フジクラシャフト小高工場がリスタート 稲村亜美が見た震災から復興した現場
■稲村さんも驚きの耐久性試験
小高工場に生産拠点を移したことで生まれた一番のメリットは、これまで以上に効率的にシャフトを製作できるようになった点だ。「開発から量産までの工程を1拠点で完結できるのが大きいですね。さらに、多くの自動化設備を導入しているので、高い品質管理能力と生産能力を実現できているのが強みです」と庄子氏。
稲村さんも、「原町工場では人が行っていた作業を、小高工場では機械が行っていました。より速くより正確に作業ができると思いますし、そこが最も変わったように感じました」と話す。見学中に手作業でシャフトのラベル貼りに挑戦した稲村さんだが、やはり機械の正確性とスピードにはかなわなかった。
稲村さんがもっとも驚いていたのが、Air Cannon試験機と呼ばれるシャフトの耐久性を検査する機械だ。シャフトを装着したクラブヘッドに対し、段階的にスピードを上げて発射されたボールをフェース面に衝突させる。しかも、スイートスポットだけでなく、トウ寄り、ヒール寄りにボールを当てる耐久試験機だ。基準を満たさない設計や製造過程に問題のあるものだと折れてしまうほどの衝撃を与えるという。
「そのような試験に合格したものだからこそ、フジクラさんのシャフトは信頼できると思いましたし、ユーザーにいいものを届けたい気持ちが伝わってきました」と稲村さん。工場の敷地内には、350ヤードを超えるテストフィールドがあり、ロボットがボールを打つことで最終的なデータを集める仕組みになっている。
■クラブメーカーに対応できる技術力が必要

藤倉コンポジットが製造過程の進化を求めるには理由がある。「特殊な材料を数多く使うようになり、設計の難易度がかなり上がっています。当然、それに対応するだけの技術力が必要となります」(庄子氏)。ここ数年来、カーボンシャフトの性能は著しく向上している。以前と同じ技術力では製作に対応するのは難しく、いろんな面で技術力は向上しているという。
さらに、シャフトメーカーだからこその課題もある。各クラブメーカーが高慣性モーメントのクラブヘッドを開発するなど、その進化は目覚ましい。当然、シャフトメーカーとしては、その性能をフルに引き出すシャフトを用意しなければならない。飛距離性能やコントロール性能を活かすかどうかはシャフト次第ともいえるからだ。しかも、各クラブメーカーの特性にも合わせる必要があるだけに、開発の道は果てしない。
稲村さんも「私もフジクラさんのシャフトを使うようになってから飛距離も伸びましたし、ショットの安定感も増していますが、それだけの企業努力をなさっているからなんですね」と、改めてシャフトの重要性を感じていた。
■これまで製作したシャフトは約2500種類を超える

小高工場では工房限定モデルの「JEWEL LINE」のように国内市場向けに付加価値の高い製品の生産や、開発に力を入れている。そのため、少ない機種を大量生産するのではなく、より多くの機種を少量生産する傾向にあるという。
現在、同社のカタログ品ラインアップは561の品番を数える。同じ種類のシャフトでも硬さや重さなどによって分けた数字ではあるが、かなり破格なのは間違いない。それを聞いて稲村さんも耳を疑った。「てっきり120ぐらいだと思っていました。だからどんな人にも合うシャフトが存在するんですね」。ちなみに、同社では毎年新製品をリリースし、4年で旧モデルは生産終了となる。それらを全て含めると軽くカタログ品のみで2500を超えるというから圧巻の数だ。

「当社はシャフトに特化して製品の開発を長年行ってきていますし、シャフトの開発に費やせるコストもクラブメーカーさんと比べると大きいと思います」という庄子氏の言葉には、シャフトの性能にこだわりを持って開発している矜持が込められていた。シャフトの性能はプロや上級者だけでなく、ビギナーやアベレージゴルファーにも十分感じられるという。実際、これだけの品番があれば、必ずや自分に合ったシャフトを見つけられるだろう。ヘッドやボールと同様に、シャフトの性能は今後も確実に上がり続けそうだ。

稲村亜美(いなむら・あみ)
1996年生まれ。東京都出身。2015年4月、自動車メーカーのCMで豪快なバッティングが“神スイング”として話題となった。現在、スポーツ番組、バラエティ、CMなど幅広く活躍中。ゴルフ番組のアシスタントをきっかけに始めたゴルフは2021年に100切りを達成。現在のベストスコアは85。
稲村亜美のフジクラシャフト小高工場レポートの模様はゴルフ情報番組「稲村亜美・アンタッチャブル柴田の『ゴルフスイッチ!』」で放送、配信します。ゴルフネットワークプラスアプリで無料視聴できますのでぜひご覧ください。
(撮影:角田慎太郎)