“カーボンスチール”って何がいいの? キャメロンの新パター「STUDIO STYLE」徹底リサーチ
PGAツアーの25年シーズンの第2戦「ソニーオープン in ハワイ」から、お披露目が始まっていたスコッティキャメロンの新パター「スタジオスタイル(STUDIO STYLE)」。サークルTマークが入ることから、ツアーオンリーのモデルと連想されたが、今回のモデルは一般にも発売すると発表された(3月14日発売)。いったいどんな性能をもったヘッドなのか。お披露目からさかのぼること2カ月前、編集部は独自にその製品を取材していたので、改めてじっくりと紹介したい。(取材・構成/服部謙二郎)
開発者にその狙いをインタビュー「吸振力が強い素材」
スタジオスタイルのパターは見た目でも明らかなように、フェース面に金属のインサートが入っている。しかも車のグリルに施されているようなチェーンリンクミーリングのテクスチャー。完全な削り出しとは違うフェース表面の仕上げにはどんな狙いがあるのか。
「フェースにはカーボンスチールという素材のインサートが入っています」とは、このパターの開発に携わったオースティ・ロリンソン氏。カーボンスチールといえば、過去にもキャメロンのパターで採用されていた素材。「いろんな金属製の素材を検討しましたが、心地よい打音と優れた打感をもたらしてくれたのがこのカーボンスチールでした。吸振力(振動を抑える)が強く、音の長さを抑え、震えている時間を短くできる。さらにチェーンリンクミーリングパターンが振幅の幅を抑えるのにハマったんです」
そもそもパターヘッドにおいて、なぜ振動を抑える必要があるのか。「そこにはボールの進化の影響もある」とロリンソン氏は言及する。「ゴルフボールは近年目まぐるしく変わってきています。特にカバー下の硬度の変化により、自ずとパッティング時の音や感触、それによる打ち出すスピードが微妙に変化してきました。新しいスタジオスタイルはその中でソフトな打感と打音、そしてスピードの安定を追求したモデルなんです」。つまり年々硬くなってきたボールに対し、よりソフトな打感を出すために生まれたフェースということだろう。
もちろんプレーヤーからの意見も凝縮されている。「ツアープレーヤーから、そして一般消費者からのフィードバックも受け、スピードが重要なショートパットからミドルパットにおいて、自信を持って打てるような“ソフトフィール”をもたせたかったんです。新しいカーボンスチールと新ミーリングがそれを可能にしています」と熱く語る。
音を静かにするためには、いわゆるウレタンなどの樹脂をインサートに用いることも考えられる。その選択肢はなかったのか。「我々は『ファインミルドパター』という削り出しの精巧なパターを作っていくことを目指しています。それはパフォーマンスにも効果があるし、フィーリングの上でも重要。ミルドパターやこのカーボンスチールの利点は、どんな気候でもどんなときでも均一の打感を提供できるということ。他の樹脂などの素材を使ってしまうと、作り方や温度、そして保存方法などで打感は変わってきてしまう」
また、金属インサートを入れることで純粋な削り出しとは違う均一性も得られたという。「ミーリングを深くすればするほど、音は静かにできます。ですがミーリングの一つの欠点は深さが微妙に変わってしまうこと。一つのヘッドでもトウとヒールで深さにばらつきが出てしまう。チェーンリンクフェースパターンを採用することでその均一化が可能になりました」
このチェーンリンクパターンは、アウディなどの車のフロント部に採用されているハニカムグリルのよう。デザインを見てもカッコいいと思えるのは、さすがのキャメロンパターといったところか。もちろん見た目だけでなく、性能のテストを重ね、打音、打球性能共に満足のいく結果となった。ちなみに今回も採用されたグリップ「フルコンタクトスリムグリップ」の後ろ側にも同デザインが施されている。
製品のラインアップは、ニューポート5機種、スクエアバック2機種、ファストバック2機種、そしてカタリナを加えた10モデル。フラッグシップモデルである「ニューポート2」に関してはツアーからの「ニューポート2の良かったところを戻してほしい」というリクエストを受けてマイナーチェンジ。トップラインがわずかに厚くなり、わずかにディープフェースになった。ブレード長も短くなり、トウヒールのバランスを変更している。
ツアーでもじわじわと使用選手が増えている新スタジオスタイル。まずは打ってもらってそのカーボンスチールの打感と打音、そして打ち出しのスピードを体感してほしい。