライバーのスピン量が多いとボールが吹け上がり、風の影響をかなり受けやすくなる。特にアゲンストではその傾向が顕著で、飛距離を大幅にロスしてしまうのだ。「正直、アゲンストではクラブを思い切り振ることができませんでした」と、悩みは深かった。
そんな脇元に、6月の「ニチレイレディス」練習日、フジクラのツアー担当から1本のシャフトが手渡された。新製品の「SPEEDER NX GOLD」だ。すぐに試打してみると想像以上に振りやすい。ほどよい硬さがありながら、しなり感も十分にある。スピン量を計測してみると2500回転前後に収まっていた。脇元の目が輝いた瞬間だった。
■試合に即投入し、今季最高位に

ツアープロには、クラブやシャフトの変更に抵抗があるタイプとないタイプ、大きく2つのタイプがいる。脇元は前者だった。にもかかわらず、ニチレイレディスの本戦を「SPEEDER NX GOLD」で戦うことを即決した。それだけの手応えを感じていた証左であり、実戦で自分の打球がどのような変化を見せるのかを確かめたかったからだ。
「どんなに練習場でいい球が出るクラブでも、いざ実戦に投入してみると、同じ球が出ないことってよくありますからね」。リラックスして打てる練習場と違い、コースでは視覚的なプレッシャーもかかる。まして本番の試合ともなれば、アドレナリンが出たり、力みが生じたりして、練習場と同じスイングができるとは限らない。ところが、「SPEEDER NX GOLD」は実戦でも練習場と大きく変わらない弾道を描いた。

「自分のスイングに対して素直にヘッドが下りてくるので、プレッシャーがかかったときでもいつもと同じ感覚で振れました」。弾道の高さをキープしたままスピン量が減ったことで、アゲンストでも飛距離が落ちることなく、思い切り振れたという。ちなみに、フォローではキャリーはもちろん、ランも多く稼げたという。実戦でのテストは文句なしの合格。そのまま最終日まで使い続け、今季最高の7位タイでフィニッシュした。
■切り返しで「タメ」をつくりやすい特性

ニチレイレディス以降も「SPEEDER NX GOLD」を使い続けている脇元は、「明治安田レディスゴルトーナメント」でも9位に入るなど、堅調なゴルフを続けている。なぜ、このシャフトが脇元のスイングに合ったのだろうか。
「SPEEDER NX GOLD」は脇元が以前使用していた「SPEEDER NX GREEN」をベースに進化した後継モデルである。新たに「DHX」と呼ばれる機能を搭載。これはカーボンシャフトの積層技術を活かし、従来の層に新たな層を加えることで、データ的にヘッドスピードのアップに成功しているという。また、従来からある「VARIABLE TORQUE CORE」によってシャフト挙動のバラつきを抑え、強弾道を生み出す。まさに“最高初速&最強弾道”を実現するシャフトだ。
以前使っていたシャフトと同じ流れをくむ製品だったためにスムーズに移行できたこともあるが、理由はそれだけではない。脇元が重視するダウンスイングの切り返しで、理想的なタメをつくりやすかったからだ。

「プロは切り返しのときにショットの成否を理解できますが、このシャフトはたとえタイミングが合わなかったとしても、タメができるのでヘッドが先に下りることなく振れるんです」
その結果、インパクトでクラブフェースをスクエアに戻すことができるというわけだ。ツアー担当者によれば、調子は「中調子」だが、手元の剛性をやや緩めてある分、タメをつくりやすい「元調子」に近い動きができる特性があるという。