「DS-ADAPT」ドライバーを一斉計測 “ロフト別重心設計”に見られるコブラの地力/外ブラ1W研究#8

外ブラ1W研究
DS-ADAPTシリーズから、X/LS/MAX-K/MAX-Dを一斉計測!

テーラーメイド、キャロウェイ、ピン、コブラ、タイトリスト、5メーカーの最新ドライバーを徹底研究。ヘッド計測をクラブ設計家でジューシーを主宰する松吉宗之氏に、試打を野仲茂プロに依頼した。今回はコブラ「DS-ADAPT」シリーズの4モデル“6ヘッド”を一斉計測!

2025年外ブラドライバー“一斉計測”
2025年外ブラドライバー“一斉計測”

数字の詳しい説明は下記の記事を参照してほしい。
“25年外ブラドライバー一斉計測”して分かった!依然「重心深度>重心距離」傾向が強め

本特集では「重心深度」と「重心距離」の関係に注目。「2つの数字が近い(差が1~1.5mm程度)と、ヘッドから感じるヘッドの印象が普通、深度のほうが大きいと、やさしい、つかまってくれる。逆に深度のほうが浅いと、つかまらない、すべる、ちょっと難しい…という印象になると思います。大前提として、それぞれの数値の大小が顕著であれば、この数字を重視して性能を判断します」(松吉氏、以下同)

そこで、普通を黄色、つかまるクラブを青色、つかまらないクラブを赤色で示した。

●テーラーメイド編
●キャロウェイ編
●ピン編

「X」がコブラのスタンダードモデル

外ブラ1W研究
計測ヘッドの表示ロフトは9.0度

DS-ADAPTシリーズには4モデルのヘッドが用意されているが、まずはシリーズのスタンダードモデル「X」から。

「今回のコブラは『同じモデルでもロフト角によって重心位置が異なる』と明確にアナウンスしてきました。これはとても理にかなったことだと思いますし、そのメリットなどは後述します」

外ブラ1W研究
計測ヘッドの表示ロフトは10.5度

「Xは左右MOIが4600~4700 g・cm2台で、ヘッド体積に対するやさしさがしっかり出ています。重心距離と重心深度がほぼほぼ同じで、ヘッドから受ける感覚はシンプルに扱いやすい。現代ドライバーのテクノロジーを享受しながらも、普通に気持ちよく振りたいならこのXがいいでしょう。コブラのドライバーの使いやすさを、Xが色濃く受け継いでいます。

9度は“真っすぐ・ド標準”、10.5度は“少しつかまる”味付けになっています。ロフト別に重心の距離と深度、重心角がしっかり異なるので、自分のヘッドスピードで選ぶといいでしょう。速ければ9度の低スピン性能が必要ですし、標準的なら10.5度。普通のメーカーだと、実質的にはロースピンモデルの9度と標準モデルの10.5度しか選択肢がないとなりがちで、「標準モデルに低スピン過ぎない9度がない」ということがあります。そこをコブラはモデルとロフトの細分化で解決しているのがすばらしいことだと思います」

「LS」には“つかまらなさ”がしっかりある

外ブラ1W研究
計測ヘッドの表示ロフトは9.0度

続いて、男子プロが好むロースピンモデルのLS。

「9度も10.5度も、重心距離より重心深度が浅く、ヘッドの感覚よりつかまらない雰囲気を出しています。こういうつかまらないモデルは他社含めて少なく、今回計測した中では本モデルとタイトリスト『GT3』と同『GT4』だけでした。左を強く嫌がる上級者に好まれる特性ですね。ちなみに、後に出てくる『MAX-D』も重心深度が浅いですが、つかまる仕様です。

外ブラ1W研究
計測ヘッドの表示ロフトは10.5度

ロフト9度は重心距離39mmで、約21度の重心アングルはちょうど真っすぐ行くバランス。ヘッドから受けるつかまらなさはしっかりあるものの、決して右に行く動きはしません。この浅重心度合いだとインパクトでフェースが上を向くことはないので、インパクトロフトはロフト通り。9度はめちゃくちゃ低スピンになる可能性があると思います。

10.5度は9度よりもちょっと長くちょっと深いです。重心高も異なり、重心高2が9度より低いので、9度よりもスピンが入ります。左右MOIの約4400 g・cm2はちょうどいい振りやすさと寛容性のバランス。総じて、10.5度は9度を少しマイルドにした感じで、いいスイングをしている人にとっては低スピンになる感覚を感じとれるでしょう。LSの10.5度とXの9度で比較した場合、打ち方によって合う合わないがありそうですね。打点のバラつき度合いが気になるなら寛容性が少し高いXがおすすめです」

振れてバラつく人向けの「MAX-K」

外ブラ1W研究
計測ヘッドの表示ロフトは10.5度

続いて今回初お目見えしたモデル「MAX-K」。メーカーによれば、最も寛容性が高いという。

「コブラの中では左右MOIが5600 g・cm2と大きく、ヘッドの大きさを許容できれば真っすぐ飛ぶ性能です。44.8mmの重心距離は非常に長く、45.8mmの重心深度も非常に深い。これにより大きなスイートエリアが生まれています。さすが寛容性に振り切っただけはありますね。28.5度の重心角でほどよくつかまりますが、左に行くほどではありません。フェースを真っすぐ向けられる人の、打点のバラつきだけをカバーしてくれるヘッドと言えます。ヘッドスピードが速くて振り回せるが、毎回違う打点で困っている…というような人には大きな武器になり得ます」

「MAX-D」はコブラ流のドローバイアス

外ブラ1W研究
計測ヘッドの表示ロフトは10.5度

最後に「MAX-D」。いかにもつかまりそうな名前だが…?

「これはすごくおもしろいと思いました。“コブラ流ドローバイアス”は、つかまえやすさに重きを置いた重心設計です。ひと言で言えば、勝手に左を向かず自分で動かしやすい。このサイズ感に40mmの重心距離で、取り回しが抜群です。自分でコントロールもでき、ほどよくつかまってもくれます。重心が深くないのが一番のポイントで、これが扱いやすさを生んでいます。ヘッド重量は軽くて高MOI、過度に左に行かずスピン量が増え過ぎない。ちょっと長めに組んでも面白そうです。長くてもフェースを真っすぐ当てられるシニアゴルファーなどによいでしょう。

LSの9度も重心距離は39mm台ですが、MAX-Dの重心アングルは約24度。同じ重心距離で比べると、本モデルは重心角でもちょっとつかまるようにできています。他社のMAX系ヘッドに見られる、一度動き出したら左に向かって一直線…といった動きはせず、上手な人が打つとちょっとつかまる、くらいの味付け。“MAX系”とひと括りにされて全部動きが鈍い、みたいに思われがちですが、コブラのMAXは、素直に真っすぐ飛ぶバランスが取れているKと、動かしやすくてちょっとつかまるDという2通りのラインアップです」

コブラの設計力の高さに驚かされる

DS-ADAPTでコブラは、重心位置の異なるモデルをなぜこのように数多く発表したのだろうか?

「コブラは恐らくロフト別の重心設計をもともとやっていて、今回公表しただけ、という可能性もあるでしょう。ドライバーの金型は、何種類作るかでコストが変わります。コストを削るため、ボディ側の金型は同じでカップフェースの装着角度を変えることでロフト展開をするケースもあるんです。しかし今回のコブラは、同じ金型を使いながら中のパーツの位置だけで重心位置を変えているとも考えられる。性能の異なるモデルをきちんと作り分け、さらにその中でロフト別の重心設計をするのは完全に意図的。ここにコブラのエンジニアの高い志と技術が表れていると言っていいでしょう。ピンにも同じことを感じます。

外ブラ1W研究
コブラが公開している説明図。ボディの金型は共通…?

広告で使われるキャッチコピーやゴルファー心理に訴えかける理論や物語など、ややもすると真実でないものまで重要視されることも多いゴルフ業界。そのなかでコブラ社の製品は、物理的な性能を確実に出すための構造や製法を常に追求している印象です。今回の測定でも、ロフト別に確実に重心性能を変えたり、MAX系モデルをあえて2つ作ったりと、理にかなった非常にすばらしい設計を行っているとクラブ設計者の目線から感じます。物理を優先するがあまり疎かになりがちな『プレーヤーの感覚』もしっかりと取り入れ、真っすぐに打ちやすいバランスの整ったモデルを常に作り続けているなど、設計力の高さを私は強く感じます」(取材・構成/中島俊介)

この記事の画像をすべて見る

松吉宗之(まつよし むねゆき) プロフィール

ジューシー株式会社の代表取締役。ゴルフクラブメーカーにて、クラブの設計開発に20年以上携わる。2018年にジューシー株式会社を設立。自社製品だけでなく、OEMでの設計も行う。3D CADを用いたデジタル設計をいち早く導入し、数値に裏付けられた革新的な性能のクラブを多数開発。その傍ら、膨大な数のクラブヘッドを自身で測定し、ゴルフクラブの性能や製法の進化を独自に研究し続けている。

広告の後にも続きます

アクセスランキング

  • 総合
  • ツアー
  • レッスン
  • ギア情報

SPECIALコンテンツPR

特集記事PR

こちらもおすすめ

GDOサービス

GDOのサービス