ドライバーだって打感が命 「#音 #振動」で選ぶギアマニアおすすめ中古ヘッド
ドライバー選びは飛距離や寛容性(やさしさ)ばかりが注目されがちである。しかしゴルフはクラブを振り抜いた瞬間、手に伝わる感触や耳に響く音が心地よければ、それだけで一日は満足感でいっぱいにもなる。今回はドライバーの構造的な要素を整理しつつ、打感重視のゴルファーにおすすめしたい中古モデルを紹介する。
素材の変化と構造の進化が打音に影響
ドライバーヘッドの素材がパーシモンからメタル、そしてチタンへと進化する過程で、ゴルファーの打感に対する好みも変化してきた。特に比重が軽く、強度が高いチタンの登場で、フェースを薄くできるようになった。これが「トランポリン効果」を生み、ボールの反発性能が大幅に向上した。
中でも鍛造チタンフェースは、強度と成形精度に優れ、極薄フェースの製造が可能に。これに対して、カップフェース構造や高強度素材(例:DAT55G、SP700など)を採用したモデルは、弾きが強く、打音が高音になりやすい。
近年は、チタンから一歩進んでカーボンフェースも登場。テーラーメイドが2012年に発表した「グローレ リザーブ」は、70層カーボンフェース+チタンボディを採用した初のモデルだった。2022年に登場した「ステルス」は60層の進化型カーボンフェースにより、打感が劇的に改善された。
打感は「音」と「振動」で決まる
ドライバーの打感は「音」と「振動」が大きく影響する。フルチタン構造のドライバーは、金属特有のシャープな打音とダイレクトな振動伝達によって、「芯のある重厚な打感」を得られる。
一方、カーボンクラウンやカーボンソールを使用したモデルは、振動が抑えられ、音も控えめで、やや“あっさり”した印象になることが多い。住友ゴム工業(ダンロップ)のゼクシオ、ヤマハの一部モデルでは、ヘッド内部にサウンドリブ(溝)を設けて音のチューニングが施されていた。高音で弾きの良い打音により、飛距離アップのイメージを強調。音は重要で、かつてキャロウェイが発表した「C4ドライバー」(2002年)のように、フルカーボン構造による「ボコッ」という打音がネガティブに受け取られ、歴史的な失敗作となった例もある。
今、流行りの高慣性モーメント(MOI)設計のドライバーは「打感がぼやける」と感じるゴルファーも少なくない。これは重心が深くなることでフェースの挙動が安定する反面、インパクトの情報が曖昧(あいまい)になりがちなためである。逆に重心が浅く、重心距離も短いモデルは、打感がダイレクトに伝わりやすい。ちなみに、ヘッドに装着された可変ウエートの位置を変えると、音や打感も微妙に変化する。シャフトを入れ替えることでも、振動の伝達が変わり、結果として打感が変わることも多い。
フェースに“乗る”打感を求めるなら
フェースとボールが接着する時間が長いような感覚を味わえるモデルのひとつが、「ダンロップ スリクソン ZX5 Mk II LS」(2022年)。松山英樹が長く使用したことでも知られるフルチタン構造。リバウンドフレームにより、インパクト時にフェースがしっかりたわみ、ボールが吸い付くような柔らかい打感が得られる。低めの打音と重厚な手応えが特徴で、3万円以下でも見つかるコストパフォーマンスの高い一本である。
「プロギア RS F」(2024年)は、ブランドが原点回帰でフルチタン構造に戻したモデル。RSシリーズの中でも重心が浅く、打感が最もダイレクトに伝わる。スリーブの剛性も高く、ヘッドとシャフトの一体感が打感をさらに向上させた。価格は3万円台前半から。
爽快感・高音系の打感が好きな人に
「ピン G430 MAX」(2022年)はメーカーが「激飛快音」とうたう通り、爽快感のある金属音に仕上がっている。飛距離性能と寛容性の高さを両立し、万人に勧められるモデル。中古相場は4万円台前半。
爽快感にこだわるゼクシオシリーズの中でも、「ダンロップ ゼクシオ フォージド」(2013年)は“ゼクシオサウンド”の原点のような一本。爽快な打音と軽快な弾き感を備え、飛ぶイメージを強く持たせてくれる。中古価格は1万円を切ることもある。
打たずに打感を見極めるためには
試し打ちすることなく、打感をある程度把握するためには「鍛造」「フルチタン」「カップフェース」といった設計要素のキーワードをチェックしよう。音の傾向や打感の評判は、ネットのレビューやYouTube試打である程度把握できる。特に音は、好みが分かれやすいポイントなので確認しておきたい。ちなみにミニドライバーは、重心距離が短めで重心深度も浅めという特性があり、球持ちの良い打感を楽しめるモデルが多い。
ドライバーの打感は、複数の要素が絡み合う。飛距離性能だけでなく、音や手応えに注目することで、クラブ選びの楽しさは何倍にも広がるはずだ。最後にひとつ断っておきたい。打感とは突き詰めれば完全に個人の好みによるものである。本稿は筆者の主観が色濃く反映されている点はご容赦いただきたい。ぜひ皆さんも、自分の好きな打感を考えたうえで次のドライバーを選んでみてほしい。(文・田島基晴)