報道アナウンサーがゴルフYouTuberに転身する理由 関西テレビ退職の坂元龍斗さん
関西テレビ放送(カンテレ)で報道・情報番組を中心に活躍してきた坂元龍斗アナウンサー(40)が5月1日、同局を退社した。ゴルフYouTuber兼フリーアナウンサーに転身するという。大阪のゴルフスタジオで思いを聞いた。
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ゴルフにハマったのは2008年、カンテレ入社1年目だった。アナウンス部の先輩3人にラウンドに連れていってもらった。早大野球部の出身で、運動神経には自信があった。「180をたたきました。全部OB。先輩のおじさんに勝てなくて、なんなんだこのスポーツはと。そこからハマった」
iPhoneが日本で初めて発売され、ケータイでは荒いながらも動画を撮れるようになっていた年だ。練習のたびに自身と海外メジャー15勝を誇るタイガー・ウッズのスイングを見比べた。「大学時代にどうやったらピッチャーの球が速くなるかの動作解析もやっていた。ゴルフも似ていて、それが自分にとって面白かった」とのめり込んだ。
「そんなに球数は打たない。1球を大事にして、きょうの課題ができているかを考える」。3カ月でスコアは100を切り、1年後には90、2年後には80を切った。25歳で第1子が誕生してゴルフに費やす時間は極端に減ったが、子育てが一段落した35歳の時に再びゴルフへの情熱が湧き上がった。
「早朝ハーフに行ってから出社していた。グリーン周りはやっぱり行かないと上達しないので」。多忙なアナウンサー業でクラブを握れなくても、毎日動画を見比べた。ノートに課題を20個書きためて次の練習のイメージをふくらませた。
アプローチとパターが得意で「いかに感覚を排除するか。練習量の少ないアマチュアが目で見て距離感を合わせるのは絶対に無理。とにかく距離計、パターなら歩測して振り幅を決めておいてマシンのように打つ。それでとんでもないミスはなくなる」と持論に熱が入る。
コロナ禍が次の転機となった。2021年6月にYouTubeチャンネル「シングルになりたいアナウンサーの休日ゴルフ」を開設した。「YouTubeをやってみたい気持ちは何かしらあった。技術的なことを言葉にするのが好きだし、これなら登録者数1万人ぐらい行くと思った」と振り返った。
それでも準キー局の正社員のアナウンサーが個人のチャンネルを持つのは“前代未聞”のことだ。「一番の条件が関西テレビを名乗らないってこと。関西テレビの名前を使った時点で“社業”になる。たぶん動画では関西テレビって一回も言ってないはず。やっぱりアナウンサーは炎上とか許されない。幸いにも社内の上の人がゴルフ好きだったし、そこに話を通して根回しもして。副業がOKなのがおそらく関西テレビだけ」。チャンネル登録者数は予想をはるかに超え、2025年5月現在で24万人を突破した。
同局では、男子ツアーの中継を担当することもあった。ラウンドリポーターを務めた時、解説の男子プロ・佐藤信人から掛けられた言葉も印象に残っている。「佐藤さんから自分にライの状況や、打てそうかを聞いてくれた。『こいつはゴルフのことが分かっているんだな』って信頼してくれて。素直にうれしかった」
年収1000万円以上の安定した職を辞めると伝えた際、同じカンテレ勤務の妻(漫才師の中田カウスさんの娘)には猛反対された。「ブチギレられましたが、僕としては勝負できるって、プレゼンをしました」と説得した。
あらためてゴルフの魅力を聞いた。「友達と行ったら毎回楽しいし、会社の人と行っても楽しいし、初めての人でも仲良くなれる。すごいスポーツ。(教える時は)目の前の人に上手になってほしい。100を切った喜び、90を切った喜び。大人から始めてうまくなった方法を一人でも多くの人に広めたい」。伝える仕事、それはこの先も“天職”であり続けるのだろう。(編集部・玉木充)
<クラブセッティング>
ドライバー:テーラーメイド ステルス(10.5度)
シャフト:三菱ケミカル クロカゲ XT(60g台、硬さS)
ユーティリティ:タイトリスト 913H(21度、24度、27度)
アイアン:ピン i210(6、7、8、9、U、W)
ウェッジ:ピン グライド(54度)、タイトリスト ボーケイ(58度)
パター:ピン 2021 ハーウッド
※1年前に3番ウッドが折れて13本でプレー