「鍛造ウェッジ」ブーム到来を前に中古で探してみよう そもそも鋳造との違いは?

「軟鉄鍛造ウェッジ」ブーム到来を前に中古で探してみよう そもそも鋳造との違いは?
高野愛姫のボーケイフォージド(左)と山内日菜子のMG PROTO

アイアンを選ぶ際、「軟鉄鍛造」は一種のパワーワードになっている。ウェッジは「軟鉄鋳造」モデルが圧倒的に多数だが、特に日本の市場においては、鍛造=フォージドモデルが人気。それぞれの違いや、軟鉄の定義について改めて学び、中古ショップでの軟鉄鍛造ウェッジ選びを始めよう。

そもそも「鍛造」と「鋳造」の違いとは

鍛造と鋳造の違いは製法にある。鍛造(Forged=フォージド)は高温で熱した軟鉄を叩き、圧縮することで成型する。素材の密度が高まるため、強度が高い。そして、打感が緻密に仕上がるのが最大の特長だ。

一方の鋳造(Cast=キャスト)は、溶かした金属を型に流し込んで成型する。鍛造に比べて形状設計の自由度が高く、量産に向いている。打感はやや鈍くなると言われている。

ゴルフクラブはもともと、加工しやすい軟鉄を鍛造して作るのが一般的だった。鋳造技術をアイアン製造に持ち込んだのはピン社で、複雑で深いキャビティ形状の「EYE」で素材にステンレスを用い、鋳造で量産。「EYE2」の大ヒットにも繋がった。現在は鍛造技術も、鋳造技術も大幅に上がっている。

「軟鉄」の定義とは

「軟鉄鍛造ウェッジ」ブーム到来を前に中古で探してみよう そもそも鋳造との違いは?
ネックにFORGED(鍛造)の文字が入るモデル

軟鉄とは、炭素含有量の少ない鉄のこと(最大で約0.3%)。軟らかく、加工しやすいため、打感もソフトという特徴がある。そもそも、軟鉄は鋳造には向かない。「軟鉄鋳造」というモデルは、多くが中炭素鋼(同0.6%)や合金鋼(同2.14%)を使用しているのが実情だ。

しかし、「軟鉄鋳造の方が、打感がやわらかい」と語るツアープロも実際には存在し、あえてその製造方法を選んだウェッジもある。問題があるとすれば、軟鉄鋳造は素材が鍛造モデルに比べて硬いため、ライ角やロフト角の調整が少し難しいことだろうか。

日本で軟鉄鍛造ウェッジがブーム

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山路晶のMG PROTOにはネックにFORGEDの文字

テーラーメイドの「MG PROTO」やタイトリストの「ボーケイ フォージド」シリーズ(日本限定)など、最近は鍛造ウェッジの新作が相次いで登場している。特に日本市場でその傾向が顕著だ。背景にはアプローチショットでフィーリングを重視するゴルファーが増えたことがある。

軟鉄鍛造はフェースにボールが乗る感覚がわかりやすく、ラインやスピンのコントロール性にも優れる。コンピューターによるグラインド技術と組み合わせることで、より優れた製品が生まれた。ただし、根底には「軟鉄鍛造信仰」を持つユーザーの需要を見越して、単価が高いフォージドタイプの生産に踏み切るというメーカーの思惑も推測される。

中古で選ぶ軟鉄鍛造ウェッジの名作たち

フォーティーンは名機「MT28」をはじめ、“激スピン”ウェッジを作り続けている。上級者向けモデルの「FRZ」(2024年)は安定したスピン量と、通好みの重心位置で技が生かせる設計。仕上げも美しく、軟鉄鍛造の良さが溢れる。中古ショップで2万円を切る価格で見つかるだろう。

軟鉄鍛造アイアンの雄、ミズノもオススメだ。「ミズノプロ T24」(2023年)はロフトバリエーションも多く、こだわりの鍛造技術が楽しめる。デニムカッパー仕上げは特に美しい。ちなみにカッパー仕上げは見た目の劣化スピードが速く、お手軽価格になりやすい。1万円以下で探したい。

「軟鉄鍛造ウェッジ」ブーム到来を前に中古で探してみよう そもそも鋳造との違いは?
左上から時計回りにT24、ジョーズフォージド、ボーケイフォージド、FRZ

海外メーカーも日本市場をターゲットに軟鉄鍛造ウェッジを販売している。タイトリストのボーケイ「SM」シリーズは軟鉄鋳造だが、「ボーケイ フォージド」は軟鉄鍛造。8月に新製品の発売が決まり2023年モデルの価格も下がってきた。SMシリーズよりもヘッド重量が軽く、扱いやすいのもポイント。相場は1万円台中盤から。

キャロウェイの「ジョーズ フォージド」(2023年)は日本のコースコンディションと、ゴルファーの嗜好を取り入れたウェッジ。スピン性能と打感にこだわっている。状態によっては1万円以下でゲットできそう。

「軟鉄鍛造ウェッジ」ブーム到来を前に中古で探してみよう そもそも鋳造との違いは?
高野愛姫が愛用するボーケイフォージド

「軟鉄だから、鍛造だから打感が良い」とは一概に言い切れない。あくまでも、打感の好みや重心設計、フェース構造との組み合わせから、自分に合うものを探すことが重要だ。軟鉄鍛造ではなく、鋳造のマイルドで、包み込むような打感を好むツアープロもいる。結局のところ大事なのは、「自分の感性に合う打感」と「プレースタイルに合う設計」を見極めること。中古市場には、どちらの製法でも優れたモデルがそろっている。(文・田島基晴)

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