◇米国男子◇トゥルーイスト選手権◇ザ・フィラデルフィア・クリケットクラブ (ペンシルベニア州)◇7119yd（パー70）
朝の練習グリーンで、エリートフィールドの選手たちのパッティング練習を観察した。トップ選手はスタート前に何をチェックしているのか。その内容や傾向をお届けする。
たいていの場合、キャディが選手より先に練習グリーンに現れ、練習の準備をしている。まずはグリーン上に傾斜計を置き、平らで真っすぐのラインを確認。その場に線を引いたり、パッティングプレートや鏡のプレートを置いたり、ストローク用のひもを差したり…。その様子を見ていると、選手たちがその日に取り組む練習のルーティンを想像できる。
例えば、ルドビグ・オーベリ（スウェーデン）。キャディのジョー・スコブロン氏が、キャディバッグからアライメントスティック、ペルツの「パッティングチューター」という練習用具、そしてミラーを取り出し、3つを組み合わせるようにして真っすぐのラインに対してセット。しばらくするとオーベリが現れ、鏡を見ながら目の位置や肩の位置をチェックしつつ、球を打ち始めた。
パッティングチューターには小さな球体が2つ乗っていて、その間を通すように打って出球をチェックする。この日のオーベリは、右側の球体に何度かボールを当てていたから、フェースが開きやすいのだろう。その後グリーン上の別の場所に行き、ヘッド幅のトウヒール外側にそれぞれティを差して、ヘッド軌道の矯正をするような練習をしていた（ティに当たらないように打つ）。
その横ではミンウ・リー（オーストラリア）が、空中に張ったひもの下でヘッドを動かす練習をしていた。ヘッド軌道の確認だろう。合わせて鏡も使い、目線を確認しながらパッティングをしていた。カップに入れるわけでなく、1m先のひもの支柱に当てて終わり。地味ではあるが、その日のストロークの癖が一発で分かる、非常に効果的な練習と言える。
一方、その奥ではジャスティン・トーマスが鏡とプレートの2枚を置いて、両方を組み合わせて練習していた。鏡で目線をチェック。プレートにはティを差す穴があり、こちらも出球の管理ができる練習器具だ。トーマスが使用していたそのプレートは、ザンダー・シャウフェレのパッティングコーチ、デレク・ウエダ氏が開発した「パッティングプレート」。松山英樹も使っているのを見かけたが、PGAツアーで今、だいぶはやっている模様。
ほかにも練習グリーンで様子を見ていると、鏡を使っている選手が実に多い。それだけ、目線やアライメントは毎日ズレるということなのだろう。ちょうど、鏡とパッティングプレートをセットしていたシャウフェレのキャディ、オースティン・カイザー氏に鏡を使用する利点を聞いてみた。
「アドレスすると、目線がどこを向いているかが一目瞭然。ザンダーは目が左を向く癖があるので、それを日々チェックしているのさ。時々もっと大きめの鏡プレートをつけ足して、肩のラインもチェックしているよ」とカイザー氏。
もう一つの「パッティングプレート」の効果も説明してもらった。「フェースの向きや打ち出し方向のチェックをしながら練習しているんだ。最初に自分が打ち出したい方向にパッティングプレートをセットし、プレートの示す方向通りに打ち出せて、強さも自分が思った通りだった場合、それでもカップを外れるとしたら、それは最初の『読み＝プレートの向き』が間違っていることに気付ける。逆に、プレートの向きが合っていれば、『打ち方の問題（打ち出し方向のズレ、タッチの強弱）』で入っていないと自分で気付けるので、その場で修正できるんだ」。その後練習場にやってきたシャウフェレとカイザー氏は、設置したプレートの向きがライン通りに向けているかを何度も確認していた。
アライメントチェック、目線チェックはプロの日課。トッププロでもそれだけズレるのだから、我々アマチュアなんて…言わずもがな。（ペンシルベニア州フロータウン／服部謙二郎）
