「MG5」「OPUS SP」「RTZ」「s159」“外ブラ系”のソールを達人が打ち比べ/25秋ウェッジ研究#5
今どきの最新ウェッジをソールの形状やバウンスに注目して研究するこの企画。5回目の今回は“外ブラ”中心の4モデルをピックアップ。計11種類のソールグラインドを打ち比べて、そのインプレッションを紹介する。
芝の上で打ってこそ、ソールの違いが分かる
最新ウェッジ(58度)のソールグラインド違いをグリーン周りで試打。テスターは、20年にわたる「ボーケイ」(タイトリスト)のユーザーであり、高精度のアプローチと多彩なテクニックでツアー3勝をマークした丸山大輔プロ。自身はボーケイSM9の59度(60度を1度立てて、バウンスが1度減った)で、三日月形状の「Mグラインド」を愛用する。
フィールドテストをしたウェッジは、「OPUS SP ウェッジ」(キャロウェイ)、「MG(ミルドグラインド)5 ウェッジ」(テーラーメイド)、「s159 ウェッジ」(ピン)、「RTZ ウェッジ」(クリーブランド)の4機種。各モデルのソールグラインドの総計は11種類にのぼり、テクニックを使えるものを中心に揃えた。
さらに、このウェッジ特集の3回目(ボーケイ編)と同様、ウェッジを試打した丸山プロのインプレッションとともに、クラブデザイナー・松吉宗之氏(ジューシー)のコメントも紹介する。松吉氏はソールのトウ-ヒール方向の形状に注目、平らなソールはインパクトが安定している人向け、丸めはいろいろな打ち方をしたい人とインパクトが不安定な人の両方に合うという。詳細は♯2を参照されたい。
●#1 「ハイバウンス=やさしい」は本当か?
●#2 「平ら」と「丸め」やさしいソールはどっち?
●#3 ボーケイ58度のソール7種を打ち比べ
●#4 「フェースを開く」ってどういうこと?
一本でやりたいことができる「C」、実はバウンス効果がある「LB」
●OPUS SP(キャロウェイ)/Sグラインド
やさしく打てる万能型
ソールの削りは少なめで、スクエアに構えてシンプルに打つことに適している、スタンダードな万能型のグラインド。フルショットにも合い、ターフは適度に取れる。
丸山「バウンスが10度以上に働く感じで、ソールの後ろ側までしっかり当たるので、アマチュアがやさしく打てるでしょう。球を上げにいくのではなく、フルショットやピッチ&ランで寄せるイメージに最適です」
松吉「ソールのトウ-ヒール方向は平らで、前後はわりとラウンドしています。バウンスの厚みがあり、やわらかいライでも打ちやすそう。幅も丸みも厚みもあるソールで、バンカーも含めた“SW”としての機能が十分です。開いてもOK」
●OPUS SP(キャロウェイ)/Cグラインド
これ一本で何でもできる
ソールの後方とトウとヒール側が削り落とされている。フェースを開いてボールをコントロールしやすく、ワザを使って寄せられる。ターフの取れ方は薄い。
丸山「見た目はシビアそうなソールだけど、打つとそうでもなくて、上級者がフェースを開いて狙ったところに球を落とせます。バウンスの“厚み感”と“丸み感”があるので、開かないで打つとわりとアバウトに打てるのでは」
松吉「ソールのヒール側が狭くて、トウ側が落とされています。フェースを開くと、ロブなど“死に球”のような高い球が打ちやすくて、シビアなピンポジションでも狙えそう。一本のウェッジでやれる範囲が広いグラインドです」
●OPUS SP(キャロウェイ)/Tグラインド
究極のテクニシャン用!
ソールの後方とトウ&ヒール側が大胆にカットされて、接地面が狭い。テクニシャンが多彩な球を自在に打ち分けて、ピンに寄せられる。ターフはほとんど取れない。
丸山「このバウンス6度のTグラインドは『ボーケイ SM10』のTグラインドよりも難しくて、ヘッドの入れ方をミスすると刺さったりしやすい。“究極のテクニシャン用”と言っていいんじゃないでしょうか」
松吉「ソールの真ん中がやや広くてトウ&ヒール側が狭く、後方がストンと落とされています。いろんなことができるソールですが、フェースをコントロールできなかったり、上下のミスがある人は“刺さったり・抜けすぎたり”が起こるかも」
●MG5(テーラーメイド)/SBグラインド
フェースを開かず打つ人に
どのライコンディションでも打ちやすく、4つの方向にバランスがいいグラインド。ハーフ&チップショットやバンカーでの安定したショットをもたらす。
丸山「オールラウンドなグラインドです。ソールの“入り口”がやや強くて、真ん中にかけてゆるやかにバウンスが効いて、後方がスッと落ちて抜けていくイメージ。フェースをスクエアにして打ちやすいですね」
松吉「ソールのトレーリングエッジ側が落ちていて、いろんな入れ方をしても後ろ側が当たりにくいでしょう。ソールのトウ側やヒール側が狭くなっておらずほとんど直線的に見えるので、フェースを開かずシンプルに打つほうが◎」
●MG5(テーラーメイド)/LBグラインド
開きやすい三段ソール
フェースを開いて球をコントロールしやすいローバウンス(LB)タイプ。ソールの削りが複雑で多面的なので、ただシャープでシビアなだけではない。
丸山「ソールの“入り口”がシャープで、操作しやすくてボールを止めにいきやすいです。よく見ると“三段ソール”みたいな作り込まれたデザインですが、全体的なソール幅はわりと広く、8度以上にバウンス効果を感じます」
松吉「三日月形状のソールでフェースを開きやすいです。ソールの“入り口”に面があって刺さりづらいし、バウンスの頂点がソールのやや後方にあるぶん、接地してから前に跳ねてくれる。『LB』だけどバウンス効果はしっかりあります」
ローバウンスだけど、打つとソールが働いてくれる!?
●s159(ピン)/Bグラインド
“ほどほどバウンス”の多用途モデル
「バウンス(B)ソール」とも呼ばれる。硬い地面でもボールをしっかり拾いたい人、ソールが跳ねないように上手く滑らせたい人、チャックリを避けたい人に。
丸山「ソールのトウ側が幅広ですが“入り口”がわりとシャープで、バウンスの効き具合はほどほど。フェースを開いて止めにいくとか、いろんなことができそうです。ベアグラウンドなどでもクリーンに打ちやすい」
松吉「ヒール側が狭くトウ側が広いので、フェースを開いたときにバウンスが効きやすくソールの性能が出てきます。全体的に丸みがあって幅が広く見えますが、バウンスの“厚み感”は他の外ブラ系に比べてそれほどではありません」
●s159(ピン)/Hグラインド
バウンス効果をしっかり感じる
「ハーフ(H)ムーンソール」とも呼ばれる三日月型のソールで、傾斜やライに対応しやすい“マニュアル系”のグラインド。フェースを開くなどテクニックを使える。
丸山「この『H』グラインドも、ソールのヒール側が狭くてトウ側が広いので、フェースを開いて打ちやすいです。ただ、バウンス角8度で削りが大きいわりには、バウンスがしっかり効いて打つとやさしく感じる」
松吉「“入り口”の角度がしっかりついていて頂点が後方にあり、バウンス効果の強さを感じます。ソールのキズ跡が、フェースを開いた方向やトウ側に多くつく。フェースを開いて、ある程度はアバウトに入れてもソールが滑ってくれます」
●s159(ピン)/Tグラインド
シャープな形状でも意外とフレンドリー
「シン(T)ソール」とも呼ばれ、接地面はかなり少ない。シチュエーションに応じてフェースを自在に操れるので、シビアなライでもボールをダイレクトに捉えやすい。
丸山「ソールが“V字”というか“入り口”の角度がついて数字以上にバウンスがあるように感じます。見た目にもシャープなソールでコントロールしやすいですが、そのわりにいろんなタイプのアマチュアが使えそうな印象」
松吉「バウンス角は6度ですが、ソールの“厚み感”やボリューム感はかなりのもの。バウンス効果が強く、地面にしっかり当たってくれます。フェースを積極的にコントロールしたい人が、洋芝ややわらかいバンカーなどで打っても潜らないでしょう」
●RTZ(クリーブランド)/MIDグラインド
誰にでも打ちやすい
ソールのトレーリングエッジ側が削られた、許容性と操作性のバランスがいいグラインド。ダウンブローでもレベルブローでも打ちやすく、誰にとっても使いやすいオールラウンドモデル。
丸山「幅広いアマチュアが打ちやすいソールです。ソールの幅は狭めですが“入り口”の角度がしっかりついている。いろんな入れ方をしたりアバウトに入れたりしても、刺さるような危ないミスはカバーしてくれるでしょう」
松吉「三日月形状をした、丸みが強いソールですね。いろんな打ち方をしてもソールが全く邪魔にならず、イメージした球が打ちやすい。それでいて、ダフるようなミスになりにくい“縁の下の力持ち”のようなソールデザインです」
●RTZ(クリーブランド)/LOWグラインド
操作性ピカイチもミスにはシビア
ソールの後方とトウ&ヒール側が削り落とされたローバウンス仕様。シャープなソールで操作性が高く、ワザを生かした多彩なショットが打ち分けやすい。
丸山「バウンス角が6度だし、ソールの“入り口”がシャープで接地面が少ないので、ボールをクリーンに拾いやすいけど、ミスにシビアではあります。コレ一本で、グリーン周りの状況に応じていろんな球で寄せにいけるイメージ」
松吉「ソールの上下のボリューム感が抑えられて、バウンス効果をより減らしています。基本的にはフェースをコントロールして打ちやすい仕上がりに。あくまでも想像ですが、松山英樹選手の意見も含まれているのかもしれません」
●RTZ(クリーブランド)/ADAPTグラインド
達人が太鼓判!打点調整がやりやすい
ソールの後方とトウ・ヒール側が落とされていて、ロブショットなど多彩な打ち方に対応するグラインド。フェースが“全面ミゾ”で、いろいろな打点で打てる。
丸山「PGAツアーの選手が使っているのもうなずけるくらい、ボクはとても打ちやすいです。ソールはシャープで抜けがよくコントロールしやすいけれど、“入り口”には厚みがあって刺さりづらい。上手く作られていますね」
松吉「ソール幅が薄くて接地面が少なくても“入り口”のバウンス感はついています。入るときのミスはケアされていて、そこからはどこへでも抜けていく感じ。いろんな入れ方をしつつ、フェース面の打点をコントロールしたい人に◎」
“オレのエース”を見つければ、アプローチ巧者になれる
今回は“外ブラ系”のウェッジを取り上げたが、これらのメーカーはソールのグラインドオプションが豊富にそろっている。だからこそ「その中から自分の打ち方や好みに合うソールのグラインドを選べば、アプローチがやさしくなるし成功率が高まるでしょう」(丸山プロ)という。今回のインプレッションを参考にして、できるだけコースで試打をしたりフィッティングを受けたりして、自分にとっての“エースグラインド”を見つけてもらいたい。
次回は、国産ブランドの人気ウェッジの試打インプレッションを紹介する。
文:新井田聡
写真:有原裕晶
取材・編集:中島俊介
取材協力:平川カントリークラブ