「スリクソン=ダンロップ」となる人をもっと “ALL DUNLOP FES”で気づいたこと
東京駅のすぐそば、皇居外苑前に広がる丸の内は、日本屈指のオフィス街。そんな都会のど真ん中にそびえるランドマーク「丸ビル」の吹き抜け空間で、住友ゴム工業が“ダンロップ”ブランドを引っ提げたイベントを開催するという情報をキャッチ。ゴルフのイベント?それともタイヤ?しかも丸の内で?とやや首をかしげつつ、カメラを引っ提げ現地へ向かった。
現地に着いて分かったのは、今回のイベントはゴルフやテニス、タイヤ、生活用品など、ダンロップが手がけるあれこれを実際に体感できる“事業横断型フェス”。要は「ダンロップって、実はこんなこともやっているんですよ」という事業のお披露目の場だ。昨年はファミリー層をターゲットに二子玉川ライズで開催されたが、ことしは丸の内。おのずとビジネスパーソン向けの発信が中心となっているようだ。
はてさて、気になるイベント内容は?
さて、実際にイベント会場をグルっと見てみよう。まず目についたのは鳥かごの打席。シミュレーションゴルフで「1オンチャレンジ」が開催され、隣には10分間の無料レッスンブースもあった。レッスンコーチが参加者の悩みにその場で答えてくれるというからありがたい。テニスエリアでは、ボールを的に当てるゲームに挑戦できる。見事クリアすると、オリジナルのテニスボールストラップがもらえるという“プチごほうび”も用意されていた。普段ゴルフの取材ばかりしている筆者にはだいぶ新鮮。
3階展示エリアには、同社の製品が並ぶ。「え、これもダンロップなの?」と意外なモノが多いこと。中でも目を引いたのが、「e-SPORTS」グッズだ。酷使されがちな腕をサポートするアームウェアや、長時間のプレイで蓄積される疲労をリセットするためのリカバリーウェアなど、ゲーマーの“体のメンテナンス”に着目した製品を手掛けているというのだ。ダンロップって、こんなこともやっていたのか…。
そのほか、高機能ウェア「DUNLOP REFINED」や実際のカーレースで使用された四輪タイヤの展示もあった。同社がスポーツ分野だけでなく、工業製品まで幅広く展開していることをあらためて実感できた。
参加者の多くは、イベント目当てというより「たまたま通りかかった」という人が中心のよう。昼休みにふらりと立ち寄ったり、買い物中の若い女性2人組が興味本位でのぞいたり。「知らない人に知ってもらう」という狙いがピタリとハマっていた。
意外と多い「えっ、スリクソンってダンロップだったの?」という声
イベント会場では、「スリクソンもゼクシオもダンロップだったの?」という反応がよくあるとか。広報担当者いわく「スリクソンもゼクシオもブランドとしては浸透しているのですが、それが“ダンロップ”というのは意外と知られていないんです」とのことだった。たしかに「SRIXONはSRIXON」「XXIOはXXIO」と、それぞれが独立したブランドとして認知されているが、ダンロップの存在感はあまり表に出ていないかもしれない。だからこそ、今回のような分野をまたいだイベントで、あらためて知ってもらう必要があるのだろう。
実際、住友ゴム工業ではそうしたブランドのつながりを再整理する動きが加速している。ことし1月には米国やヨーロッパ、オセアニアといった海外市場で、これまで他社が所有していた四輪タイヤの「DUNLOP」商標権を取得。すでにテニスやゴルフでは世界展開が進んでいるが、今後はスポーツやタイヤ、生活用品も、「すべて含めてダンロップ」としてのブランドの一体感を高めていく方針だ。同社契約プロゴルファーがタイヤの広告塔を担う日も近いかもしれない。
そんなダンロップの戦略に思いを巡らせていると、ひとつのボードの前で足が止まった。“ダンロップの原点”と書かれているそのボード。ダンロップの始まりは、獣医のJ.B.ダンロップ氏。三輪車で遊ぶ息子のために“空気入りタイヤ”を発明したのがすべての始まりだった。転ばず走れるようにと願った息子へのやさしさから生まれた技術が、やがて自動車タイヤとなり、さらにゴルフボールやテニスボール、そしてeスポーツ用ウェアにまで広がっていったのだ。
そのストーリーを知った上で改めて展示を振り返ると、ひとつひとつがどこかあたたかく見えてくるのだった。(編集部・仮屋美遊)