鍛治郎が行く!「俺に合う鍛キャビはどれだ?」/アイアンフィッティング最前線 #1キャロウェイ編
鍛造キャビティ市場が激アツだ。「ZXi」や「S-3」、「X フォージド」、「P8CB」、「Tシリーズ」などの鍛造アイアンが各社からリリースされ、群雄割拠の様相。では自分に合うのは果たしてどれか、でも簡単に手は出せないし…。そんな読者の皆に代わって、編集部イチの鍛造キャビティ好き鍛治郎(仮名)が一肌脱いだ。各社のフィッティングスタジオに赴き、この秋最高の1本を探す修行の旅。「どんなに打ちのめされようとも、俺は読者のみんなのためにいい鍛造アイアンを必死で探していくしかないんだ!」。そんなセリフとともに1回目、鍛治郎はキャロウェイの新スタジオに向かっていった…。
シブヤのキャロウェイ
向かったのは、渋谷に新たにオープンした「キャロウェイパフォーマンスセンター」。中に入ると、オデッセイのパターがズラリと並ぶパターフィッティングコーナーが目に入る。その奥に、室内としては非常に広い打席が。ドライバーからウェッジまでのフィッティングはここで行う。打席の右後方に見えるのはクラブ工房。なんとここでは、フィッティング中にアイアンやウェッジのライ角やロフト角を微調整して試打できるというではないか。コレはすごい。角度違いのヘッドが揃うフィッティング現場もあるが、その場で曲げちゃうなんて。大胆かつ繊細じゃありませんか…!(もちろん調整可能な範囲内だけど)
X フォージドシリーズを打ち比べ
飛びも叶えるMAX STAR
キャロウェイの鍛造キャビティと言えば「X フォージド」シリーズ。鍛治郎に合うのはどのモデルか、7番アイアンを打ち比べてフィッター吉澤慎太郎さんと答えを探っていく。まずは「X フォージド MAX STAR」。7番のロフトは30度、弾き系の軟鉄鍛造モデルだ。打ってみると、カシッとした打感が手に伝わってくる。いつもの7番よりもボールが高く上がっている感じを受ける。キャリー165ydくらいで、距離だけ見れば鍛治郎の6番アイアンくらいだ。
「球は強いですが、グリーンに止まってくれる感じではなさそうです。MAX STARはロフトが立ち気味かつスピンがやや少ないモデルで、インパクトロフトが大きいことで球が上がり過ぎて飛距離をロスしている人も念頭に置いて設計されています」(吉澤さん、以下同)。鍛治郎には合わなかったが、この性能を求め、打感を好ましく思う人がいることは想像できる。「やわらかい打感が全ての人にとって好ましいわけではなく、しっかりした弾き系の感触が好きな人も少なくないんです」。フムフム納得。
え、MAX?ドンピシャです
次に打つのは「X フォージド MAX」。深いキャビティが特徴の軟鉄1ピースモデルで、7番のロフトは32度。MAXを名乗るからには、大きな慣性モーメントによる寛容性を売りにしているようだ。鍛治郎が打ってみると、自身の7番とほぼ同じ感じで飛んで行った。スピン量は5000rpmくらいで打ち出し角は21度前後、キャリーは155ydほどであった。
鍛治郎は、どちらかと言えば小振りなヘッドが好きだが、操作性が高過ぎると腕が伴わず時にブレてしまう。しかしこのMAXにはそれがない。小振りとは言い難いが、現代的なほどよいサイズ。打感は軟鉄1ピースらしくしっとりしていて好ましい。「MAXは重心がやや低く、鍛治郎さんのハーフトップも助けてくれますよ」。吉澤さんの助言は本当にそのとおり。打ちやすくて、今の鍛治郎の感覚に合うではないか!
初代X フォージドを使っていました
続いては「X フォージド」。シリーズの中核をなすモデルで、7番のロフトは33度。MAXよりも小振りで、現代的な基準だと“ちょい小さい”感じかもしれない。実は鍛治郎、同モデルの初代を使っていたことがあり、X フォージドの美点は理解しているつもりである。打ってみると、自身のアイアンより少し飛んでいる感じがあり、キャリーは158ydくらいでスピン量は5500rpm前後だった。
「重心距離が浅いので、インパクトにかけてロフトを立てていきやすいヘッドです」。そういえば、昨年掲載したアイアン特集で各社のヘッドを計測したが、X フォージドは3.3mmとほかのモデルに比べて確かに浅かった。「ただ、Xフォージドは少しセンシティブな面もあり、平均値を見るとスコアアップに貢献してくれそうなのはMAXかなと思います」。芯を突いた吉澤さんのコメントが鍛治郎の胸に刺さる。
完売モデルの超絶打感!
MAXで決まりかなと思って取材を終えようとしていたところ、吉澤さんから「せっかくですので、こちらも打ってみて下さい」と手渡されたのは「X PROTOTYPE アイアン」。すでに完売した限定モデルで、シャープなヘッドが特徴的な、言うなれば“男子ツアーモデル”。7番のロフトは33度だ。これまで打った3モデルより明らかにヘッドが小さく感じる。打ってみると…なんじゃこりゃ!芯に当たったときの打感は、上記3つとはまるでベツモノ。超絶よすぎて、薄ら怖くなってきた(ホント!!)。
ただ、結果はそれほどよくはない。飛距離は一番手ほど落ち、キャリー145ydくらいでスピン量は5700rpm前後。しかもその数字はあまり揃っていない。きっちりミートできる人にとってはこの上ない選択のようにも思えるが、鍛治郎がスコアアップを目指すとなるとちょっと違うかも…という感じだった。とにもかくにも、とんでもない打感に腰を抜かしたワケである。「このモデルだけ、素材は他と同じでも製造工程が全く異なるんです。鉄の分子が硬くならない製法をとっていて、それがこの打感につながっています」と吉澤さん。いやあ、すげえっす、売り切れだけど。55万円だったけど(7本セット、ことし発売のBLACKの場合)。
結果が出るアイアンが見つかりそう
フィッティングを終え、鍛治郎にはMAXが合うとわかったところで、吉澤さんにキャロウェイがフィッティングで重視していることを聞いてみた。「アイアンに関してはその方の好みも大きく影響しますが、まずは結果にフォーカスします。左右ブレが少なく、キャリーとスピン量が安定するモデルやスペックはどれなのか。例えば、コンパクトなヘッドをお使いで左へのミスに悩む方に、重心距離の長い大きなヘッドのモデルをおすすめしたところ、満足いただいいたケースもありました」。
使っているヘッドとギャップが大きくても、望む結果が出るモデルを選ぶ人もいる。逆に、結果は出るが好みではないモデルを無理強いすることはないのだとか。初心者から、ターミナルアングル(落下角)を改善したいという上級者まで、様々なゴルファーがやってくるキャロウェイパフォーマンスセンター。熟練のフィッターさんと一緒に、納得できるクラブ選びに没頭してみては?(編集部/鍛治郎)
イラスト:亀川秀樹
写真:有原裕晶