「『6番アイアンで80ヤード』そこにスイングの全てが詰まっています」U-25世代スイングセルフ解説/岡田晃平
平田憲聖、杉浦悠太、米澤蓮…と、若手の台頭が著しい男子ツアー。お互いが刺激し合う相乗効果、まさに“強い世代”を形成しつつある。彼らはどんな経歴でゴルフをしてきたのか、そしてどんなスイングをしているのか。「U-25世代」の若者たちにスポットをあて、彼ら自身の口でスイングをセルフ解説してもらった。
四国の先輩の背中を追いかけて…いざ世界へ
今回ピックアップする若者は、23歳の岡田晃平(おかだこうへい)だ。9歳で始めたゴルフも、小学校時代はソフトボールと二足のわらじ。明徳義塾中学校に入ってからゴルフ一本にしぼり、腕を磨いてきた。その後は明徳義塾高から東北福祉大と進み、同じ道を歩んだ四国の偉大な先輩(松山英樹)の背中を追いかけてきた。23年「日本ツアー選手権」15位、同年「日本オープン」でローアマに輝くなど、アマチュア時代からツアーでも活躍し、プロ転向。ルーキーイヤーの24年は賞金ランク50位でシードを獲得。すでにスイングの完成度が高い、注目の若手選手だ。
では、早速彼のスイングをひも解いていこう。
フルショットで半分の距離を打つ難しさ
―とてもキレイなワンピースで振っていますね。どのようにスイングを作ってきましたか。
子どもの頃は、父親に言われて、ハーフショットとスリークォーターショットを反復練習していました。自分の中ではそれがスイングの基礎になっていて、いま思えばそれが良かったんだなと。
―お父さんがコーチでしたか?
クラブの握り方などは教わりましたが、あとはほぼ自分でスイングを作ってきました。父親自身はプロではなかったので(ベストスコア67の腕前)、研究して僕にアドバイスをくれるような感じでした。家に「モダンゴルフ」とかありましたし、江連さん(江連忠プロ)の本もあってよく読んでいました。
―ハーフショットがスイングの基礎と言いますが、どのような意識で振っているんですか?
体を左右にブラさず、軸回転で打つことを心がけていました。10回打ったら10回同じスイングをすること。クラブをアウトに上げたり、インに引いたりせず、同じスイングを繰り返すことを意識していました。よく6番アイアンでハーフショットの練習をやっていましたが、フルショットの半分の距離をしっかり打てと言われていました。
―半分の距離を打つ狙いは?
6番のフルショットが160ydだったら、チョンと打って低い球で80yd打つのは簡単じゃないですか。そうではなくて、しっかりフルショットの大きさで打って、半分の距離を打つ。それには先ほど言った軸回転でも打たなければいけないですし、リズム感も大事になってきます。また、80ydがしっかり打てるようになると、体の正面にクラブがある感覚がつかめると思います。スイング中ヘッドがどこにあって、クラブフェースがどこを向いているかが分かるようになる。結果的に、ライン出しとか林の中から距離感を出すショットなども得意になりました。
―明徳にいたころはずっとその練習を?
はい。いつも行く練習場に、ちょうど80ydの看板があったので、それを狙って練習していました。最初は10回打って2、3球が看板に当たるようになって、徐々にその回数が増えていきました。横峯さくらさんが明徳にいたころに使っていた練習場で、さくらさんが打っていたという左端の打席でいつも打っていました。
―フェードが持ち球ですか?
はい。中3でフェードに替えたんです。それまではドローだったのですが、飛びすぎる癖があって。ショートホールでアイアンを持って、150yd打ちたいのに当たりすぎて160yd打って、グリーン左奥に外したりしていました。そういうミスはフェードに変えたら落ち着くんじゃないかなって思ったんです。
―誰かに指摘を受けて変えたんですか?
周りに相談はしてないですね。元々ドローがめっちゃ得意だったので、変えた後は周りに「フェードにしたの?」ってびっくりされました。変えた後も3年ぐらい言われていましたね(笑)。
―ドローからフェードに変えるのは簡単な作業じゃないと思いますが。
最初の1年間は自分でも「どこ打ってるの?」って感じで。数字はいいのに、内容が伴いませんでした。中3の冬から始めて、ようやくモノになってきたのは高校2年の途中ですね。結果もついてきて、四国アマにも勝てたんです。2年かかりましたが、やっぱり変えて良かったと今でも思っています。
ドローからフェードへ。まずはクラブの上げ方を変えた
―具体的にどのようにスイングをいじったんですか?
テークバックから変えました。それまではだいぶインにクラブを引いていたんですが、それをほぼストレートに上げる。もともと上げたところに下ろすタイプなので、ストレートに上げれば、ダウンスイングの軌道がもうちょっと外に来るかなという発想です。上げ方がだいぶ変わって、今はもうインには引けなくなりました。
―最近では高い球に取り組んでいると聞きました。
一昨年のソニーオープンで松山さんと一緒に練習ラウンドする機会があって、「もうちょっと球を高くしたほうがいい」というアドバイスを頂いたんです。自分では(球が)そこまで低いと思っていなかったんですが、「球が低いと止められないし、ロングアイアンもショートアイアンも全体的に球を高くしないといけない」と言われて。松山さんが普段PGAツアーの選手と戦っていると、そう思うんでしょうね。そこから球の高さをあげる作業が始まりました。
―球の高さを上げるためにどのようなことをやってきましたか?
日本に帰ってきてすぐに、アイアンをハーフキャビティからマッスルバックに替えました。まずクラブで球を上げようと画策したんです。スピンが増えることで打ち出しの高さも変わるだろうなって。スイング面では、フォロースルーに変化を加えました。フォローがだいぶカット軌道になっていたので、それをストレートに振り抜くようにしました。
―フォローを変えるだけで球が高くなる?
カット軌道だと球を潰しにいっているので、やっぱり打ち出しは低くなります。ストレートに変えることで、若干フェースが開いた状態で入ってきますし、打ち出しも高くなる。ドライバーでもともと打ち出しが2度しかなかったんですけど、7度ぐらいまで上がった。アイアンも明らかに球の高さが変わりました。
―コーチをつけずに自分でやってきて、スイング改造で迷ったりしないですか?
大きく変えると結果が出なくなるのは分かっているので、いつも一つずつマイナーチェンジという感じです。たくさんスイングをいじるのは好きじゃなくて、一つずつクリアしていけばいいかなと思っています。スイングをいじる際も体の動きは気にしないで、ヘッドの動きだけを気にしています。クラブの通り道を決めればあとは勝手に体が反応する。インから入れる、アウトから入れると決めれば、体がその動きをし始める。朝のスタート前の練習でも、今日はつかまるなってなったら、クラブの軌道を考えてちょっとカットで打ったりしています。
―クラブの軌道を先に考えたほうがいいということですね。
そうですね。根幹には6Iのハーフスイングはありますが、クラブの上げ方下ろし方などは、こうしたらいいんじゃないかなとは常に考えています。クラブの上げやすさとかもあるので、一度ダメって思ったものは続けません。良かったことをどんどん整理していく作業です。
―昨年は腰のケガもありましたが、今はしっかり練習ができていると?
そうですね。ANAオープン(9月)ぐらいからしっかり練習できるようになって、球を打てています。元々ハイドローだったので、その時に比べたらフェードでピンに止める球がまだできていません。早くハイフェードが打てるように。ことしはそこを目指して取り組んでいます。
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開幕戦「東建ホームメイトカップ」での平均飛距離は305.87yd。ツアーでも屈指の飛ばし屋は、フェアウェイキープ率も高く、まさに「飛んで曲がらない」を地でいく。若手の中でも注目のスインガーは、中・高・大の偉大な先輩からのアドバイスを受けて、さらなる高みを目指してハイフェードを習得中だ。思い描くのは、その松山英樹と同じPGAツアーの土俵で活躍する姿。この先も彼の動向に注目していきたい。(取材・構成/服部謙二郎)