今日から俺は「脱!マレット宣言」3000円の中古ブレードパターで感覚を呼び戻せ
高慣性モーメントによる優れた直進性、ストロークの安定性、ラインの取りやすさなど、あらゆる“やさしさ”が詰め込まれたネオマレット型パターが最近の売れ筋だ。しかし、世のゴルファーはそういったクラブに頼り切り、自分で距離感を作り、感覚を大切にする“パッティングの原点”を忘れてはいないだろうか。あえて今、マレットパターから一度離れてみる「脱・マレットのススメ」を中古ショップから説く。
L字とキャッシュインから始まったブレード型
パターはかつてL字型やキャッシュイン型が主流だった。アイアンの流れで作られたL字パターは、アイアン感覚でフェースをコントロールし、距離感を養えるメリットがある。キャッシュインはシャフトがヘッドの中心部に垂直に挿さったような構造で、インパクトの“芯”と手元の動きが完全に連動する特徴を持つ。数十年前のクラブとしてはやさしく、キャッシュ(現金)がどんどん入ってくるというのが名前の由来だ。
しかし、どちらもミスヒットした場合の寛容性が低い。そこで1966年、ピン社の創業者カーステン・ソルハイムによる「アンサー」が登場。トウ・ヒールに重量を配置し、寛容性も劇的に向上して大ヒットした。いわゆるピン型の祖である。
ブレード型とピン型を一緒くたにすることに反対意見もあるだろう。ただ、発売から70年以上経過し、マレット型やネオマレット型全盛の現代では、それら“対抗する”表現としてL字、キャッシュイン、ピン型をブレード型とまとめてもいいのではないだろうか。
なぜブレード型をススメるのか
慣性モーメントはミスヒットに対する強さを表す数値の指標と言える。高ければ高いほど、ヘッドがブレにくい。マレット型、ネオマレット型はそれを高くするために大型化し、重くしたものだ。結果的に重心が深くなるため、打感の“ダイレクト感”は薄くなる。また、ヘッドを意図的に動かしにくいというデメリットも生まれた。
そもそも、芯でボールを捉えられればヘッドはブレない。ゆっくりと、小さく動かすパターに、巨大な慣性モーメントなど必要なのか?と筆者は疑問に思う。ゴルファーは自ら距離感を養うべきだろう。そこでブレード型だ。マレット型に慣れたゴルファーが、感覚を取り戻すためには、あえて操作性重視のモデルに触れることが有効である。
とにかく安い 中古ブレードパター
“原点回帰”にふさわしいモデルたちは、今や中古市場で驚くほど安価で手に入る。例えば ピン「アンサー(旧モデル)」はピン型パターの元祖ともいえる一本。様々な形状や素材で作られている初期のアンサーは、無駄のない形状と素直な打感で、自分のストロークの傾向が明確になる。相場は3000~6000円ほど。30年以上前のパターだからヘッドがかなり軽いが、鉛をビッシリ貼ればまだまだ使える。
L字ブレードパターもダイレクトな打感とアプローチ感覚で打てるため、距離感をつくりやすい。意外と扱いやすいと感じる人も少なくないと思う。日本では1980年代後半に復活したジャンボこと尾崎将司が使用していた。マグレガー「トミー・アーマー IMG5」(1952年)や、メジャー最多勝利のジャック・ニクラスが使っていたマグレガー「ジョージ・ロー」など逸品が多い。
キャッシュインタイプはシャフトの延長線上で打てるので、芯に当てやすいのが特徴。アクシネットの「ブルズアイ」というモデルが有名だ。その形状をオマージュしたパターも発売されている。スコッティキャメロンからは「アメリカンクラシック III」という名前で復刻されている。状態によっては2万円で手に入ることも。
特価品コーナーを探せ
クラシックパターはコレクターズアイテムとなって驚くほど高価なモデルもあるが、中古ショップの特価コーナーに寂しく置いてあるものがほとんど。ぜひ手に取って、まずはボールを転がしてみて欲しい。球を芯で捉えた時の快感を味わえるはずだ。長く使うと、ヘッドの重さに頼らず、自分のストローク幅と強さでタッチを合わせる意識が芽生え、フェースの動きとインパクトゾーンへの意識が鋭くなる。ストロークの質が自然に上がっていくだろう。
イマドキのパター、マレット型やネオマレット型にはアライメントを取るための工夫が盛りだくさん。それにすがって、アドレスがアバウトになっていないだろうか。「脱・マレット」は高機能から自立し、己の感性と技術を呼び戻すための第一歩である。パター売り場の隅っこに、上達のヒントが潜んでいるかもしれない。(文・田島基晴)