アメリカでじわじわ勢力拡大中「NEWTON シャフト」を知っているかい?
◇米国女子◇ファウンダーズカップ◇ブラデントンCC(フロリダ州)◇6465yd(パー71)
2月の米国女子ツアー「ファウンダーズカップ」の練習場で、見慣れないシャフトを発見した。「NEWTON」(ニュートン)と刻まれたロゴに、目に鮮やかな色合い。思わず足が止まった。ラベル部をよく見ると、フレックス表記などはなく、代わりに丸いドットが羅列している。実に謎の多いこのシャフト、いったいなんだ?
陳列してあった金色シャフトを撮影していると、「それはFAST MOTIONという軽量シャフトです」と日本語が聞こえた。振り返ると、アジア系の顔立ちの紳士が笑みを浮かべていた。
「NEWTON」と呼ばれるこのシャフト、生みの親はどうやら日本人らしい。「頼朝の頼に廣野ゴルフ倶楽部の廣で頼廣です」と自身の苗字の説明をする頼廣彰伸(よりひろ・あきのぶ)さん。いかにも話好きな様子だ。早速、シャフトの説明が始まった。
キックポイントはなく「全体がしなる」
「ニュートンゴルフ」のシャフトは、米国シニアツアーで爆発的人気を誇っているという。モデル名は「MOTION」(モーション)。2023年のローンチ後、わずか1年半で多くのトップシニアプロが使用するようになり、直近の試合でもジョン・デーリーやクリス・ディマルコ、コリン・モンゴメリー(スコットランド)、マーク・オメーラらが愛用しているという。また、大学ゴルフ部にも勢力を拡大。ウェイクフォレスト大ゴルフ部といったPGAツアーを目指す選手や、女子選手も使用するというから、ターゲットは実に幅広い。人気を引っ提げ、ことし、米女子ツアーで展開を始めたところだった。
「我々のシャフトのコンセプトは、『Straighter, Longer, Less effort(よりまっすぐ、より遠く、より少ない力で)』です」と頼廣さんは胸を張る。話を聞いていると、どうやらその最後の項目「より少ない力で」がミソで、一般的なシャフトのように手元や先端など特定のポイントがしなるのではなく、シャフト全体がしなる独自の設計を採用しているという。そのため、あえて調子は非公開。
「キックポイントがないというか、しなり幅が長いんですよ。どこかでキックするわけじゃないので、タイミングが合わせやすい。シャフト全体のしなりの感触がプレーヤーの脳に伝わって、それが“レスエフォート”につながるんです」。長年研究を積み重ねて生まれた設計が、歴戦のプロたちにハマったわけだ。話を聞いていると、グラファイトデザインや藤倉コンポジットから出ている練習用のシャフトを思い出した。あれもシャフト全体がしなり、いわゆるスイングテンポの練習や手打ち防止になる優れモノ。この発想ならスイングも良くなりそうだな…。
続けて頼廣さんに、ラベル部にあるドットのことを聞いてみた。「ドットの数でフレックスを表記しています。1~6まであって、5ドットでだいたいSプラスぐらい」。ツアーには7ドットもあり、さらに5.5や6.5というスペシャルなものもあるという。「LとかAとかの表記が嫌だったんです。最近のシニアは振れる人も多くて、そういう人はLとかは使いたくないですよね。ですからドットというシステムにしました。1ドットはレディース向けではありますが、実はドラコン選手も使っているんですよ」
さらに、もうひとつ気になるのがその色味。デザイン面でもほかのシャフトとは一線を画している。構えてみると分かるが、光の当たり方や角度によって色が変わる特殊な塗装が施されているのだ。「遠目でも『ニュートンゴルフのシャフトだ!』と分かるようなカラーリングを意識しました。特殊なピグメント(塗料)を使っていて、これドイツ製なんですけど意外と高いんですよ」と頼廣さんはシャフトを持って向きを変えてみせた。緑色だったシャフト(MOTION)が気づけば紫色に変わった。「構えたときに色が邪魔にならないように、落ち着いた紫になるように考えました」。もうひとつの軽量モデルである金色のシャフト(FAST MOTION)は赤っぽく変色した。
「ニュートンゴルフ」がシニアツアーで市民権を得るまで
ローンチからわずか2年での認知度の高さには驚かされるが、そんな個性あふれるシャフトの人気に火をつけたのが、ケン・デュークだ。「2年前のハワイの試合で彼が使ってくれて。彼の飛距離も伸びて、そのまま優勝したんですよ。そこで『あいつ急に飛び始めたぞ。なんだ? ピラティスとか始めたのか?』と周囲を驚かせたんです。それでみながその理由を尋ねると『シャフトを替えただけだよ』とコメントしたんです」。この一言から口コミで広まり、シニアツアーで愛用者が急増したのだった。
その後、ニュートンゴルフのシャフトはシニアツアーで次々と結果を出し、名実ともに定番のアイテムへと成長を遂げた。現在チャンピオンズツアーでは30人近くが常時使用するという。今季から米LPGAツアーに本格参入したので、今後は女子プロたちの間でも流行るかもしれない。日本でもすでに一部で取り扱いが始まっているようだが、まだ「知る人ぞ知る」存在。アメリカでの実績を考えると、「試してみたい」というのがゴルファーの本音だろう。(編集部・中田麻里奈)