軟らかいほうがスピンが減るって本当!? ボール選びの基準とは【女子プロギア考察#8】

女子プロセッティング考察
女子プロたちは使用ボールをどうやって選んでいる!?

クラブにばかり耳目が集まって陰に隠れがちだが、ボールの性能やフィーリングは、飛ばし、距離感、アプローチ、パットのすべてに大きく関わってくる。“令和の試打職人”こと石井良介プロは、独自の視点で女子プロのボール選びについて分析しつつ、アマチュアにアドバイスを送った。

アプローチでイメージした高さ&速さで打ち出せるか

女子プロたちは、ショートゲームでスコアを作らないといけない局面が多いので、ウェッジショットの打球とイメージの合致に神経を使っていると思います。イメージした高さや速さで球が出るならそのボールを使えるでしょう。思ったよりも高く、または低く出すぎるようなボールは使えません。

広告の後にも続きます
広告の後にも続きます

彼女たちは幼少期や学生時代からゴルフをやってきて、慣れた感触・フィーリングがあるはず。どのメーカーも、ドライバーでは高初速かつ低スピンに。アイアンでは打感が柔らかくてスピンが入る、というボールを作ろうとしていますが、それぞれのメーカーによってテイストに微妙な違いがあります。

女子プロセッティング考察
新しいボールで2025年シーズンを戦う渋野日向子

自分が慣れ親しんだ“打感”とか“味”みたいなものが、なかなか忘れられないのでしょう。とすると、ボールって大きく替えづらいもの。渋野日向子選手が住友ゴム工業と契約してスリクソンの「Zスター XV」を使うことが発表されましたが、全体的にはボールを他のメーカーに替えるというニュースはあまりありません。

“ソフト派”と“しっかり派”に分かれる

2024年シーズンに女子プロが使ったボールを見ると、けっこう極端に分かれているなと思うことがありました。

古江彩佳選手は「ツアーB XS」。正確性がピカイチで、そんなに飛ばすプレーヤーではないと思いますが、スピンが入って軟らかいタイプのボールを選んでいます。一方で吉田優利選手は「ツアーB X」。同じ“プラチナ世代”で身長が150㎝台の選手ですが、しっかりめのボール(X)とソフトでよりスピンが入るボール(XS)、という違いがあります。

広告の後にも続きます
広告の後にも続きます
女子プロセッティング考察
ボール選びで「パッティングの音にこだわる」という吉田優利

スリクソンでは、畑岡奈紗選手(158㎝)は「Zスター ダイヤモンド」で、山下美夢有選手(150㎝)は「Zスター XV」と分かれている。どちらのボールも試した上で、結果が良かったのかもしれないし、“好み”だったのかもしれません。

女子プロセッティング考察
「硬すぎず軟らかすぎず」という理由でボールを選んだ畑岡奈紗

勝みなみ選手は2024年シーズン中に「ZスターXV」から「Zスター ダイヤモンド」にスイッチ。好みのフィーリングや好ましい数値が出たものと思われます。

女子プロセッティング考察
勝みなみのように、シーズン途中でボールをスイッチするのはかなり珍しいケース

軟らかいとつかまりやすい? しっかりめだと逃げやすい?

ボク自身もYouTubeの「しだるTV」や自分のチャンネルでもボールを試打しましたが、意外と違いが出ました。それは「飛ぶ・飛ばない」「スピンが入る・入らない」以上に、ボクの中では硬いボールを打つと右に飛び出して、軟らかいボールを打つと左に飛び出すんです。そんなことはないのかもしれませんが、軟らかいボールのほうが当たったときの時間が長くてちょっとつかまるのでしょうか。

ボクはどっちかというと左にミスしたくないので、硬めのボールが好きです。例えば、軟らかい「Zスター」を打つと左に行くんですが、しっかりめの「Zスター XV」だと真っすぐ行く。同じように、ソフトな「ツアーB XS」はややつかまる傾向があって、しっかりめの「ツアーB X」のほうがつかまりません。

女子プロたちもフィーリングを優先しながら「もっと結果が良いモノはないか」とチェックしているとは思います。でも、一回決めちゃうとそこから替えづらいっていうのはあるんじゃないでしょうか。また、これまで練習してきた中で「自分はこういうふうに打つとこうなる」という予測があるはずなので、その予測に沿うボールを選ぶのでしょう。

優先するのは飛ばすか止めるか、どっち?

アマチュアの皆さんがボールを選ぶときは、まず自分の中で優先順位を決めましょう。大きく分けると「飛ぶタイプ」か「止まるタイプ」か。つまり、求めるのは「ドライバーの最大飛距離」なのか、「グリーン周りでボールを止める、コントロールする性能」なのか。皆さんどちらも欲しいと思いますが、“最優先”するのはどっちなのかということです。

もう一つは、パットのときに「高音のほうが好き」なのか「低音のほうが好き」なのか。しかもそれは、使っているパターとの相性もあります。パターとボールとの関係による“音”の見極め、ということ。この2つがスゴく大事だと思います。

女子プロセッティング考察
2024年に“3パット率最低”をマークしたパット巧者の森田遥はタイトリスト「プロV1x」

また、同じシチュエーションで同じウェッジを持っても、ディスタンス系ボールとスピン系ボールでは、打ち出し高さがかなり変わることを覚えておきましょう。

良い・悪いではなく、何を求めるか

以前あるボールでアプローチを打ったら、球がいきなり“ポコ”って上に飛んでしまいました。イメージした高さに出ずスピンが少なめで、そのぶん高さで止める、みたいな。もう使えないくらいのレベルでした。

でも、このボールと相性が良い人もきっといる。例えば、砲台グリーンで球を上げるのが苦手な人は、こういう上がりやすいボールを選べば解決するかもしれません。

いわゆるプロ向けのスピン系ボールと呼ばれているモノは、総じて球が低く出てスピンがかかる傾向がある。そうではない、ディスタンス系のボールはやや高く出る傾向がある。これが分かるだけでもずいぶん違うでしょう。その上で、前述したように自分がどっちを優先するか、です。今は、それらの“中間的”なボールも出始めてきているので、そういうモノを活用しても面白いですね。

硬さと性能の関係性は変わりつつある

憧れのプロゴルファーと同じモノを使えるギアがボールだと思います。究極的には、自分が気に入ったモノを見つけられればベスト。仮に「ソフトフィーリングのボールが好き」だとして、軟らかいということはドライバーでスピンがやや減るとか、そういう性能があることが分かってもらえればいいですね。

女子プロセッティング考察
2024年ボールストライキング1位の佐久間朱莉は「プロV1x」※2024年撮影

一方で、硬さと結果がイコールにならないボールも増えているのが現状。軟らかい=ツブれる=スピンが入る、という糸巻き時代の記憶がどうしても強い人からは、硬めのボールのほうがスピンが減ると思われがちですけど。

「ボールがツブれてつかまるからスピンが減る」とも言えるし「硬くてハジくからスピンが入っちゃう」ということもあると思うんです。その辺が昔の常識とは変わっている、ということを頭に入れておきましょう。(おわり)

この記事の画像をすべて見る

石井良介(いしい・りょうすけ) プロフィール

1981年生まれ、神奈川県出身。PGAティーチングプロの資格を持ち、トラックマンを使った最新理論やデータに基づくレッスンが好評。YouTubeチャンネル「試打ラボしだるTV」も大人気。

広告の後にも続きます
広告の後にも続きます
広告の後にも続きます

アクセスランキング

  • 総合
  • ツアー
  • レッスン
  • ギア情報

SPECIALコンテンツPR

こちらもおすすめ

GDOサービス

GDOのサービス