話題の「ゼロトルク」徹底研究 何がイイ?どんな人に合う?/オグさんのPUTTER偏愛日記 #9

オグさんのPUTTER偏愛日記
各社のゼロトルクパターを比較研究

普通のパターとどう違う?

今回は、昨今話題のゼロトルク(トルクレス)パター。各社のモデルを比較研究してみました。ゼロトルクパターと一般的なパターの違いは「ストローク中にヘッドが回転しようとする力があるかどうか」です。一般的なパターには重心距離があってストローク中にトルク(※)が発生し、ヘッドが開閉しようとします。

一方ゼロトルクパターには重心距離がなくトルクがほとんど発生しないため、ストローク中にヘッドはほとんど動きません。そのため、余計な力を加えなければフェースの向きを保ちやすく、狙った方向に打ち出しやすいのがゼロトルクパターのメリットです。

ゼロトルクを達成するために、一般的なパターとはちょっと異なる形状をしているのも特徴のひとつ。また、トウ側が上を向くように作られているパターもありますが、これらもゼロトルクパターに分類されます。

※一般的なパターはシャフト軸線の延長線とヘッドの重心との間に距離があるため、重力によってシャフト軸線とヘッドの重心が垂直方向に揃おうとする力「トルク」(直訳すると捻じり)がはたらきます。テークバックではフェースが開く方向に、ダウンスイングからフォローにかけては閉じる方向に動こうとしますが(モデルによって度合いは異なります)、この力を「トルク」と表現しています。

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右のセンターシャフトパターはフェースが上を向いて止まりますが、左のゼロトルクパターはフェースがどこかで止まることはなく、シャフトを回転させると抵抗が極めて小さいことが実感できます

最近の流行を作ったと言えるLABゴルフの「DF3」を用いて、具体的に説明していきます。一般的なパターとまず異なるのがヘッドに挿さるシャフトの位置。ゼロトルクパターはシャフト軸線がヘッドの重心を指すように作られます。このため、ヘッドの真ん中あたりにシャフトを装着するか、ネックを設けてそう作らなければなりません。そのため、ヘッド重心から垂直にシャフトを装着してしまうと極端なオンセット、つまり“出っ歯”になってしまうのです。

慣れてしまえば使えないこともないのですが、違和感を覚える人も多いので多くのメーカーが独自の工夫をしています。本モデルはシャフトを打ち出し方向に傾けて装着し、グリップをシャフトに対して打ち出し方向とは逆方向に斜めに指すことで、グリップの真下にフェース位置が来るように工夫されています。

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シャフトを傾けることでグリップの真下にフェースが来るように工夫をし、さらにグリップをシャフトとは反対に傾くよう斜めに挿すことで、一般的なパターに近いアドレスが取れます

ゼロトルクパターは前述の通りストローク中にヘッドが開閉しようとする力(トルク)がほとんど発生しないため、ストレート軌道のストローク、いわゆる“まっすぐまっすぐ”と好相性です。一般的なパターはヘッドが開閉する力を使ってアークのあるストロークがしやすいのですが、この力がほとんど発生しないゼロトルクパターではフェースを開いてしまうと自力で戻さなければ開きっぱなしになります。特性を生かすためにも、ゼロトルクパターはストレート軌道でストロークしたいですね。

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ストローク中にヘッドが開閉しない特性を生かすには、ストレート軌道でストロークするのがベスト
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ヘッドを開閉させると自分でフェース面をコントロールしなければならず、特性とはマッチしません

ゼロトルクパターの特性は以上の通り。特性を生かすには、いかにフェース面を維持してストロークするかがカギ。グリップは太めのものが手の動きを抑えやすいためマッチしやすく、握り方は、クロウやクロスハンドなどとの相性が抜群です。

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クロウグリップは手の操作が入りにくいのでゼロトルクパターとの相性は◎

では、各社のゼロトルクモデルのインプレッションを述べていきます。ゼロトルクパターはシャフトの挿さり方などに工夫はされていますが、オンセット、いわゆる出っ歯なのでボール位置は必然的に左足寄りです。センターに置くとハンドファーストの度合いが大きくなってしまい、スムーズにストロークしにくくなります。打ち方は振り子のように、インパクトをあまり強めないで打つと特性を生かしやすいです。

<ゼロトルクパターが合う人>
・振り子のようにインパクトをあまり強めないストローク
・ストレート軌道で振りたい
・左足寄りにボールをセットする

<ゼロトルクパターが合わない人>
・ストロークのアークが強い
・センターにボールをセットする
・インパクトが強いタップ式のストローク

■DF3(LABゴルフ)

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独特の形状が目を引くDF3

“元祖ゼロトルクメーカー”の看板モデル

LABゴルフは、ゼロトルクパターを流行らせた先駆者的存在。このDF3はゼロトルクパターの構えにくさなどのデメリットをしっかりと研究して開発されている印象があります。シャフトを傾けて装着しながら、垂直に構えられるようにグリップが装着されるなど、一般的なパターと同じように使える工夫がされています。ヘッドに開けられたボールサイズよりわずかに小さい穴は、構えた時のアライメントの役目をしながら、ボールを拾えるギミックです。

<打ってみた>
構えてみると、シャフトとグリップの工夫により、一般的なパターとの差をあまり感じません。試打したのはオレンジのヘッドでしたが、独特の形状と相まって、フェースがどこを向いているのかがわかりやすく、アライメントが取りやすかったです。振ってみると、ヘッドは適度なサイズながら慣性モーメントの高さを感じ、重さを感じながら安定したストロークができました。打点がズレても方向はブレにくく、非常にやさしいパターという印象です。打感は軽やかな弾き感があり、打っていて気持ち良いですね。同社はフィッティングを行っているので、どうせ購入するなら受講後に組み上げてもらうと良いでしょう。

■Ai-ONE SQUARE 2 SQUARE MAXシリーズ(オデッセイ)

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MAX1のサイトラインは短め

LABに似ている!? S2Sの新モデル

オデッセイではゼロトルクパターを「トウアップバランス」と呼び、今は「Square 2 Square」シリーズに集約されています。その中で最も慣性モーメントが高いモデルがこのMAXシリーズ。「Ai-ONE Square 2 Square MAX 1 パター
」と「Ai-ONE Square 2 Square MAX STRIPE パター」の違いはサイトラインのみで、基本性能は同じです。どちらも非常に慣性モーメントが高く、AIが設計したAi-ONEフェースと相まって、非常にミスに強い仕上がり。形状が上記DF3に似ているのは、ツアープロからの要望と性能面の両方が関係しているのでしょう。

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MAX STRIPEには太く白いラインが描かれる

<打ってみた>
オデッセイの「Square 2 Square」もシャフトを打ち出し方向に傾けて装着していますが、グリップはシャフトに対して平行に装着されています。そのため、自然とハンドファーストに構えやすいです。ハンドファーストは手首をロックする効果もあるので、自然と振り子のようなショルダーストロークになりやすく、パターに逆らわずに打てば特性を生かしやすいです。MAXシリーズは、慣性モーメントが大きいのでミスにも強く、非常にオートマチックに打てます。打感は、ソフトでありながら弾き感も感じられる独特なもの。やわらかい感触が好きな人も、硬めが好きな人も満足できる感触だと思います。

■BAT ATTACK ZERO TORQUE(PXG)

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構えてみるとネックがあるようには見えない

ネックのあるツノ型ゼロトルク

他モデルのように、ヘッドの重心に直接シャフトを挿すのでなく、ネックを用いてシャフト軸線とヘッドの重心を揃えるように設計されています。これにより、シャフトによってヘッドが隠れる部分が少なく、一般的なパターと同じように構えやすいのが特徴。ボディは中空構造で見た目以上にミスに強く、安定したパッティングが期待できるモデルです。

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ゼロトルクを実現するためのネック形状

<打ってみた>
ネックがありますが、シャフトは打ち出し方向に傾いているので自然とハンドファーストに構えやすいです。浅めの重心設計なのか、シャフト軸線が指す位置が他のモデルよりフェース寄りになっているように感じ、その分構えた時のオンセット感も少なめ。振ってみると、クイックなテンポでも打ちやすく、非常に扱いやすかったです。基本的にはオートマチックにゆったりとしたストロークがマッチするゼロトルクパターですが、その中でも操作性が良いというか、プレーヤーのアジャストを受け付けてくれるモデルです。それでいて打点ズレに弱いわけではないので、自分のテクニックを色々使いたいと考えるようなゴルファーがゼロトルクパターを試すならこのモデルはおすすめです。

■ALLAN(PXG)

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形状は一般的なマレットパターと似ている

大きめのサイトラインが特徴

BAT ATTACK ZERO TORQUE同様、ネックのあるゼロトルクモデル。こちらもシャフトが斜めに装着され、構えた時に違和感がないように工夫されています。サイトラインがヘッド全体を貫くように設置されているのでフェースの向きがわかりやすく、ストローク中にも残像が残りやすいです。またソールの凹みでボールが拾えるのもいいところです。

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ネックはかなり湾曲している

<打ってみた>
BAT ATTACK ZERO TORQUEよりは、シャフト軸線が指す位置がややフェースより後方寄りに感じ、そのぶんオートマチック感が強かったです。特徴である大きめのサイトラインを、ボールを打ち出したいラインに沿わせるようにストロークすると狙ったところに安定して打ち出せました。適度なヘッドサイズで、振りやすさとオートマチック感を両立した1本だと思います。

■スパイダーZT(テーラーメイド)

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スパイダーっぽくもあり、新種らしくもある形状

大人気のスパイダーがゼロトルク化!中尺長尺も

現代大型マレットパターの代名詞とも言える「スパイダー」ブランドからもゼロトルクモデル「Spider(スパイダー)ZT パター」が登場。通常の長さのモデルに加え、36/38インチのカウンターバランス設定の中尺モデル、さらには長尺モデルもラインアップします。シャフトはヘッド重心からほぼ垂直に装着されており、重心設計は浅め。オンセット量が少なく、違和感は少なめです。スパイダーらしい形状はしていますが、ヘッドの奥行きは狭いです。

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標準レングスのモデルはグリップの挿し方に工夫アリ

<打ってみた>
通常の長さのモデルはシャフトがほぼ垂直に装着されていますが、グリップが中心から打ち出し方向に平行にズレた位置に装着されており、オンセットの違和感を少しでも軽減しようとする工夫がされています。今回は、36インチの中尺モデルも打ってみたのですが、個人的にはこれが一番気に入りました。カウンターバランスの効果もありますが、パター全体の重量が重く、よりオートマチックにストロークできました。ゼロトルクパターに興味はあるがシャフトが斜めに装着されていることが気になる人は、本モデルを試してみると良いと思います。

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カウンターバランスの中尺が好感触でした!

パターのトルクは“悪”ではない

試打を終え、どのモデルも非常にミスに強く、安定感を高めるには間違いなく効果があると感じました。パターが好きなら1本持っておいても損はありません。やさしいのはもちろんですが、いつものパターの調子が悪くなった時の代打として最適だと思います。半面、一般的なモデルとゼロトルクパターを頻繁にとっかえひっかえしてしまうと調子を保つのが難しそうにも感じました。何度も言いますが、一般的なパターにはヘッドが開閉しようとするトルクがあります。それこそがストロークテンポを保つひとつの指針であり、打ち出し方向をコントロールするポイントでもあるからです。

パターのトルクは決して悪いものではありません。ですがそのトルクがマイナスに働くこともあります。そういった時にゼロトルクパターを使って結果を出し、ゼロトルクが良い方向に働かなくなったら通常のモデルに戻すのがフィーリングを維持するコツだと思います。結果が出ているのであればゼロトルクパターを使い続けても問題ありません。最後に、ゴルフクラブには、すべてトルクがあります。ゼロトルクパターは、そのトルクを取り除いた、極めて特殊なクラブだということを頭に入れておいてください。

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