新「ボーケイフォージド」人気きっかけで…改めて“グースネック”を中古で考える
タイトリストの新しい「ボーケイ フォージドウェッジ」が7月に発売され、プロゴルファーにもグースネック形状のウェッジを使う選手が増えている。再評価が進んでいるのは、単なる流行ではなく、日本特有の芝質とウェッジの相性にある。中古ショップでも手に入るだろうか。
日本の芝にピッタリなグースネック形状
日本のゴルフ場の多くのフェアウェイは高麗芝で作られている。洋芝よりも葉が硬いため、ボールが比較的浮くライになりやすい。そのため、ヘッドがボールの下をくぐるなどのリスクは高い。
グースネックのウェッジは形状的にリーディングエッジが地面に沿いやすい。芝に負けにくく、ソールがスムーズに滑るといったメリットがある。薄い芝のフェアウェイや花道でのアプローチにも強く、距離感も安定しやすい。また、グース形状はフェースローテーションを抑えた方が扱いやすく、アマチュアがミスしやすい「フェースを開いて使うウェッジショット」を強要しない。その点でも日本人ゴルファーに向いている。
構えた時に、打面がシャフト軸線よりも飛球線後方に位置するグースネックは、ミスヒットにも強い。一般的にやさしいと言われるアイアンセットのウェッジはすべて同様のタイプ。緩やかなヘッド軌道とも相性が良く、ダウンブローで打つのが苦手なゴルファーにはありがたい。
アオキもジャンボもマルちゃんも
グースウェッジは日本で長く愛されてきた。かつてのモデルは最新のボーケイ フォージドのようなセミグースではなく、構えると驚くほどグース度合いが強かった。青木功が愛したリンクスマスターモデルをはじめ、ジャンボ尾崎が監修したブリヂストンの「ジャンボMTN」や「J‘s」、丸山茂樹が日本で使用していたブリヂストン「ツアーステージ MR-23」というモデルもグースがしっかり入っていた。
この流れを変えたのがタイガー・ウッズだった。登場以来、ツアーで多くのプロがクリーブランドやボーケイのストレートネックタイプを愛用して市場でも大ヒット。それでも、良質なグースウェッジは作られ続けていた。昨今のグースネックへの回帰は、道具の進化や海外モデルの流行によって埋もれていた価値が、再び見直されているだけなのだ。
「ボーケイフォージド」ってそもそもいつから?
ボーケイフォージドウェッジは2011年、ボブ・ボーケイ氏が日本のツアー現場やプロの意見を取り入れて製作したボーケイ史上初の軟鉄鍛造モデルだ。2年ごとにモデルチェンジされ、軟鉄鋳造のSMシリーズと比較すると適度なグースがついているのが特徴で、リーディングエッジの丸みも抑えられている。19年モデルからマルチマテリアル構造と呼ばれ、トウ側にタングステンが内臓され、センター重心になった。
筆者は2017年までのシンプルな構造のヘッドに魅力を感じる。1万円を切る価格で見つかるが、程度の良いものはかなり少ない。フォージドの方がヘッド重量が軽く、バランスも重すぎないので、オススメしたい。年式によって大きく進化しているわけではないので、程度で選んでも良いが、前出のマルチマテリアル構造か否かは好みによるだろう。
おすすめ中古グースネックウェッジ
中古でグースネックのウェッジを探してみよう。マスダゴルフ「M425」はグースの魅力が詰め込まれたロングセラー。ヘッドサイズも大きく安心感もある。ジャンボ尾崎のリクエストにすべて応えたという噂があるウェッジだ。1万円台後半で見つかるだろう。
キャスコの「ドルフィンウェッジ DW 125G」(2025年)は、やさしさを徹底追求した設計で、抜けの良さとミスへの寛容さが際立つ。リーディングエッジが低く入り、芝に刺さらずスッと抜けるソール形状が魅力。1万円台で手に入れたい。
リンクスの「MASTER MODEL 完全復刻」(2024年)も代表的なモデル。フラットなソールはバンカーで威力を発揮する。1万円台前半という価格も魅力だ。
ピン「グライド 4.0 EYE 2 グラインド」(2022年)は強烈なグースの名器「EYE 2」を再現した。ピンは歴代ウェッジにEYEソールを残している。1万円前後が相場だ。
グースウェッジは日本の芝質、アマチュアの打ち方、トッププロが選んだという事実に後押しされた日本の合理的なスタンダードである。ボーケイ フォージドウェッジが注目される今こそ、中古市場をのぞきたい。持ちうる恩恵はアマチュアのスコア改善に直結するはずだ。(文・田島基晴)
田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。