“△ネック”の転がりはやっぱり無敵「トライビーム」追加モデルを詳研究/オグさんのPUTTER偏愛日記 #8
今回はオデッセイ「Ai-ONE トライビーム」シリーズに、追加された4モデルを紹介します。
Ai-ONEトライビームシリーズはツアープロにもユーザーが多く、打点ズレに強いパターとして人気があります。今回の追加モデルは、こんな形状のモデルも欲しいとか、過去モデルをトライビームで復活させてほしいといった声があったと推測しています。4モデルのうち2つが人気ヘッドの復刻版、もう2モデルが最近の流行に則ったもの。ミスにより強くなった人気4モデルというわけです。
■Ai-ONE TRI-BEAM 2-BALL BLADE CS
カタチと視覚効果とネックが織りなすハーモニー
根強い人気の「2ボールブレード」とラケットホーゼルを組み合わせたモデル。2ボールデザインによるアライメント性能や残像によるヘッドアップの抑制をはじめ、構えやすいT字型のブレード形状や打点ズレに強いラケットホーゼルによって、パターに求められる性能がバランスよく詰め込まれています。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → 左軸
ボール位置センター or 左寄り → センター
モデル名に「CS(センターシャフト)」とついていますが、完全なフェースバランスではなく、わずかなトウハング(重心角)によりフェースの開閉を伴うため、左軸を意識した方が気持ち良くストロークできそうです。ラケットホーゼルによるオフセットがあり、ボール位置はセンターが構えやすいです。
各モデルがそれぞれどういう人に合うかの目安を記しましたので、下記記事を参考にご覧ください。
パットの型は2つ 「センター軸or左肩軸」 あなたは?
<打ってみた>
構えてみると、やっぱりいいですね!フェースの向きが分かりやすく構えやすいです。他の2ボールより良いと思ったのが、ラケットホーゼルの装着位置。フェース側の白丸の一部にネックが食い込んでいるのですが、この欠けた部分がちょうどスイートエリアの真上に来るので、ボールポジションがスッと決まります。それとホーゼルのフェース側のラインが垂直に仕上げられているのも良いところ。このラインによってフェースの向きが分かりやすく、ハンドファースト具合も把握しやすいです。フェースバランス比でわずかに開閉するため、開閉が多くてもストレートに振ろうとしても気持ち良くストロークできます。フルオフセットで右へのミスも怖くありません。
ボールを左足寄りに置きたい人にはちょっと構えにくいかもしれません。私は左足寄りに置くため違和感はありますが、普段より少し右足寄りにすると狙ったところに打ち出せました。ちょっと慣れれば問題なさそうです。一般的なブレード型と比べて操作性はマイルドですが、重心はあまり深くないのでヘッドの操作はできました。小型マレットのような性能を持つブレード型、といったモデルです。
■Ai-ONE TRI-BEAM #5 CS
大型マレットに負けないやさしさにびっくり
扱いやすい小型マレットとして高い人気を誇った#5。マレットタイプでも操作性に優れ、かつ構えやすいモデルとしてアマチュアはもちろんツアープロにも愛用者が多くいました。そこにラケットホーゼルを組み合わせて重心距離を短めにすることで、ミスに強いモデルとして復活。ハーフオフセット気味なのとフェースの開閉量がわずかなことから、様々な打ち方に対応した扱いやすい仕上がりです。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → どちらでも
ボール位置センター or 左寄り → どちらでも
性能を左右する特性が中間的なので、軸やボール位置を問わない結構珍しいパターです。どんな打ち方にも“そこそこマッチする”とも言えるでしょう。自分に合っている打ち方やボール位置が定まっていない、はっきりと分からない人は、このパターを買っておけば全然合わないなんてことはないはずです。
<打ってみた>
小型マレットらしい構えやすさで好印象。打ってみると、そこそこの操作性とミスへの強さがうまく融合しており、とても扱いやすいです。タップ式で打ってみたり軸を変えたりして打ってみましたが、どんな打ち方にも対応してくれる懐の深いモデルですね。入る時と入らない時の差が激しい…なんて人におすすめしたいです。少々打ち方が変わっても安定したパッティングが期待できます。
■Ai-ONE TRI-BEAM #1W CS
流行の幅広ブレードにラケットホーゼルをドッキング
最近流行中の幅広ブレードとラケットホーゼルを組み合わせたモデルです。後述する「Ai-ONE TRI-BEAM #1W」との違いはホーゼル搭載位置のみ。本モデルの方がトウハングが小さく、ストレートなストローク軌道にマッチします。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → 左軸
ボール位置センター or 左寄り → センター
フェース周りの作りは、前述の2ボールブレードとほぼ同じ。フルオフセットしているのでボールをセンターにセットし、ややハンドファーストで左軸のストロークをイメージすると良いでしょう。
<打ってみた>
幅広とはいえブレード型なので、2ボールブレードよりは操作性が高い印象を受けました。それでも一般的なブレード型と比べるとラケットホーゼルの恩恵もあってミスヒットには強いです。アークの強いストローク軌道でも使用できますが、アーク度合いは軽めかストレート軌道のほうが狙ったところに打ち出しやすいです。
ストレート軌道や軽いアーク軌道なら#1WCS、アークが強めなら#1Wと、ストローク軌道によって選ぶのがひとつの基準。極端な差異はないので、どちらも試せる機会があるなら好みで選んでも問題ありません。
■Ai-ONE TRI-BEAM #1W
振り心地が普通のブレード型に近い
一般的なブレード型と近い位置にラケットホーゼルを搭載した、幅広のブレードモデルです。トウハングが一般的なブレード型に近く、振り心地も近似。それでいて打点ズレのミスに強いのが最大の長所です。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → 左軸
ボール位置センター or 左寄り → センター
今回の4モデルの中でトウハングが最も大きく、ストレート軌道よりも適度なアーク軌道の人にマッチしやすいです。フルオフセットなのでハンドファーストに構えやすく、左軸でボールセンターの組み合わせがおすすめです。一般的なネックのブレード型の良さを残し、幅広ブレードの構えやすさとミスへの強さが上乗せされている感じです。普段ブレード型を愛用している人はスムーズに移行できるでしょう。
トラックマンで転がりの違いを測ってみた
今回は弾道計測器トラックマンを持ち込んで、それぞれのパターにどんな違いが出るのかを見てみました。「スキッド距離」とは簡単に表現すれば、ボールが完全な順回転になる前に浮いたり跳ねたりしている状態でどのくらい進んでいるかを表す数値です。「ロール速度」は、ボールが順回転を始めた時点の速度。「スピードドロップ」は、ロール速度に対して、インパクト直後のボールスピードに対する速度の低下した比率。「距離」は実際に転がった距離。そして「ロール%」は、トータルの距離に対して、ボールが回転した距離の割合を示しています。
パッティングは、スキッド距離ができるだけ短く、ロールしている距離が長い方が良いとされています。また、スキッドとロールの距離の割合が一定であることが、再現性の高いパッティングを目指すうえで重要なポイントです。
さすがだな!と感じたのは、ロールのパーセンテージ。モデルによって差は少しありますが、どれもばらつきが少なく安定した転がりです。ラケットホーゼルはもちろん、Ai-ONEフェースの効果も大きいでしょう。最も良い数値、すなわち私に合っていたのは、2ボールブレード。転がりが良く安定したパッティングができそうです。早めに順回転になってラインに乗せられそうなのが#5CS。色々な打ち方に対応してくれるので、どんなグリーンにも対応できそう。自分で使うなら#5CSを選びます。2ボールブレードも魅力的ですが、いざとなったら普段と違う打ち方でも使える#5CSの方が使い勝手は良さそうに思いました。
パッティングでは、不安なく打てることがとても重要です。今使っているパターで不安なく打てているのであれば、なぜ不安がないのか、反対に不安がよぎるのであればどの部分にそう感じるのかを突き詰めてみてください。パター選びはとてもセンシティブ。好みとは正反対の特性のモデルが、一時的に“薬”になることもあります。機会があったら、ぜひ色々なパターを試打し、好きなモデルだけでなく、自分には合わないなと感じるものも打って経験値を蓄積しておくことが、パッティングに悩まない秘訣です!
取材協力:AR GOLF JAPAN
写真:小林司

小倉勇人(おぐら・はやと) プロフィール
ゴルフショップ「ゴルフフィールズ ユニオン」店長。クラフトマン、クラブフィッター、さらに雑誌やウェブ記事の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。