ギアマニアが初心者向けに中古セットを考えたら「8本」体制に その判断基準は“3/5”
キャディバッグに入れていいクラブ本数の上限は、14本とルールで決まっている。しかし、初心者は「打ちこなせるクラブ」に予算と練習量を投下することで、効率的にスコアを少なくできる。クラブを販売するGDOでは禁断のテーマではあるが、“最短・最速”で初心者を脱出できるセットを中古ショップ目線で考えてみた。
練習場で打てないクラブはコースでも打てない
「せっかく買うのであれば、良いものを買いたい。安価な初心者セットに走るべきではない」。これは正解だ。ウッドから、アイアン、パターと一式が箱で売られるようなクラブはやはり価格にフォーカスされていることが多い。
だからと言って、いきなり推しの女子プロと同じセッティングにすると、シングルでも使いこなせない3Wやロングアイアン、ロブウェッジが、逆にスコアを悪くしてしまう。はじめのうちは実際にゴルフ場で打ちこなせるものだけ手に入れればいい。判断基準はショット成功率だ。練習場で「5球中3球は当たる」クラブはコースで使える。この考え方で選んでいこう。
初心者の最初の壁である「100切り」は1ラウンドで9ボギー、9ダブルボギーで達成できる(27オーバー「99」)。基本的に全ホールでパーオンする必要がないのだ。そうであれば、6~8本のセットでも十分戦える。
やっぱりドライバーは使いたい
まずはドライバー選びから。フェアウェイウッドのほうが方向性は安定するが、ドライバーを打ちたいと思うのがゴルファーの性。ロフトは10度以上、可変スリーブが付いたモデルがおススメだ。ロフトを増やすことで基本的にフックフェースになり、ボールもつかまるようになる。
ヤマハの「RMX 220」(2017年)は1万円以下、キャロウェイ「パラダイム」(2023年)は2万円も出せば5年は使えるものが買えるだろう。スライス撲滅のためにはまず、短く持ってみよう。
困ったときのユーティリティを極める
1Wでいきなりチョロ、2打目でフェアウェイウッドを持ちたい気持ちはわかる。しかしミスを重ねることは、スコア崩壊の典型的なシナリオだ。まずはロフト角26度前後のユーティリティで前に進めよう。ラフからでも安心だ。距離の長いパー3でも重宝する。
最近はこの手のロフトのUTが人気で、中古では手に入りにくいかもしれないが、ダンロップ「スリクソンZ H85ハイブリッド」(2018年)は1万円以下で見つかる。テーラメイド「Qi10 MAX」(2023年)は2万円近くするが、予算を割いていいクラブだ。
飛び系アイアンはミスの幅が大きい
アイアンは流行りの「飛び系」は避けたい。たしかに当たれば飛ぶが、ミスショット時の飛距離の落ち方が激しく、散らばりやすい。軽量カーボンシャフトも手打ちを招きやすいので安定しにくい。ヘッドサイズはやや大きめ、キャビティか中空構造モデルを推薦する。シャフトも男性は軽量スチールが無難だろう。
100切りには7、8、9番、PWの4本セットで充分。5、6番を練習用にすると、コースで7番が簡単に感じるはずだ。ピン「G30」(2014年)(4本セット)は2万円以下、ブリヂストン「213HF」(2021年)(4本セット)は3万円以下で見つかった。
サンドウェッジはアマチュア仕様を
バンカーでも必要なサンドウェッジは、プロ使用率が“低い”ものを選びたい。ロフトは大きければ大きいほど、フェースに乗りにくい。58度よりも56度、56度よりも54度をチョイスすべきだ。その中でも、ヘッドが大きくワイドソールを持つウェッジがやさしい。
ちなみに初心者のアプローチは、SWを使うよりも、7番や9番でのランニング、PWでのピッチエンドランのほうが、打点がそろいやすく効率が良い。SWはバンカーなど非常事態専用にしよう。フォーティーン「DJ-4」(2019年)など、中古価格5000円前後で、アマチュア目線で作られたウェッジが多くある。できるだけ状態の良いものを選ぼう。
パターは愛着がわくモデルを
スコアメークはショートゲームがカギ。パッティングの重要度は高い。初心者はまず試打して、狙った距離まで転がるものを選ぼう。愛着がわくぐらいの(高い)価格のものがいい。長く使えば使うほど経験というスキルがアップする。「なんとなく構えやすい」「なんとなく使いやすい」という基準で十分だ。
6本でも7本でも100は切れる
1WにUT、アイアン4本にウェッジとパター。この構成で8本である。初心者はやはり7、8本で18ホールを回るのに支障はない。中古クラブなら約5万円で実戦的なセットが完成する。新品フルセットの1/3以下の予算で十分にコースデビューが可能だ。
とはいえ、筆者は合計10万円程度の投資を促したい。上達に応じてクラブを追加していくと、5年先まで使えるセットになっていくだろう。
「少なく、正しく、確率高く」――。それが、初心者が上達するための鉄則である。本数を減らすと、同じクラブでのショット回数が増える。結果的にスイングが安定し、ショットの成功率が上がっていく。クラブを使い分けるより、まず1本を使いこなすことが上達への近道だ。
“飛ばし“もゴルフの楽しみの要素だが、まずは安全運転を積み重ねることで、”ゴルフっぽさ”を感じて欲しい。使わないクラブを消去して、ミスを減らせば意外とあっさり100は切れる。初心者だけでなく、100切りに悩むゴルファーの参考になればうれしい。(文・田島基晴)
田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。