“TN-87”を彷彿とする見た目も…打つといま風で雑味無し!ミズノ「S-1」アイアン
ミズノプロシリーズのハーフキャビティアイアン「S-3」が好調なセールスを記録する中、8月には同ラインの正統マッスルバックアイアン「S-1」が登場。伝統的な形状でシャープな顔つきを維持しつつ、チャネルバックデザインによって打感・打球音をさらに研ぎ澄ました。ミズノ史上最高クラスのクリアな打感を実現した注目作だ。その性能をギア知識が豊富なミタさんが解説。打感、構えやすさ、飛距離性能をアスリートゴルファーのコウタロウ(HS50m/s)とベテランゴルファーのシオさん(HS40m/s)が試打し、分析した。
PGAツアー選手の声を反映!チャネルバックデザインで音が進化
【ミタさん】
今回紹介するのはミズノの「S-1」です。ミズノの伝統を継承したマッスルバックアイアンです。
【コウタロウ】
少し前に「S-3」を買っちゃったんですけど、「S-1」も「これぞミズノ!」って感じで、かっこいいですね。
【シオさん】
そもそも「S」シリーズはどういうカテゴリーですか?
【ミタさん】
「S」はシグネチャー(Signature)という意味を込めていて、「ミズノプロシリーズ」の象徴となるモデルです。カテゴリーとしてはツアーアイアンです。特に「S-1」はPGAツアー選手の意見も反映していて、ミズノ契約のキース・ミッチェル選手などのフィードバックを設計にとりいれています。
【コウタロウ】
PGAツアー選手はどういう所にこだわっているんですか?
【ミタさん】
顔はもちろん、ソール形状にこだわる選手が多いです。選手が求める抜けの良さに応えるために、バウンス角を大きくして、ソールの高さを抑えました。リーディングエッジもシャープにしたので地面に当たったときの抵抗が少なくなっています。
【コウタロウ】
あと、ミズノのこだわりといえば打感ですよね。
【ミタさん】
それはもちろんです。「S-1」もネックとフェースを一体成型するグレインフローフォージドHD製法を採用したことによって、ミズノ独自の鍛流線(金属組織の流れ)を切らさない構造になっています。さらに「S-1」はバックフェース部分に直線的なくぼみがあるチャネルバックデザインを採用したことによってトップ側の振動を抑えています。その結果、打感はさらにクリアになったようです。
【コウタロウ】
ミズノの打感がさらに良くなっているんですか?
【ミタさん】
ミズノの研究では打感は音の影響が最も大きいということがわかっています。「S-1」の周波数を計測した結果だと「ミズノプロ241(以下、241)」よりも良い結果が出ています。
【シオさん】
それは打つのが楽しみですね。
クリアな打感で雑味なし!やさしくはないけど高さは出る
【コウタロウ】
アドレスしたときの印象は「S-3」よりもさらにシャープです。「241」とヘッドサイズはほぼ同じですが、「S-1」の方がトウ側が低く見え、より直線的に感じられスクエアに構えやすかった。だからか、少し昔っぽさがあるんですよね。どことなく「TN-87」に似ていると言うか。
【ミタさん】
そのトラディショナルな感じはわかるかも。打った印象はどうでしたか?
【コウタロウ】
打感の良さは間違いない。やっぱりミズノの軟鉄鍛造アイアンの打感は他のメーカーとは明らかに違います。「241」と比較しても打球音が静かになっているので、柔らかさが良く伝わってくる。「241」の打感も十分に良いですけど、「241」で感じたわずかな雑味を取り除いた感じです。
【ミタさん】
打球も安定していましたね。
【コウタロウ】
見た目とは裏腹に、想像していたよりもハードではなかったです。打球も上がりやすいので、ダウンブローに打ち込めるアマチュアゴルファーなら十分に使えそう。操作性もとても高く、ヘッドの入れ方や軌道を変えただけでドロー、フェードを打ち分けやすいです。
【ミタさん】
シオさんはどうでしたか?
【シオさん】
私は下の番手から打っていきましたが、たしかにコウタロウ君がいうようにそこまで難しいアイアンではなくて、7番アイアンまでなら十分に打てます。6番アイアンになると厳しくなって、5番アイアンになるとコースで使う自信はありません。ただ、打感の良さは十分に伝わりました。唯一無二のクリアな打感です。
【ミタさん】
シオさんのヘッドスピードでも7番アイアンでスピン量が5000回転を超えていましたね。
【シオさん】
ロフトもありますし、フェースに乗ってくれるのでスピンが入る手応えはありました。
【ミタさん】
どんな人に向いているアイアンでしたか?
【コウタロウ】
決して超・上級者限定のアイアンではなくて、80台でプレーしているアマチュアゴルファーでヘッドスピード45m/s以上あれば5番から使えると思います。高さが出て、スピンが入るので5番アイアンでもグリーンに止まる球が打てます。
【シオさん】
難しくはないのですがヘッドスピード40m/s前後になると、5番・6番アイアンはキャリーが出なくなってしまう。シニアゴルファーには7番アイアン以下をコンボセットとして使うのがオススメです。
【ミタさん】
ミズノプロ「S-1」は「241」の後継モデルですが、ヘッド全体の丸みを抑えたことでよりシャープな印象を持たせた、どことなく懐かしさのあるマッスルバックアイアンです。打感・打球音もさらに進化して、クリアになりました。ただし、決して飛距離を出せるアイアンではありません。どちらかと言えば、ヘッドスピード45m/s以上あって、7番でキャリー160ヤード前後をきっちり打ちたい人にちょうどいいアイアンです。スピン性能も高くて最高到達点が高いので、落下角度は45度以上になってくれると思います。
【コウタロウ】
飛びすぎないのが良かったです。「241」と比較するとスピン量が300回転くらい増えていました。5番からPWまでセット全体の顔や飛距離の流れもいい。さすがミズノです!
まとめ
■ 試打したクラブのスペック
ミズノ Mizuno Pro S-1アイアン
●ロフト角:34度(7I)●シャフト:ダイナミックゴールドHT ●硬さ:S200
■ マイクラブ情報
シオさん:ブリヂストン ツアーB X-CB アイアン
●シャフト:N.S PRO MODUS3 TOUR 120 ●硬さ:S
コウタロウ:ミズノ S-3 アイアン
●シャフト:Dynamic Gold MID TOUR ISSUE ●硬さ:S200

ミタさん プロフィール
1978年生まれ。かつてのサッカー少年が父の影響でゴルフを始めたのは高校生のとき。2014年にゴルフテックに入社し、レッスンコーチ兼クラブフィッターとして活躍した。現在はギア知識を活かして、コンテンツの企画を担当。洋服や車など好きな「モノ」への探求心が人一倍強く、作り手の素材や製法へのこだわりが大好物。デニムやスニーカーへの知識も豊富。

コウタロウ プロフィール
1985年生まれ。「日本一の漫才師」を夢見た幼少期を経て、学生時代はゴルフに没頭。日本アマなどに出場した。日本プロゴルフ協会(PGA)ティーチングライセンスを取得した2012年にゴルフテックに入社。長年、レッスンコーチを務めていたが、現在はコンテンツに出たり、作ったりしている。ヘッドスピードは50m/s前後。持ち球はフェード。最近は四十肩との付き合い方を模索中。

シオさん プロフィール
1967年生まれ。GDOでは古参の編集部員。若い頃は小ぶりヘッドのドライバーとマッスルバックのアイアンを愛用していたが、近年ではミスに強く、飛ばせるギアを好んで使用している。ヘッドスピードは40m/s前後。ミドルアイアンでグリーンに止まる球が打てないことが最近の悩み。持ち球は低めのドロー。平均スコアは80くらい。