上級者の8割が使用する理由が分かった! 距離計に日本一詳しい競技アマに教わるGPS&レーザー活用術
GDOが3月に実施したアンケート調査では、約8割のゴルファーが距離測定器を所有しているという結果が出た。しかもロースコアになるにつれて所有率が上がる傾向に。上級者は距離計をどのように活用しているのか。距離計専門家かつ競技ゴルファーでもある“ピコピコの達人”に、スコアアップにつながる実用法を教えてもらった。
距離を測ってもそれが打てないなら意味がない!?
話しを聞いたのは、朝日ゴルフで長年「イーグルビジョン」の開発に携わってきた橋本貴紀氏。社内外から「距離計のスペシャリスト」と呼ばれる橋本氏は、「全日本企業対抗」に出場している競技ゴルファーでもある。
「距離計を使っていない人は、『そこまで上手くないから使っても意味がない』『距離を調べても狙ったところに打てない』と言います。ですが、競技アマやプロだって狙った所に常に打てるわけではありません。距離計は距離を計測するだけではなく、“答え合わせ”をして上手くなるための道具でもあります」とその使用メリットを語る。
橋本氏の言う答え合わせとはなんぞや?
「例えば、距離を測ってピンまで150ydだとします。7番アイアンでナイスショットしてピンにつけば、芯を食ったときの飛距離が150ydだと分かります。ミスして130ydしか飛ばなかったら、『7番で薄めの当たりだと20ydショートする』と分かります。これが答え合わせ。距離計を使っていなかったら、ナイスショットの距離もミスショットの距離も分からないまま終わってしまいます。距離計を使えば、上達するためのデータを蓄積できるんです」
橋本氏は続ける。「私の場合、距離計を忘れるとパターを忘れたくらいのショックを受けます。もう10年以上、距離計を使ったゴルフしかしていないので、それ無しではラウンドできない体になっています(笑)」
1打目から“ピコピコ”すべし
橋本氏は「1打目から距離を測ることが大切」と語る。
「距離計ユーザーの大半は、2打目以降にピンまでの距離を測ります。ですが、本来は1打目から使わないと意味がありません。ティショットから使うことで、2打目で打つ距離を想定できるからです。そうすると、『このホールはドライバーを打って、次は8番アイアン。2打目をミスしたらSWを使う』という心の準備ができます。これがコースマネージメントの第一歩です。事実、ほとんどの競技ゴルファーは1打目から使っています」
では実際にどうやって使えばスコアアップにつながるのか。今回は女子ツアー「パナソニックオープンレディースゴルフトーナメント」の舞台でもある浜野ゴルフクラブ(千葉県)の10番、11番で具体的な使い方を教えてもらった。
橋本氏が使用しているのは、イーグルビジョンがことし発売した「イーグルビジョンXi(クロスアイ)」。これはGPSとレーザー距離計を融合した新世代の距離計だ。
まずは10番パー4。白ティからだと404yd。橋本はティイングエリアから意外なポイントを計測していた。左のバンカーまでの距離を調べていると思ったら、バンカーの先にある木までの距離を調べていたのだ。
「白ティからだと左バンカーは200ydで越えますし、さらにその奥の左の木まで215ydしかない。ですから左に曲げるとOBの可能性があり、左サイドのルートは絶対ダメだと分かります。一方、右方向はかなり広くなっています。230yd地点に小さい木があるので、それをターゲットにするのが良いでしょう」
橋本氏は単純にハザードまでの距離ではなく、絶対に犯してはいけないミス(OB)を避けるために“いちばん隅っこの対象物”までの距離を調べるのだった。
打ち上げの2打目地点では、距離計がさらに威力を発揮する。ここからはグリーン面が全く見えず、距離感をつかみにくい状況だった。
「こういうホールこそ距離計が最大限に活かせます。手前みそで恐縮ですが、イーグルビジョンの『ピンポジ君(※)』を使えば、グリーンを俯瞰で見たレイアウトでピンポジションを確認できます。今日のポジションはかなり右。ピン方向をそのまま狙ってしまうとグリーン右サイドぎりぎりを攻めることになるので、グリーンを外すリスクが高くなります。グリーン全体の形状からピンポジションを確認することで、ピンよりかなり左サイドが狙い目だと分かります」
狙うべき距離が分かると、番手選びも変わる。
「従来のGPSナビは、衛星の電波から距離を調べるため、高低差を測るのが弱点でした。でも『イーグルビジョンXi』はレーザー距離計の性能も融合したことで、高低差を含めて距離を調べられます」。ハイブリッド型のメリットは大きい。
橋本氏の2打目はGPSだと132ydだったが、レーザーだと高低差を含めて139ydだと表示された。GPSナビを使えばフロントエッジ、バックエッジまでの距離も分かる。
「フロントエッジ、ピン、バックエッジまでの3点セットで番手を決めるのが基本。このホールはグリーンのタテ幅が24ydあって、フロントエッジからピンまで17ydありました。ですから、手前にキャリーさせてゴロゴロ転がしていくのもありだと分かります」
距離計を使って分析して打った橋本氏のセカンドショットは見事にグリーンをとらえて、余裕のパーセーブ。
(※)イーグルビジョンに搭載されているプレー当日のピンポジションがわかるサービス。日本国内の約700コースが登録しており、例えば兵庫県内だと約70%のコースが対応している
コースの“誘い”を見破れるか?
11番パー4(381yd)は右サイドがすべて池の名物ホール。普通は池を越えるための距離を測定しがちだが、達人はそうではなかった。
「最初に調べたのは、池と反対にある左サイドの木までの距離です(235yd)。私の飛距離ではそこまで届かないので、遠回りにはなりますが左の木を狙うルートでもOKだと分かります。池の先にもターゲットになりそうな木がありますが、あれは“誘って”ますよね(笑)。そこまで230ydくらいで、まず届かない。木の手前にある浮き輪でも195ydで、私がキャリーで池を越えられる確率は半々くらい。そうなると左の木が安全なターゲットになります」
橋本氏のティショットは狙い通りに左サイドのフェアウェイをキープ。カートで2打目地点に向かったが、カートからでも距離計は役に立つ。
「このモデルはカート地点からボールまでの距離を計測すると、ボールからピンまでの距離も分かります。いわゆる3点間距離の測定が可能。ですから持っていくクラブの本数も少なくなりますし、プレーファストにもつながります。カートから同伴競技者のボールが見える場合、距離を測って教えてあげれば進行はだいぶ早くなります」
2打目をレイアップして、3打目のアプローチへ。ピンまで約40ydの距離だが、ここでも距離計が役に立った。
「ヤーデージブックやコースガイドには、フロントエッジ、バックエッジまでの距離が掲載されているかもしれませんが、それはあくまでグリーンを“正面から見た時”の距離です。私のアプローチはグリーンの左から狙う状況です。GPSナビを使うと、左サイドからでも右サイドからでも、自分のボールポジションからのグリーンまでの距離、ピンまでの距離、グリーン奥までの距離がわかるので、アプローチの攻め方が明確になります。残り30ydでも、状況によってはSW一択でなく、AWで転がすという選択肢も生まれてきます」
今回はわずか2ホールだったが、達人から目からウロコの使い方を色々と教えてもらった。
「おそらく、まったく距離計を使っていない90台、100台のゴルファーであれば、誰でも5打はスコアが良くなると思います。最初に言ったように距離計は答え合わせの道具です。ですから使えば使うほど上手くなります。ドライバーを買い替えるくらいなら、新しい距離計を買ったほうがスコアアップする人は多いと思いますよ」
テキスト:野中真一
取材・編集:中島俊介
取材協力:浜野ゴルフクラブ