ミニドライバーは性能もお値段もやさしくない? ギアマニアが中古目線で徹底分析
「大きければやさしい」と言われ、ヘッド体積が460ccまで巨大化したドライバー(1W)のヘッド。ところが最近、「ミニドライバー」なるものが静かにブームになっている。飛距離は通常の1Wには劣るが、安心して振れるのがイイところ。中古市場の様子を踏まえて徹底解説する。
ざっくり振り返り「ミニドラヒストリー」
1990年代の初め、1Wのヘッドは200ccあれば「デカヘッド」と言われたものだ。チタン製が主流になったことで大型化が進み、2000年には300cc前後に。進行はとどまることを知らず、2004年にはとうとうルールで「460ccまで」と規制された。
ところがその後、1Wと3Wの中間的なクラブの需要が高まる。2013年「マスターズ」でフィル・ミケルソンがキャロウェイの「フランケンウッド」という大きめのフェアウェイウッドを投入。直後にテーラーメイドからズバリ「SLDR S ミニドライバー」が発売され、翌年には「エアロバーナー ミニドライバー」が登場。キャロウェイは「バーサ ミニ Mini 1.5」(2015年)をリリースした。
残念ながら当時の日本では、テーラーメイドは数量限定で発売、キャロウェイは日本未発売と一部のマニアだけが盛り上がることに。しかしテーラーメイドは2019年に「オリジナルワン ミニドライバー」、2021年に「300 ミニドライバー」、2023年に「BRNR ミニドライバー」、2024年に色の仕上げが違う「BRNR ミニドライバー カッパー」と、このカテゴリーで立て続けにヒット商品を生み出した。
キャロウェイは2024年に「パラダイム Aiスモーク Ti 340 MINI ドライバー」を、ことしは「ELYTE MINI ドライバー」を発売。また、タイトリストからは「GT280 ミニドライバー」が登場し、PXGも「Secret Weapon」を用意した。
ミニドライバーのメリット・デメリット
第2世代と言える昨今のミニドライバーは、ヘッド体積が280~340ccと、約10年前よりもわずかに大きくなっている。メリットは優れた安定性。クラブ長が43.5インチ前後と通常の1Wよりも短い分、ボールを芯でとらえやすく、コントロールもしやすい。重心距離も短いためフェースを開閉するタイプのスイングとも相性が良い。重心深度も浅いことから低スピン弾道が打ちやすく、風に影響されにくい。飛距離が出るゴルファーが、フェアウェイに安心して刻めるというのもメリットだろう。
デメリットは通常の1Wに比べて飛距離が落ちることに尽きる。飛距離不足に悩むゴルファーにとっては、ミニドライバーは必要不可欠とはいえない。また、フェアウェイウッドのように地面から打てないこともないが、ライの状態がよっぽど良くないと難しく、技術的なハードルも高い。体積が大きければ大きいほど、地面から打つのは難しいだろう。
ミニドライバーの中古販売相場
約10年前の“ミニドライバー第1世代”は、限定発売や並行輸入品のため数量が少ない。ヘッドサイズも250cc前後と小さく、今となっては第2世代の方がメリットがありそう。
ただし、その第2世代は人気が高く、同じ年式の通常の1Wと比較すると割高だ。相場はテーラーメイド「オリジナルワン ミニドライバー」が3万円台前半から、「300シリーズ ミニドライバー」が3万円台後半から。「BRNR ミニドライバー」は4万円台後半、「BRNR ミニドライバー カッパー」は5万円前後になる。
ヘッド体積が340㏄と大きめのキャロウェイ「パラダイム Ai SMOKE Ti 340 MINI ドライバー」も5万円台。ミニドライバーは値が落ちにくいのも特徴だ。
あなたにミニドライバーは本当に必要か
そもそもヘッドの大型化はやさしさを追求した結果だ。その点において、ミニドライバーはクラブの進化の歴史に逆流している。中古品のお値段は“やさしくない”ため、筆者は相談を受けた際、購入を積極的には勧めていない。
飛距離を落として“刻む”ための1Wが欲しいなら、通常の1Wのシャフトを短くカスタムする手もある。可変スリーブモデルなら、3W用のシャフトを装着して試すのもおもしろい。その場合は、弾道を安定させるために重めのシャフトを選ぶこと。ヘッドは小ぶり(もしくは小ぶりに見えるもの)、ロフト角は多め(シャフト長が短いため弾道が低くなるから)がいい。重めのものでも構わない。
そんなカスタムモデルに合うヘッドの例が、体積が430ccと小ぶりなタイトリスト「TS4」(2019年)。1万円台後半で見つかるだろう。ヤマハ「RMX 116」(2016年)も445ccとコンパクトサイズで1万円を切る。
12度のロフト角がラインアップされているテーラーメイド「SIM MAX」(2020年)は1万円台中盤から。「グローレF」(2014年)は1万円以下で探せる。ピンやコブラにも12度のロフト角設定があるのでチェックして欲しい。小ぶりでロフト角が多めという観点から言えば、レディースモデルのヘッドも候補に挙がる。
通常の1Wを“ミニドライバー化”するにあたって肝心なのは、シャフトの長さ。短くするとスイングバランスが落ちるため、違和感があれば鉛を貼って調整しよう。気にならなければ、そのままでもOKだと思う。
さて、ここまで説明しておいてなんだが、ティショットの安定感を求めるならば、まずは練習のときに自分の1Wを短く持って打つことから始めよう。それだけでミニドライバーに込められた可能性を実感できるかもしれない。「やっぱりミニドライバーは必要ない」と感じたら、それはそれで正しい選択だと思う。(文・田島基晴)

田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。