「左手首の挙動が安定」マスターたちのスイング解析/ジョーダン・スピース【解説:目澤秀憲】
マスターたちによる祭典がいよいよ始まる。オーガスタを攻略してグリーンジャケットに袖を通すのは誰か。「マスターズ」優勝をサポートした経験を持つ目澤秀憲コーチが、優勝候補たちの最新スイングを分析・解説する。2回目は、ジョーダン・スピース。
安定したフェードが戻ってきた
ジョーダン・スピースは、復活してほしいという願望も込めて、優勝候補に挙げたいと思います。おととしから苦しんでいた左手首のケガを昨年の8月に手術して、ことしの「AT&Tペブルビーチプロアマ」(2月)から復帰しました。その後のプレーぶりを見ていると、強かったときのスピースにだいぶ戻っていると感じます。
とくに「フェニックスオープン」(4位タイ)では、スピースの持ち味である安定したフェードが打てていましたし、難しい状況からのアプローチで3回もチップインしていました。あれができるということは、左手首の状態はかなり良いということだと思います。
スピースがスマイリー・カウフマンのポッドキャストに出演して話していたのは、ジュニアの頃から左手首の形(動き)を大事にしていて、テークバックで左手首を掌屈させながら上げて、トップでは左手甲から腕までが真っすぐになっているのが自分の中の理想ということでした。スピースは元々フェードヒッターで、シャフトを傾けて(ハンドファーストで)インパクトするタイプ。コリン・モリカワやDJ(ダスティン・ジョンソン)、ブルックス・ケプカとタイプ的には同じです。
とくにDJは、左手をずっと掌屈させてフェースを閉じたまま、体のローテーションでフェードを打っていますが、あれがひとつの理想形ということでしょう。そういう意味では、左手首の挙動の安定は、彼の生命線でもあるわけです。
悪いときのスピースは、左手首が背屈方向に折れたり、形が掌屈になっていたとしても無理やりやっている感じがありました。今はそれがなくなって、トップで手元を低く、深く上げようとしているのが見て取れます。そうするとトップで左わきが強く縮むので、そのプレッシャーを感じながらクラブを真っすぐ引き下ろしやすくなります。結果としてアウト‐インを強調しすぎなくても、ちゃんとフェードのインパクトゾーンが作れているということです。
フェードヒッターが調子を崩すと、クラブが外から下りすぎてしまうのですが、それが今はほとんどなくなっています。
オーガスタで勝つ条件として、左サイドを「消して」、ほぼストレートに打ってフェアウェイやグリーンをキャッチしなくちゃいけないということがあります。今シーズンの良かった試合に関しては、そういう安定したストレートフェードが打てているので、期待値は高いです。
ショットの感覚が良くなってくると、アプローチも良くなる傾向がありますし、何よりスピースはパッティングがうまいので、手首が万全の状態であるならば、技術的なアドバンテージはフィールドの誰よりもあります。そういう目線で注目してもらうと、かなり面白いのではないでしょうか。(取材・構成/服部謙二郎)