やさしさを極めたアジア限定のアイアン
“浮く芝”に合わせた3面構造のソール形状

アジア向けの「P8CB」アイアンは、日本および韓国のテーラーメイドが主導して開発された。“やさしい軟鉄鍛造アイアン”をコンセプトに、アジア人のゴルフを詳細に観察すると、米国との違いが見えてきたと高橋氏は言う。
「日本や韓国と米国で何が違うかと言えば、まずは芝質です。私たちがよくプレーするゴルフ場のフェアウェイは野芝が多く、ボールが少し浮いています。対して米国の芝は、東西で差異はありますが、概してボールが沈みます。ということは、それぞれに対応するスイングがあるわけです。ボールが浮いていれば入射角は緩やかに(払い打ち気味に)、沈んでいれば鋭角に(ダウンブロー気味に)。つまり、アジアと米国ではアイアンに求められる性能が異なる前提で開発を進めたのです」
もちろんアジア人でも上級者はダウンブローにヒットするし、米国人でもアイアンを緩やかな入射角で打つ人もいる。アジア人向けのやさしいアイアンを作るうえで、緩やかな入射角を“最大公約数”と設定し、それに見合った形状を米国にリクエストした。
「『スピードソールデザイン』と呼んでいるのですが、様々なライに対応できるリーディングエッジ(ソール前方)、接地面積を抑えたトレーリングエッジ(同後方)、適度なバウンス角を組み合わせた3面構造のソールは、アジア、特に日本の芝との相性が抜群です」。高橋氏は、「P8CB」アイアンの抜けの良さを体感してほしいと胸を張った。
日本人の感性を基準にした打感と形状

軟鉄鍛造アイアンといえば、我々日本人は「良い打感」をイメージするだろう。だがひとえに打感といえども、感じ方は個人および国で異なる。ゴルファーが感じる打感は打音と密に関係しており、パチンと弾くような高い音が好きな人と、軟らかく低い音を好む人がいる。
「打感に対する認識が、日米スタッフ間で大きく異なる点もありました。米国人の好みはソリッド(硬め、しっかりした)な打感です。一方、『P8CB』アイアンはそうではなく、低く軟らかな打音を目指しました。球持ちが長く、ゆっくり飛んでコントロールできているような感覚。これを言語化して米国人に伝えるのが、非常に大変でした」と高橋氏は笑顔で述懐する。
同じことはヘッドの形状を決める際にも起こったそうだ。トウやソール、フェースプログレッション(グースネックの度合い)なども、日本人の感性を基準に、やさしい軟鉄鍛造アイアンの形状を米国の設計者に伝えたという。「ゴルファーなら誰しも、思わず触れたくなるようなプロダクトが完成したと思っています。形状が美しく、打たずとも打感が想像できるような、そんなアイアンに仕上がりました。前述のソールの形状により、上級者の使用にも十分対応可能で、数名のツアープロが実戦投入しています」
試打会で「P8CB」を体感「誰もが納得の安心感」

同社の新製品試打会に参加し、芝の上から打つ機会を得たGDOスタッフは、「P8CB」アイアンのやさしさを強く感じたという。
「ツアープロも納得する顔は、構えたときから安心感を与えてくれます。試合でプレッシャーがかかる場面において、これはかなり効いてくるのではないかと思いました。打ってみると、敏感過ぎないヘッドの動きがよかったです。適度にフェースが返ってくれるので、振りやすく打球も安定していました。そしてミスヒットに強い。これには、質量をヘッド左右に分散して寛容性を向上させる『セラミックコア』や、重量をフェース外周に分散させることで芯を外してもヘッドがブレにくい『ペリメーターウェイティングデザイン』など、シンプルなルックスの内部にはきめ細かな技術が効いているそうです」。手にしたら使い込んでみたくなる軟鉄鍛造アイアンという言葉が印象的だった。

実はテーラーメイド、「P8CB」アイアンと同じタイミングで“打感を追求した鍛造モデル”をリリースする。「MILLED GRIND(ミルドグラインド)5」ウェッジだ。軟鉄鍛造製法による打感に加え、多彩なショットを可能にする「スピントレッドデザイン」を採用。ツアープロを交えたテスト段階からそのスピン性能は驚くべきものがあり、「エグいスピンがかかる」と認識されていった。そして、それがそのまま本ウェッジのキャッチコピーとして採用された。
スピン性能だけでなく、昨今のウェッジに求められるソールバリエーションも6種類を用意。安定したショットを提供するスタンダードバウンス「SB」、寛容性を持ちながらフェースの開閉にも対応したスタンダードCグラインド「SC」、シリーズ中最も幅広形状のスタンダードエクストリームワイド「SX」、大きなバウンス角により寛容性を最重視したハイバウンス「HB」、フェースの開閉や入射角を巧みにコントロールできるローバウンス「LB」。そして、かのタイガー・ウッズのプレースタイルに合わせて作られたタイガー・ウッズグラインド「TW」。TWは56度と60度で形状が異なり、ギアマニアなら迷わず両方を手に入れたくなるモデルだ。ちなみに、このウェッジはグローバルモデルであり、ロリー・マキロイやコリン・モリカワ、スコッティ・シェフラーらもテストを重ねているという。
軟鉄鍛造と打感、日本人の琴線に触れるプロダクトをリリースするテーラーメイド。今後もどんなクラブが登場してくるか、目が離せない。