もしギアマニアが“グリップ目線”で中古市場をチェックしてみたら?
中古クラブを購入する際に見落とされがちなのが、グリップである。劣化するものとは分かってはいるが、適正な交換のタイミングはいつなのだろうか。ちなみに、「ダメなら交換すればいい」と簡単に考えられない理由もある。背景と注意点について解説しよう。
まずは「グリップのお勉強」から
ゴルフグリップの素材は時代とともに進化してきた。1950年代に革製グリップから、交換が容易でコストにも優れたラバー製に移行。1980年代までは天然ゴムを用いたラバーグリップが中心で、ゴルフプライド社のモデルが人気を集めた。
1990年代には石油由来の合成ゴムを使ったロイヤルグリップや、表面にポリマーを使用したWINNグリップが登場。その後、2000年代にはエラストマー素材を使用したIOMIC(イオミック)が台頭し、高価格ながら、カラフルで高い耐久性が注目されるようになった。最近ではポリマー系の耐久性を上げたパターグリップのスーパーストロークが大ヒット。グリップの多様性は増すばかりだ。
素材ごとに、それぞれの特徴をまとめてみた。
<ラバー系>手になじみやすく価格も手頃。ただし、近年は原材料高騰により値上がりし、樹脂系との価格差が小さくなっている。
<合成ゴム系>1990年代にヒットしたが、現在はやや人気が低下。硬めの握り心地で耐久性は高いが、経年劣化により硬くなりやすい。
<ポリマー系>柔らかく、しっとりとした感触が人気に。耐久性に難があり、表面が削れやすい。現在は主にパターグリップで使用されており、スーパーストロークがヒット。耐久性に改良を加えている。
<エラストマー系>耐久性が高く、カラーバリエーションも豊富。かつては高価だったが、ラバー系グリップの価格高騰により、現在では価格差がほとんどなくなっている。
「重さ」と「太さ」を忘れずに
グリップは素材の違いや、デザイン、色などに目が行きがち。バックラインの有無には好みがある。意外と見落とされがちなのが「重さ」と「太さ」である。グリップの重量は50g前後が一般的だが、純正グリップはより軽量化されている場合もあることを覚えておこう。
交換するときは違和感のないスイングバランスを保つためにも、元の重量に近いグリップを選ぶのが望ましい。特に軽量ドライバーやシニア向けクラブには注意が必要。ただ、あえて重いグリップを選び、インパクトで手が浮くのを防ぐメリットやミート率アップを期待する手もある。
太さについては、単に「純正と同じ」にするのではなく、自分の好みに合った太さを見つけてほしい。手の大きさで選ぶ方法もあるが、リストターンを抑えるために太くするなど、グリップ選びがミスの軽減に役立つ場合もある。太くなると、重量が増えるのはお忘れなく。
太さ(外径)をそろえるのは意外と難しい。同じ「口径」でもシャフトの手元の外径が違うと、装着時にそろえたい外径が異なる。筆者も以前はノギスを用いてグリップの装着時の外径をそろえていた。最近はクラブ交換頻度が高いので妥協している。現在はアイアン、ユーティリティ、フェアウェイウッド、ウェッジそれぞれのグリップを、同一メーカー、同一モデル、バックラインの有無をそろえて感覚のズレを防いでいる。
中古クラブとグリップの関係
グリップは最も消耗しやすい部分であり、中古クラブの見た目や評価にも大きく影響する。特にアイアンセットにおいてはシビアで「1本だけ違うグリップが付いている」「グリップの装着角度がずれている」といった理由だけで「訳あり品」の評価になり、ランクが下がる。だからこそ、購入する立場としては「グリップはどうせ交換するから」と割り切れば、ヘッドをお得に手に入れられる可能性がある。
ただし、「純正グリップ問題」には注意したい。 特にスコッティキャメロンなどの高価なパターは、純正グリップを他のものに交換してしまうと中古買取り時の査定が下がる。グリップにロゴや商品名が刻まれていると、オリジナルにこだわるユーザーにとってはマイナス評価になるからだ。
気になる交換のタイミングは?
グリップの寿命は、素材や保管状態によって大きく異なる。以下が素材別の交換タイミングだ。
<ポリマー系>ベタつき、粉っぽさ、表面の削れが目立ってきた。
<ラバー系・合成ゴム系>表面がカサカサしてきたり、ツルツルしたり、ひび割れが見られるようになった。
<エラストマー系>比較的長持ちするが、摩耗によってグリップ力が落ちてきた。
クラブを保管している場所が高温多湿だったり、直射日光に当たり続けたりすると劣化は進みやすい。一方で、適切に保管すれば15年以上使えるケースもある。延命方法としては、中性洗剤で洗い、タワシや硬めのスポンジ、紙やすりなどで軽くこすること。滑り止め効果をある程度回復させることができる。
とはいえ、感触に違和感がある場合は早めの交換を推奨する。グリップ交換は工房や中古ショップに依頼することが望ましいが工賃が掛かるのが痛い。自分で交換することは意外と難しくないので、チャレンジしてみてはどうだろう。
グリップはクラブと体をつなぐ唯一の接点である。状態や感触によって、ショットの質やプレーの快適さが大きく左右される。中古クラブを選ぶ際にも、グリップの状態と交換を前提とするかどうかを意識することで、より満足のいく買い物につながるだろう。(文・田島基晴)

田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。