平田憲聖が“聖地”で手に入れる崇高な打感 最高峰の挑戦を支えるミズノプロ
選手の要望を満たし優勝へと導く

3年ぶりの訪問となった平田は、養老への憧憬やクラブを手にしたときの高揚感は今も変わっていないと話す。しかし、求めるものはゴルファーとしてのステップアップとともによりシビアになってきた。この点に関しては野村も「よく困らせてくれますよ」と目を細める。
昨年9月のパナソニックオープン、練習日に平田は「4本あるウェッジの中で54度だけ距離が出ない」と感じ、急遽、野村がバウンスを調整。いつもよりハイバウンスにすることで、距離が出るように手を入れた。「(54度のウェッジを打っていて)抜ける感じがあった。バウンスで助けてもらうことで距離が出るようにしてもらいました」(平田)
野村も平田を見ていて、同じ解決策を想定していた。選手からの要望を十分に満たし、そのクラブで活躍することがクラフトマンにとっても喜びの一つだと言う。「やっぱり、選手が優勝してくれることが、この仕事をしている醍醐味です」(野村)。平田はこの試合、逆転での優勝を飾り、4勝目を挙げている。
打感の良さはコントロール性につながる

平田は今回の養老工場訪問で、新作「S-3 アイアン」と「T-1 ウェッジ」、「T-3 ウェッジ」の調整を行った。
「アイアンに関してはまず構えた時の顔で選びます。さらに操作性、ソール形状などすべてが揃って、初めていいショットが打てると思っています」。さまざまな要素の中で、打感についても強いこだわりを感じさせる。
「一番は手に伝わる感触です。音で感じている部分もあると思うのですが、そこはボールが変われば、変わってくるので、クラブの打感とはちょっと違うかもしれません。長くボールがフェースに食いついてくれる時に、軟らかさを感じます」
ただ、打感は軟らかければいい、というわけではない。「軟らかいことが良いのであれば、いくらでも軟らかいクラブはできると思うのですが、ボールがどれだけ食いつくかが重要。食いつき過ぎても、弾き過ぎてもコントロールできない。ミズノのアイアンはちょうどコントロールできる軟らかさで、打感の良さをいつも感じています」
プロが感じている打感こそ、ミズノが長年こだわってきた部分だ。現在、平田がテストしている「S-3 アイアン」も、「より軟らかさを感じていて、良いクラブだと思います」と、試合で使うための最終調整段階だという。
ウェッジは即投入し海外での戦いでも使用

平田は新アイアンにかなりの手ごたえを感じており、「少しグースが入っているアイアンが好きで、ベースがボクの好みに近い。シャープに見えるようにリクエストを出していますが、(市販のクラブから)大きな変更はしていません」
ウェッジに関してもロフト46度、50度、54度がT-1、58度がT-3というセッティングを予定。「58度以外はフルショットが多いのでアイアンっぽい顔で選んでいます。58度はグリーン周りで使うためウェッジらしい顔のクラブを選びました」。ウェッジの打感に関しても、「コントロールできる軟らかさ」を備えており、54度のT-1はすでに試合でも使い始めている。
今季の主戦場に選んだコーンフェリーツアーでは自身の開幕戦でいきなり優勝争いを演じ、まずは順調なスタートを切った。「レベルの高さは感じていますけど、戦えないことはないと思っています。出ている選手全員がPGAツアーに昇格することを本気で目指しているので、すごく刺激をもらっています」
養老工場という原点から世界へ――。理想を形にするミズノの技術力が平田のさらなるステップアップを支えていく。