キングオブ「低スピンドライバー」はどれだ? 中古ショップで“暴れん棒”をリサーチ
ドライバーに求めるものは人それぞれだが、とにかくスピン量の少ない「棒球」を打ちたいゴルファーがいる。今回の記事はそんな“ロースピン至上主義者”に捧げたい。各社がこぞって低スピン設計をうたう昨今、これぞと言える低スピンモデルはどれだろうか。中古市場からお届けする。
低スピンドライバーをつくる3要素
そもそも、スピン量を低くするためには、ヘッド設計においていくつか求められる要素がある。一つ目はロフト角が少ないこと。ただし、打ち出し角が不足するとキャリーが出にくいリスクがある。男子プロに比べてヘッドスピードの遅い女子プロが、ロフトの小さいドライバーを使うのは、インパクトでアッパー気味にヘッドを入れるから。スイング軌道でロフト角の不足を補い、効率よく衝突エネルギーを出すことでボール初速を上げ、スピン量を減らしている。
二つ目は低重心であること。重心が低いと、スイートスポットの上部で球をとらえやすくなる。それによって縦のギア効果が働き、打ち出し角が上がり、スピン量が減る。作り手は重心を下げるべく、ヘッド上部の重量を減らし、ソール部分を重くする。クラウンやボディ、さらにはフェースにも軽いカーボン素材を使い、余った分の重量をソールに配置するのはそのためだ。
三つ目が、フェース面から重心までの距離(深さ)を示す重心深度が浅いこと。短い(浅い)とインパクトでフェースが上を向きにくくなり、スピン量が減る。寛容性は落ちるが、操作性が増す。上級者向けモデルは打感もダイレクトで、操作性が高いものが多い。
低重心ドライバーの代表作
ここ最近は、極端な低スピンドライバーは減少傾向にある。“全盛期”は約10年前。テーラーメイド「SLDR」(2014年)は究極の低浅重心モデルで、ボールが上がらず、メーカーが後に「ロフトアップ」というキャンペーンを打つほどだった。「M1 430」(2015年)もかなり尖ったモデル。数は少ないが、見つかれば中古で1万円以下だろう。
近年のドライバーの中で、かなりの浅重心モデルがキャロウェイ「エピック スピード」(2021年)。低スピンで有名な「エピック フラッシュ サブゼロ」(2019年)よりも重心が浅いが、扱いやすさが残る点を評価したい。1万円前半から見つかる。
国内メーカーではブリヂストン「B-LIMITED B1 LS」(2023年)が、限定販売ながら低スピン弾道が打ちやすい、ぶっ飛び仕様。まだ5万円台前半が相場だ。
コブラは低スピンモデル「最後の砦」
今も低スピンドライバーを積極的に作り続けているのがコブラだ。最新作の「DS-ADAPT LS」(2025年)は、先ほどの“SLDRクラス”の低スピン。現在、新品で手に入る最高に尖ったモデルだろう。
歴代の「ダークスピード LS」(2024年)、「エアロジェット LS」(2023年)もかなり尖っている。筆者もエアロジェットLSを購入した。ぶっ飛べば天国、曲がれば地獄というジェットコースターのようなドライバーだった(単に筆者のヘッドスピードと技術が足りなかった)。
「キング LTD プロ」(2015年)は、あのブライソン・デシャンボーが長く使用。当時、7.5°のロフトで激しく飛ばしていた。中古で見つかれば1万円以下だろう。コブラの低スピンモデルはある意味、スピンが入らないことに“全振り”した設計で、ツアープロでも球が浮かないと感じるほどだ。
リスクを考えて購入を
低スピンドライバーは確かに飛距離を最大化する可能性を秘めている。しかし、打ち出し角が足りなかったり、スピンが入らなかったりすることでボールがドロップし、キャリー不足になるリスクもある。スピン量が多いと、スピン軸が傾きにくくなる(いわゆる“サイドスピン”が少なくなる)のは、ウェッジショットを曲げるのが難しいことで理解できるだろう。その反対で、低スピンになるとスピン軸が傾きやすく、曲がりやすい。
ロースピンモデルでうまくプレーするためには、棒球を操れるヘッドスピードと技術が必要。自分のスイングやヘッドスピードとマッチした“最適な低スピン”を見つけなくてはいけない。
それでも、ギア好きとしては、1本くらい「究極の棒球マシン」を手元に置いておきたくなるもの。中古市場からあなたのセッティングにひとつ加えてみてはいかがだろうか。(文・田島基晴)