ツアープロでも間違える! ほんとうの「フェースを開く」教えます by丸山大輔/25秋ウェッジ研究 #4
ソール形状やバウンス効果にクローズアップし、今どきウェッジを研究する本企画。ウェッジの解説コメントに登場する「フェースを開いたときに~」という表現、これは具体的に何を指しているのか。今回はこの「フェースを開く」について、前回同様、達人・丸山大輔プロに教わる。
●#1 「ハイバウンス=やさしい」は本当か?
●#2 「平ら」と「丸め」やさしいソールはどっち?
●#3 ボーケイ58度のソール7種を打ち比べ
フェースを開くのは高い球で止めたいとき
本企画2回目で、クラブデザイナーの松吉宗之氏(ジューシー)が、フェースを開くことで「ロフトが寝て球が上がる」「ラフや砂の抵抗が減る」「ソールが前に滑る」というメリットがあると解説した。結論から言うと、今回の丸山プロのレッスンで、打ち手の側からもこの3つの利点があることが図らずも証明された。
中でも、一番目の高くてやわらかい球が打てることによって、速いグリーンや砲台グリーン、ショートサイドのアプローチでもボールを止めやすくなる。
「エッジまでの距離があってエッジからピンまでの距離が短いときは、ある程度のキャリーを出してボールを止めなきゃいけません。その状況においてハンドファースト気味でフェースをスクエアにして打つと、球の高さやスピンが足りず、ピンをオーバーしやすい。フェースを開いて打つと、ロフトが増えるので球が上がって飛ばず、グリーンに落ちて止まってくれます。これがフェースを開く目的です」(丸山プロ、以下同)
フェースを右に向けるのでなく、ロフトを増やす
ところが多くのアマチュアは(そしてツアープロの中にも…!)、ウェッジでフェースを開くときの打ち方を間違えて覚えているという。そもそも「フェースを開くってどういうこと?」と思う人もいるはずだ。
「“フェースを開く”という言葉に惑わされている人が非常に多いです。フェースを開いてくださいというと、スタンスはスクエアでハンドファースト気味の構えのまま、フェースだけを右に向ける人がほとんど。ですがこれは誤りです。この構えのままターゲットへ真っすぐ振ると、球が右に行ったり、フェースを返したりしてミスにつながってしまうのです。
そうではなく“ロフトを増やす”イメージが正解です。フェースの向きはスクエアで、ロフトを2度くらい増やす、つまり、ハンドファーストの構えからロフトを寝かすとハンドレートになる。まずはここまで理解してほしいです。そうしたら次は、スタンスをオープンにして、体はターゲットに対して左を向きます。こうすると、体の向きなりに振ると自ずとカット軌道になり、球が上がってスピンが多くかかって止まる球が打てるのです」
つまり、フェースを開く(右を向く)のとスタンスを開く(左を向く)のはセットで、そのスタンスと体の向きに沿って振れば、右と左が“プラマイゼロ”になる。そして目標へ高い球が出てスピンがかかり、グリーンにキャリーして止まる。まずはここまでの基本を押さえておこう。
「ロフトを寝かせる」意識でアドレスを作る
ここで改めて、丸山プロは「フェースを開く」というよりは「ロフトを寝かせる」意識が大事だと説明する。球を上げてスピンで止めるアプローチの考え方と手順を、細かくかみ砕いて解説してくれた。
「まずは通常通りにターゲットへスクエアに構えたら、ロフトを寝かせるために、グリップ(手元)を体の右側に移動してハンドレートにします。その後フェースをターゲットに向けながら、ボールを中心にして反時計回りに自分が回ってスタンスをオープンにする。するとグリップ(手元)が体の真ん中に収まり、スタンスと体がターゲットに対して左を向きます。
つまり、スタンスと体の向きに対してはフェースが開いていますが、ターゲットに対してはスクエアに向いて、ロフトが2~3度寝るということ。そして、オープンスタンスなりに大きめに振ると、球が止まります。ロフトが寝るほど球が飛ばないから振れるし、振れるということは芝の抵抗に負けません。しかもスピンが入るんです」
バウンスが効いてソールが滑るのでアバウトに打てる
ハンドレートにしたりフェースを開いたりしてロフトを寝かせることで、リーディングエッジが地面から少し浮く。実はこれがアプローチのやさしさを生むという。
「地面とリーディングエッジにすき間ができるのは、バウンスが効いた状態です。ということは、多少手前に入っても、ダフらず刺さらずソールが滑ってくれて、ボールにコンタクトできる。刃先をキレイに入れる、というシビアな感覚はいりません。ソールを滑らせるイメージで打てばOKです。こういう構え方・打ち方をするとアプローチが難しくなるんじゃないかと思うかもしれませんが、これはむしろやさしくなるんです。アマチュアの皆さんも、ぜひ覚えてもらいたいですね」
“フェースを開くだけ”で止めるアプローチは技量が求められる
丸山プロが言うように「フェースを開く」という用語に捉われると、体とスタンスをスクエアにしたまま、ハンドファースト気味にしてフェースを開いて構えてしまう。
「それだけではリーディングエッジが浮かなくて、バウンスがあまり効きません。ダフり・トップのミスになりやすく、距離も方向も不安定になってしまいます」
実際に日本のプロでも、アプローチでスクエアなスタンスのままフェースを開いて打つ選手は多いという。そう構えてからフェースのローテーション(開閉)を使って打つので、プロのように上手くミートできればスピンがかかって止まるが“飛んだり・飛ばなかったり”があるし、モノにするには非常にたくさんの練習量が必要だ。
しかし今回、教えてもらった“丸山式”の構え方・打ち方をモノにすれば、球が上がってスピンで止まるアプローチがやさしく打てる。これは一刻も早く、練習場で、芝の上で試したくなってきたぞ――。
文:新井田聡
写真:有原裕晶
取材・編集:中島俊介
取材協力:平川カントリークラブ