中古で始める「アイアン型UT」 ギアマニアが取り扱い指南
近年のゴルフクラブ市場ではユーティリティ(UT)といえばウッド型が主流だ。球が上がりやすく、やさしさを感じられる設計が支持を集める。一方で一定の層に根強く愛されているのがアイアン型UT。一部のゴルファーにとっては代えの利かない存在である。メリットとデメリットを整理し、中古で狙えるモデルを解説する。
アイアン型UTを好むゴルファーはどんなタイプ?
アイアン型UTの最大の魅力は、風に負けない強弾道と、ラインを出しやすい操作性にある。ウッド型UTによくある引っかけやプッシュのミスが出づらく、コントロール性に優れている。上級者や競技志向を持つヘッドスピードの速いゴルファーには、この点が非常に高く評価されている。特に「全英オープン」開催コースのように風が強く、地面が硬い、リンクスタイプのゴルフコースで威力を発揮する。
一方で、球の上がりやすさや寛容性ではウッド型に劣る。特にフェース下部でのミスヒットに対する許容度が低い。重心位置や慣性モーメントなど考えると、「ちょっとやさしいロングアイアン」という程度のお助け要素しかないことは覚えておいたほうがいいだろう。
アイアン型UTの歴史をひも解く
アイアン型ユーティリティの起源をたどっていこう。1988年にプロギアから発売された「インテストLX32」というカーボンアイアンは、アマチュアでも打てるロングアイアンを目指して作られ、比重の軽いカーボンとステンレスフレームから構成された。独特の色からタラコと呼ばれ、国内男子ツアーでも使用者が急増した。当時の価格で4万2000円と、ドライバーが買えるぐらい高価だったが大ヒット。筆者も定価で購入した。
同ブランドはその後「ZOOM i」(1997年)を発売。チタンの中空ヘッドで、ターゲットは競技志向ゴルファー、フェアウェイウッドより飛んで、アイアンよりも高い方向性を目指し、狙い通りツアーでブームとなった。当時はまだウッド型UTは存在していなかった。
その後、1999年発売のフォーティーン「HI-858」は、宮里優作やアーニー・エルス(南アフリカ)らが使用して大ヒット。しかしその後はウッド型UTの登場により、アイアン型UTは陰りを見せる。近年はUTではないアイアンの寛容性がアップしていることもあり、中空構造のアイアンも1つのジャンルとして確立された。
オススメの中古アイアン型UT
最近はアイアン型UTを新製品として発売しているメーカーは限られている。しかし、使い続けるツアープロも少なくない。タイトリスト「U505」(2023年)は、ビクトル・ホブラン(ノルウェー)やキャメロン・ヤングが使う。構えやすい形状と、中空らしくないしっかりした打感が魅力。2万円台前半から見つかる。
ダンロップ「スリクソン ZX ユーティリティ」(2020年)は、シェーン・ローリー(アイルランド)、キーガン・ブラッドリー、「全米オープン」を制したばかりのJ.J.スポーン(全米オープン時は5Wに変更)が使用。1万円台前半から探せるはずだ。次作の「スリクソン ZX MkII ユーティリティ」(2022年)はアダム・スコット(オーストラリア)が握っていた。
平田憲聖が愛用するミズノ「MP FLI-HI ユーティリティ」(2010年)は中空構造ながら、打感の良さと操作性が魅力で、アイアンからのつながりを重視するゴルファーに向く。見つかれば1万円以下で手に入る。
ロフト角、シャフト選びの注意点
UTのロフト角やシャフト選びは、アイアンセットとの「つながり」が重要である。4番アイアンの代わりであれば22~24度、3番の代用なら19~21度前後が目安。アイアン型UTはコントロール性を重視するため、反発力が高いフェースが採用されるケースは少ない。ロフト通りに飛ぶモデルがほとんどだ。
シャフトに関しては、スチールとカーボンのどちらを選ぶかで振り心地が大きく変わる。アイアンと同様のスチールシャフトならばスイングの流れはつかみやすいが、重量やしなり感が合わない場合は重めのカーボンシャフトを選ぶのもいい。目安としてはアイアンのシャフトより10~20g軽いシャフトだ。
上級者が好むアイアン型UTは、中古市場では、さまざまなシャフトが装着された個体が流通しているため、掘り出し物を探す楽しみもある。数こそ少ないが、今なお確実な価値があるクラブが、アイアン型UTなのである。ある程度のヘッドスピードと技術があるゴルファーは一度試して欲しい。(文・田島基晴)