タイトリスト「GT2/3/4」を一斉計測 飛ぶクラブでなく“飛ばせる”クラブ/外ブラ1W研究#10
テーラーメイド、キャロウェイ、ピン、コブラ、タイトリスト、5メーカーの最新ドライバーを徹底研究。ヘッド計測をクラブ設計家でジューシーを主宰する松吉宗之氏に、試打を野仲茂プロに依頼した。今回はタイトリスト「GT」シリーズの3モデルを一斉計測!
数字の詳しい説明は下記の記事を参照してほしい。
“25年外ブラドライバー一斉計測”して分かった!依然「重心深度>重心距離」傾向が強め
本特集では「重心深度」と「重心距離」の関係に注目。「2つの数字が近い(差が1~1.5mm程度)と、ヘッドから感じるヘッドの印象が普通、深度のほうが大きいと、やさしい、つかまってくれる。逆に深度のほうが浅いと、つかまらない、すべる、ちょっと難しい…という印象になると思います。大前提として、それぞれの数値の大小が顕著であれば、この数字を重視して性能を判断します」(松吉氏、以下同)
そこで、普通を黄色、つかまるクラブを青色、つかまらないクラブを赤色で示した。
「GT2」は他社の“LS系”に似た数値
GT2は、オフセンターヒットにより飛距離をロスしているゴルファーに向けて高MOIによる弾道安定性を高めたモデル。
「GT2は、テーラーメイド『Qi35 LS』やキャロウェイ『ELYTE ◆◆◆』などと同じように、プロモデル向けの重心性能が与えられています。重心距離は長過ぎず、深度とのバランスが取れていて、重心アングルも大き過ぎません。“ややつかまる”ぐらいの、現代の主流と言っていい重心位置です。メーカーは高MOIと言ってはいますが、左右MOIは5000 g・cm2に達していません。ですがこれで必要十分。これより大きくすると扱いにくく、スピードが失われる恐れがあるのをよくわかったうえでの設計です。数字からは、とりあえず右に行くことはないという感じを受けますね。タイトリストのモデルの中ではやさしい味付けなので、アマチュアに難しいなんてことは決してありません。また、『2』のシェイプが前作とけっこう変わった(『3』に近付いた)ので、ツアープレーヤーの使用が増えたのも納得です」
上手な人が叩ける「GT3」
「GT3」は、打点が比較的安定しているプレーヤー向けに細かい調整機能を持ったモデルだ。
「ご存じの通り、モデル名に『3』の付くドライバーは歴代、タイトリストのど真ん中“ザ・プロモデル”です。浅重心で重心距離が短くMOIも小さめ。つかまらない感覚を受けますので、上級者に扱いやすく設計されていると言えます。重心アングルも20度を切っているのでつかまらない。逆説的に言えば“クラブ側からはつかまえない”モデルです。勝手につかまらないので上手な人が思い切って叩けるという、近年の他社モデルにはあまり見られない独自性がありますね。左右MOIは4300g・cm2ですが、ヘッド体積実測値453ccからするとやや小さめ。でも、打って難しいとは感じさせないギリギリの値です。ここが、当該モデルを使う人の扱いやすさを重視するタイトリストの上手なところですね。自分の意志にクラブがどこまでも付いてきてくれるので、GT3を扱えるような人が打てばとにかく楽しいと思います」
「GT4」はちょっと古風な味付け
GT4は、ハイスピンが原因で飛距離をロスしているプレーヤーに向けた低スピンモデル。
「ヘッドサイズとMOIが小さく 重心距離が短く深度も浅いです。今回計測した中ではトップクラスの浅重心モデルで、これが低スピン弾道を生み出します。上記GT3は9度のヘッド、本モデルは10度のヘッドを計測したため、ロフトを揃えて比べればGT4のほうが浅いか同等くらいもしれません。数字だけ見れば最近流行しているミニドライバーと同じような重心特性で、GT3よりもさらに自分でつかまえられます。GT3は大きいヘッドがやや苦手で今風のスイングを取り入れながらも叩きたい人向け。GT4は過去の自分の感覚を維持したい人向けの“やや古風”な性能だと言えます。寛容性はかなり低いですが、小回りが非常に効くヘッドとプレーヤーの感覚が合致すれば低スピンでかなり飛ばせるクラブです」
ゴルファー側に立ったクラブ作りが光る
計測を終えた松吉氏はタイトリストに、他社とは少し異なる姿勢を感じたという。
「タイトリストは、あくまでゴルファー側に立ったクラブ作りを追求している印象です。飛ぶクラブではなく、飛ばせるクラブ。コースでどういうスイングをしてどういう球を打ちたいか、それを実現するために細かく合わせて使う道具を作るメーカーで、コブラにも同じことを思います。近年は、ある程度以上のスキルを持つプレーヤーの使用を想定しているモデルが多いですが、基本性能は確実に押さえているので、一般的なゴルファーなら十分に扱えます。そのうえで、ミスが大きなミスにならない程度のMOIを維持しながら、シビアなインパクトコントロールや、強く振っていきたいなどプレーヤー目線の感覚を絶妙なバランスで実現していると感じます」(取材・構成/中島俊介)