「ボーケイ 58度」ソール7種を達人が試打 アベレージは「D」上級者は「T」が◎/25秋ウェッジ研究 #3
ソール形状やバウンス効果にクローズアップして、今どきウェッジを研究するこの企画。今回は芝が元気なコースで、ソールグラインドによってどういう違いがあるかを検証した。1回目は「ボーケイ」(タイトリスト)シリーズを打ち比べ!
●#1 「ハイバウンス=やさしい」は本当か?
●#2 「平ら」と「丸め」やさしいソールはどっち?
最も多種のソールを市販するボーケイを打ち比べ
ウェッジにおいて“ソールグラインド”の概念を広めたリーディングブランドであり、豊富なグラインドのバリエーションをそろえる「ボーケイ」シリーズ。その最新ウェッジ(58度)のグラインド違いをグリーン周りでテストした。
テスターは、20年にわたる「ボーケイ」のユーザーで、アプローチの精度の高さと多彩なテクニックを持ち、ツアー3勝をマークした丸山大輔プロ。自身は三日月形状の「Mグラインドの59度(60度ヘッドのロフトを1度立て、バウンスを1度減らしたもの)を使う。
その丸山プロは、アマチュアのウェッジ選びについてこう述べる。
「58度はアプローチでもバンカーでも使うでしょう。日本の多くのコースは地面がやわらかく、野芝やコーライ芝のフェアウェイでボールが浮いていることが多いので、基本的にはバウンスがある程度あったほうが良いと思います。アマチュアの皆さんなら10~12度あるとやさしいのではないでしょうか」
フィールドテストをしたソールグラインドは「SM10」のD、S、M、T、K(バウンス6度と14度)と「ボーケイ フォージド」のBの7種。丸山プロのインプレッションとともに、前回と前々回で解説をしたクラブデザイナー・松吉宗之氏(ジューシー)のコメントとソール分類も紹介する。松吉氏はソールのトウ-ヒール方向の形状に注目、平らなソールはインパクトが安定している人向け、丸めはいろいろな打ち方をしたい人とインパクトが不安定な人の両方に合うという。詳細は♯2を参照されたい。
テストでわかった 「K」はバウンス違いで性能激変!
●SM10/Dグラインド
ソールのトウ・ヒールとトレーリングエッジ側を削りながら、高いバウンス性能を備えている(58度/12度)。入射角が鋭角なプレーヤーに最適。
丸山「ソールの後ろのほうに“頂点”があってバウンスの効果がしっかり感じられるので、アプローチとかバンカーが得意じゃない人もやさしく打てます。そして、フェースの開きやすさもある。アマチュアにかなりオススメです」
松吉「ソール面を見ると、ヒール側のほうが狭めでトウ側のほうが広めなので、フェースを開いて打ってもバウンスが効いてくれます。ソール面をしっかり使って打ちたい、しかも、いろんなワザを使いたい人に合います」
●SM10/Sグラインド
トレーリングエッジ側を削って幅を狭めたフルソール。スクエアでも開いても打ちやすい。ハンドファーストに構えたり、ロフトをコントロールしたい人に最適。
丸山「ソールの形状もバウンスの効きもオーソドックスな感じ。“P/Sの延長”でフルショットも打ちやすいし、ピッチ&ランで寄せるイメージも出しやすいです。ソール幅が狭めなので、フェースを開いて打つこともできる」
松吉「スペック通り(58度/10度)のバウンス効果があり、スクエアに打ちやすいですが開けなくもありません。ソールの真ん中のほうが効くので、開かないで打てばふかふかのバンカーもOK。オールラウンダーなソールです」
●SM10/Mグラインド
フェースを開いたり閉じたりするアプローチを好むプレーヤーのために設計された、多彩な球を打ち分けやすい多目的グラインド。シャローな入射角に合う。
丸山「オーソドックスな三日月形状のソールで開きやすく、ボクも使っています。バウンスが8度なぶんだけミスにややシビアな感じがありますが、ある程度はボールへクリーンにコンタクトできる中~上級者に合うグラインドです」
松吉「リーディングエッジから山の“頂点”までのソール面が平らで、ソールの機能が特徴化されています。繊細でセンスがあり、その人に合えば打ちやすく感じるグラインド。練習量が多いほど、アプローチの精度がより上がるでしょう」
●SM10/Tグラインド
ローバウンス(4度)を求めるプレーヤーに最適。ソールのトウ、ヒール、トレーリングエッジを最大限に削り、どんなコンディションでもボールにコンタクトできる。
丸山「ソールの真ん中がV字になって山の“頂点”から後ろが急角度で落ちているので、フェースを開いても刃先が浮きすぎないしバウンスが邪魔になりません。振っても球が飛ばず、狙ったところに落として止められます。スクエアに打っても意外と刺さりにくい。まあ、テクニシャン向けですよね」
松吉「フェースをコントロールしたい人にとって、ソールが邪魔になりません。ただ、エッジ側にしっかりと“角度”がついているので、深く入っていくようなミスをある程度カバーしてくれます。一本でいろんな球を打ち分けたい人に」
●SM10/Kグラインド(バウンス6度)
ワイドなフルソールでありながら、入射角が浅めのプレーヤーや硬めのコース環境でワイドソールの恩恵を受けたいプレーヤーに適するローバウンスタイプ。
丸山「バウンスが6度なだけあって、ボールと地面の間にスッと入っていきますね。幅広ソールでやさしいイメージもあるけど、エッジ側がシャープだからボールの近くに入れたいところ。キレイに入ったときのスピンはスゴいです」
松吉「ふかふかなところでも、ヘッドが潜りすぎず進行方向に滑ってくれるワイドソールです。バウンス効果が抑えられているので“いろんな入れ方”をしやすいですが、ヘッドが鋭角に入ると刺さりやすいです」
●SM10/Kグラインド(バウンス14度)
キャンバーが強化されたワイドなフルソールにより、ソフトな芝や砂などのコンディションで高い許容性を発揮する。こちらはハイバウンスタイプ。
丸山「バウンスが14度あると、見た目にもやさしくて安心感があります。エッジ側に角度がついているので地面に刺さりにくいし、手前から入ってもソールが滑ってボールにコンタクトできるでしょう。バンカーで威力を発揮します」
松吉「やわらかいライでも潜りすぎず滑ってくれる幅広ソールです。しかもハイバウンスだと、洋芝のコースやふかふかなバンカーのコースに行く人は◎。注意点として、バウンス効果がダイレクトに強くなるぶん“いろんな入れ方”はしづらいでしょう」
●ボーケイ フォージド/Bグラインド
ソールのトウ、ヒール、トレーリングエッジにグラインドを施した万能型。ソールがフラットで、とくに硬めのライでボールを捉えやすい。
丸山「バウンスを“ドン”と当ててスピンをかけられるし、ソールを生かして打てます。エッジ側の角度はシャープですが“面取り”が施されているので突っかかりづらいし、ベアグラウンドなどタイトなライでもボールを拾いやすそう」
松吉「三日月形状のソールで開けますが、トウ-ヒール方向は真っ平らなので、バウンスの効果を出しつつ、硬いライや薄芝でもヘッドをクリーンに入れやすい。こういう平らなソールこそ、ライ角をフィッティングしておく必要があります」
それぞれのグラインドが“キャラ立ち”している
「ボーケイ」シリーズのソール違い7タイプのウェッジを打ち終えた丸山プロはこう話す。
「アプローチに自信がある人やテクニシャンなど上級者には『T』グラインドがオススメです。やりたいことができるので、打っていて面白いですね。一方で、バウンス効果が感じられてミスの許容性があり、アマチュアにやさしいグラインドが『D』。ワイドソールの『K』グラインドについては、ローバウンス(6度)は思いのほかシビアで技術が求められますが、ハイバウンス(14度)はアバウトさがあります」
いずれにしても『ボーケイ』のウェッジは、各ソールグラインドの特徴をうまく出していますね。それぞれのキャラクターが確立されていて、ターゲットが明確です。どれも構えやすいし。プロからのフィードバックの量が圧倒的、という強みもあるのでしょう。売れるわけが分かりますね(笑)」
文:新井田聡
写真:有原裕晶
取材・編集:中島俊介
取材協力:平川カントリークラブ