中古で始める“ショートウッド入門 ”ギアマニアが選ぶのは「G425」、「パラダイム」…
フェアウェイウッド(FW)の次に短い番手はユーティリティ(UT)が定番だ。しかし、UTがここまで普及する前──1990年代は「ショートウッド」と呼ばれるクラブがロングアイアンの代役だった。今回はいま再び脚光を浴びているショートウッドを普及させたい、ギアマニアの筆者の熱い思いを綴ってみた。中古ショップで一度ぜひ手に取ってほしい。
UT全盛時代 ショートウッドは一周回って新しい
1980年代の後半、ゴルファーの悩みはロングアイアンをうまく打てないことだった。それを救ったのが7W、9Wといったショートウッド。起爆剤になったのがキャロウェイ「ビッグバーサメタルウッド」の“ヘブンウッド”という番手で、「天に届くほど高く上がる」という謳い文句で発売された。7Wのロフトに4Wぐらいの長さを持つシャフトが特徴的だった。
その後、「ビッグバーサ ウォーバード」の大ヒットで7W、9Wは標準ラインアップになった。2001年の「全米プロ」では片山晋呉が「スチールヘッド」の7W、9Wを使い4位タイと大活躍し、さらに脚光を浴びた。
以後はその座をUTに譲ることとなったが、ここ数年、最高峰のツアーでもショートウッドをキャディバッグに入れる選手が増えている。それも充分に飛距離が出せるスコッティ・シェフラー、アダム・スコット(オーストラリア)らが使い始め、松山英樹もテストした。ボールの上がりやすさ、キャリーの安定性、そしてラフからの抜けの良さが評価されているようだ。ボールが高ヘッドスピード域で低スピン化している影響もある。
筆者は長年愛用している7Wに加えて9Wも導入。ボールの上がりやすさ、ミスヒットの強さに驚いた。同じロフトのUTよりも深いラフから打ちやすく、ベアグラウンドでもキャリーが出せて手放せなくなった。
意外と多い「UTが苦手」なゴルファー
UTは万能クラブのように思われがちだが、意外と「どう構えていいのかわからない」と感じるゴルファーは多い。インパクトもアイアンのように打ち込むべきか、ウッドのように払って打つのか…。構え方やスイングイメージが曖昧になりやすいデメリットがある。
また、「左に引っかかる」という悩みを抱えるケースが多い。シャフト軸線よりフェースが前にある(FP値が大きい)ショートウッドに比べ、FP値が小さいUTは引っ掛けやすい構造になっている。ミスが出ると、アイアンよりも距離が出るためダメージが大きい。
そもそもヘッドの体積がUTより大きいショートウッドは、慣性モーメントも大きく、重心深度が深いのでミスヒットに強く、ボールも上がりやすい。ロフト角が大きくなればなるほど構えにくいと感じやすいのは、ショートウッドもUTも共通の弱点だが、UTが苦手な人ほど、ショートウッドに替えると途端に安定することがある。
中古市場で探すショートウッド
ショートウッドのビギナーはまず7Wから試し、魅力を感じられたら9Wにも挑戦してほしい。そこで、9Wまでラインアップされているモデルをおススメしよう。探しやすいのはピン「G440 MAX」(2025年)や「G425 MAX」(2020年)。人気があり、市場に多く出回っている。
ショートウッドの雄であるキャロウェイは熱心に作り続けており、歴代モデルに11Wまであったりもする。「エリート」(2025年)や「パラダイム」(2023年)などはオークション、フリマサイトを利用すれば7、9、11Wとそろえられるかも。
国内メーカーではマジェスティゴルフが以前、13Wまでラインアップしていた「シャトルブラック」(2023年)などがオススメだ。最も探しやすいのが住友ゴム工業(ダンロップ)の「ゼクシオ」シリーズだろう。登場以来、7W、9Wを作り続けている。
手に入れば救世主になるかも
ショートウッドのハードルはまず、なかなか手に入りにくいことだ。ハードヒッター向けのモデルだと7Wすらない。現在9Wまで製品化されているのはピン、タイトリスト、コブラ、キャロウェイ(カスタム対応)、PXG、ダンロップ、ロイヤルコレクション、ロマロとかなり限られている。
入手できた際は、きっと力になってくれるはず。「UTよりも高さがほしい」「グリーンでもっと止めたい」「UTが構えにくい」というプレーヤーにこそ、ショートウッドはきっと刺さる。9W、11Wといったクラブは懐かしいだけでなく、いま使っても理にかなう武器なのだ。UT全盛時代だからこそ、あえてショートウッド──それがゴルフをもっと楽に、もっと面白くしてくれるはずだ。(文・田島基晴)
田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。