ミズノプロ S-3 アイアンを筒康博が試打「背伸びをしても打ちたくなる」
ミズノが目指した打感の頂き ご意見番クラブフィッターの評価は!?
ミズノプロ S-3 アイアンをご意見番クラブフィッターが試打したら…【筒康博】
SOFTNESS(やわらかさ)、SOUND(打音)、SENSITIVITY(打感)――3つの「S」を究極な域まで押し上げたミズノ「ミズノプロ S-3 アイアン」。「S25C」という厳選された軟鉄素材を使用し、響きの長い澄んだ打音を生むことで、これまで以上の“頂”と呼ぶフィーリングの最高峰を目指した。平田憲聖や杉浦悠太らもその打感の虜となっているようだが、果たしてヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人の採点は!? ご意見番クラブフィッター・筒康博が試打評価を行った。
「現在主流のアイアンとは一線を画す ゴルフを教えてくれる“先生”」
―率直な印象は?
「まさにこれぞ『ミズノプロ』といった軟鉄鍛造フィーリングです。いま主流となっているやさしいアイアンとは一線を画す本格派。精悍な見た目通りの打感とショットが生まれる一方、芯を外せばその分だけ距離が落ち、ボールへの当て方ひとつで飛び方が大きく変わってくる。試打中つい練習モードに入ってしまうほど、自分の腕前と真摯に向き合うことができます。ゴルフを始めた頃にフラッシュバックできるような、こういうアイアンを使っていけば確実に腕前は上がっていくだろうなと再認識しました」
―見た目の評価は?
「ネックの高さがあって、トップラインは薄くソール幅は広くないので、操作性の高さが感じられます。元々ハーフキャビティってこういう作りだったと思うのですが、近年人気のアイアンから比べるとかなりシャープで個性的。スイートエリアの広さも限られていて、芯でとらえたときの気持ちよさがある半面、ちゃんとミスはミスとして教えてくれます。良くも悪くも、ゴルフを教えてくれる“先生”的アイアンです」
―前作「JPX 923 TOUR アイアン」と比べると?
「はっきり言うと、前作との違いを明確に判別できませんでした。厳密には重心位置や寸法の割合がミリ単位で違うと思うのですが、その差を感じられるかと聞かれたら、全く分からない。これまでマッスルバックや、今作と同じ精悍なハーフキャビティのみを使ってきたプレーヤーでないと、この微小な差は体感できないでしょう」
―同社アイアンの中でどういう立ち位置?
「『ミズノプロ』シリーズだけでも3種類以上、『JPX』シリーズを含めるとさらにたくさんのモデルがある中で、練習量が多く腕前に自信がある人向けになると思われます。私は20代の頃、『TN-87』を使っていましたが、ナイスショットしたときの打感がすごく好きで、いまでもファンがいるほどの名器です。もちろんそれから比べれば圧倒的にやさしく、飛距離性能も上がっていますが、それはあくまでもシンプルな軟鉄鍛造内での話。やはりメインターゲットは我々アマチュアゴルファーではなく、国内男子プロに限られると思います」
―完全にアスリート向け?
「そうですね、完全にアスリート向けです。ただ、私らが勝手にアスリートorアベレージと区分けしているだけで、意外にもドライバーと選び方が違うため、一概に言い切れないのが現状です。ドライバーはコースでいきなり朝から打つクラブで、どうしてもやさしさ優先になります。が、アイアンの場合は、購入してからどんなにサイクルが早い人でも2年は使うもの。一般的には5年、長い人なら10年近くも同じモデルを使い続けるため、頑張れば打てるモデルから探したくなる。購入すればたくさん練習したくなりますし、ゴルフがうまくなるチャンスも増える。カテゴリー抜きに打ちたくなる、ちょっと背伸びをしたくなるアイアンとして、今作が筆頭に挙げられるのではないでしょうか」
―どのような人向き?
「打ちこなしたい、試打したい願望は高まる一方で、現実的にはハードルは高いです。最近のクラブはターゲットを絞っていないモデルが多いのですが、この『S-3』はパワーと技術がそろっている人、ハンディキャップ(HDCP)は10を切っていないと使いこなすことは難しい。アベレージゴルファーには挑戦の意味で試打してほしいとは思いますが、購入を考えると完全に競技志向の強い人限定になるでしょう」
潔いほど競技者向け 評価は4.5と4.0が並ぶ【総合評価4.2点】
【飛距離】4.0
【打 感】4.5
【寛容性】4.0
【操作性】4.5
【構えやすさ】4.0
・ロフト角:34度(7I)
・使用シャフト:Dynamic Gold 120}(硬さS200)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール
取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋

筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール
スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。