SIM2、G425、XR16…「絶対に替えられないFWがそこにある」理由とは【女子プロギア考察#6】
「あのプロがニューモデルにスイッチした」というニュースが駆け巡る中で、フェアウェイウッド(以下FW)は数代前のモデルから替えない女子プロをよく見る。そこには、FWというクラブの用途や役割が大きく関係しているようだ。“令和の試打職人”こと石井良介プロが、自身のFW歴を振り返りながら解説する。
使い慣れたFWは手放さない
2024年シーズンに女子プロたちが使うFWを見ると、「ゼクシオ 10」(青木瀬令奈)、「G425 MAX」(脇元華)、「X HOT PRO」(上田桃子)、「SIM グローレ」(川崎春花)、「RS5」(菊地絵理香)、「XR16」(天本ハルカ)、「グレート ビッグバーサ ‘15」(西村優菜)、「ツアーB JGR」(古江彩佳)「SIM2 MAX」(吉田優利)といった、数年前にリリースされたモデルや年季が入ったモデルがありました。
かくいうボクのFWは「SIM」です。そのテーラーメイドのFWを例にすると「SIM」→「SIM2」→「ステルス」→「ステルス2」→「Qi10」→「Qi35」と変遷していますが、ある意味で初代「SIM」が一番トガってて、ヘッドが大きめで、とにかく飛ぶんです。
その次に「SIM2」が出て、ちょっとスピンが入るようになりました。モデルチェンジを経ると、自分が欲しい要素とそうじゃない要素が入ることがあると思うんです。
新モデルにトライしても結局は戻ってくる!?
FWってドライバーの次に長いので、遠くへ打たなきゃいけないクラブ。でも遠くに打つときって、ちょっとしたエラーがOBや林などの“大ケガ”につながるので、ウェッジ以上に替えづらいという感覚があります。
ボクも新しいモノが好きなので、基本は新しいクラブをどんどん買うんですけど、いま使っているモデルを上回らないというか。上回ったら、なんの躊躇もなく替えます。一時期は「SIM」のFWをずっと使っていて、その後「EPIC SPEED」になるんですけど、結局は「SIM」が良くて戻る。その後に「G430」のFWが発売されたときに、アゲンストのホールでけっこう前に行ってグリーンに届いたので替えました。でもたまたま、思い出の「SIM」を引っ張り出したら、3Wで250ydや260ydのセカンドショットでバンバン2オンして「やっぱりコレを抜いちゃダメだな」ってなりました。
よほどの“プラスα”がないと替えられない
性能が自分にハマったクラブって、いくら代替わり(モデルチェンジ)をしても、そのコンセプトや重心位置などが変わると特性も別のモノになります。構えたときの顔の向きだったりロフトの見え方だったり“気に入った一本”から、よほどのベネフィットがなければ替える理由がないっていうのが本音でしょう。
つまり「狙えるクラブ」であること。あとは「ミスしたときに何が起こるか?」という予測がつきやすいクラブであることが大事です。一つのミスが即スコアを崩すことにもつながるし、逆に、上手くいけば一気にスコアを縮めるチャンスにつながってくるクラブがFWですからね。
FWって「地べたの上から打つ一番長いクラブ」なので、シャフトをどのくらいチップカットするかとか、組み方によっても雰囲気が大きく変わってしまいます。そうやって自分にハマる一本を見つけるのは大変なんですが、逆にハマったら“替え難い”&“手放せない”クラブになるんじゃないでしょうか。
アマチュアの“3W問題”をどうクリアするか
アマチュアの皆さんは、3Wが打てるかどうか、考えどころでしょう。ポイントの一つにヘッドスピード(HS)があると思います。ロフトに対して必要なHSがあるはずで、15度のロフトに対してHSが足りないから球が浮き切らないという人がいます。そういう人が3Wを使いたければ、重心が深くて球が上がりやすいモデルを選べば解決する可能性はアリます。ロフト16.5度の「3HL」(ハイローンチ)も選択肢に入るでしょう。HSとは関係ないかもしれませんが、女子プロでは河本結選手や林菜乃子選手が「16.5度」を入れていますね。
昨今は、「スピン量を減らして前に飛ばそう」という傾向がクラブ自体にとくにあると感じています。
しかも、ボールの低スピン化も進んでいる。とはいっても、中には球が浮くモデルもあるので、そういう3Wならば十二分に使えるし「HL」を含めれば使える幅が広がるでしょう。もしもFWが苦手とか、あまりポジティブに考えられないのなら、18度(5W)とかを使えばアマチュアの皆さんも打ちこなせるのでは。そうしてFWが好きになってきたら、3Wを試せばいいんじゃないかと思います。
FWを打ちこなせると“ゴルフ寿命”が延びる!?
今の女子プロたちは、強く打ち込むというよりは、ドライバーをアッパーに入れて打つ、ややインサイドからクラブを入れてくる選手が多くなりました。それによってFWは、クラブの機能を上手に生かして球の高さが出せる打ち方をしていると思います。だからみんな3Wが入っていて、入れない選手はいないくらい。逆に男子プロは、3Wの代わりに“ミニドラ”を入れるケースもありますが、女子プロにはあまりいないでしょう。※ロフト15度の3Wを入れる選手の割合は87%(編集部調べ)
ボクがレッスンをしている生徒さんで、70代になってもいいスコアを出し続けている人たちって、総じてFWが上手いんです。「そんなライからでも打てちゃうんですか?」みたいな。FWが上手くて、グリーン周りのアプローチが上手くて、パーを取ってきます。
そのようにFWをより上手に使えるようになることは、ボク自身も将来のことを考えて必要だなと思っているんです。あるとき「今日は5Wしか打ちません」と言って、ティショットで5W、セカンドも5W、ずっと5Wを練習する時期を作りました。それまでは「FWなんていらない」なんて思っていました。ドライバー→3W→2I、みたいなセッティングだったんですけど、「それだといつか厳しくなるぞ」と思ったんです。(続く)

石井良介(いしい・りょうすけ) プロフィール
1981年生まれ、神奈川県出身。PGAティーチングプロの資格を持ち、トラックマンを使った最新理論やデータに基づくレッスンが好評。YouTubeチャンネル「試打ラボしだるTV」も大人気。