「スイングは気にしない。考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲

「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
男子ツアーで最も旬な男“ゲンジ”のスイングを深掘り

河本力清水大成金子駆大…と、20代若手選手の活躍が目立つ男子ツアー。お互いが刺激し合う相乗効果からか、まさに“強い世代”を形成しつつある。彼らはどんな経歴でゴルフをしてきたのか、そしてどんなスイングをしているのか。自身の口でスイングをセルフ解説してもらう。

当初はプロになると思っていなかった生源寺

今回ピックアップするのは、現在賞金ランキングトップをひた走る27歳の生源寺龍憲(しょうげんじ・たつのり)だ。10歳でゴルフを始め、本格的に打ち込んだのは大学時代からだった。「そもそもプロになると思っていなかったですからね。高校、大学とアマチュアでやりながら、負けたくない気持ちが芽生えてきて。そこで効率よく上達するにはどうすればいいかを考えているうちに、上手くなっていきました」と振りかえる。ジュニア時代から華々しい成績を残して鳴り物入りでプロ入りするケースもあるが、生源寺の場合はその真逆。下積み時代は長く、コツコツと地力をつけて今の地位に上がってきた。

では、彼がたどりついたスイングはどんなものか。早速ひも解いていこう。
*普段25歳以下を取りあげる企画ですが、今回は特別に生源寺プロをピックアップしています

スピードを上げたことでスピン量の上限が上がった

「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
小さな体でキャリー300yd近く飛ばす

―どんなイメージでスイングしていますか?

フェースローテーションを使わずに、ボディターンで球をとらえるようなイメージがあります。

―フェードボールが得意そうに見えます

そうですね。フェードのほうが打ちやすいです。ドローはどちらかというと苦手。絶対にラインを出さなきゃいけないケースではフェードになります。ティショットでドローも打ちますが、アイアンは基本フェードです。

―なぜフェードに?

もともと飛ぶほうじゃないというのもあります。高い球より低い球を打つほうが得意でした。フェードを打つほうがダウンブローの数値が安定するので、正確性の面でも良かった。そのほうがゲームを作りやすかったんです。

―学生時代もずっとフェード?

はい。特に途中で変えていません。トレーニングを始めてから、スイングスピードが出るようになって、ドロー系の球も打てるようになりました。以前のスピードだと、ドロー系を打つと前に強い球が出ちゃって。スピンが少な過ぎて試合では使えない球でした。でも今は、スピンが多い球も打てるようになっています。

「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
スイング軌道などは深く考えずインパクトの当て感を大事にしている

―つまり球種が増えた?

そうですね。やはりヘッドスピードが上がったのは大きいですね。ドローでもスピンが入るようになって、止める球が打てるようになりました。しかもそれが短いクラブでもできる。そもそもスピン量を落とすのはいつでもできたんですけど、上げることができなかった。今後も自分の(スピン量の)上限を上げていきたいと思っています。

―だいたいどのぐらい前からトレーニングを?

もう3年ぐらいやっています。

―数字に表れたのはどれぐらい経ってから?

トレーニングを始めて割とすぐ変わりましたね。3カ月ぐらいで15yd伸びましたから。2打目の番手も違うし、届かなかったロングも届くようになりました。

―具体的にどのようなトレーニングですか?

例えば、仙骨(骨盤の後ろ部分)のトレーニングがあるんですけど、そこが安定するとパワーポジションが安定する。そういうのを取り入れながら、動きのトレーニングもやって、両者を連動させる。単純にパワーを出すだけじゃなくて、筋肉の使い方や強さなども意識して、体のバネが使えるようにしています。

―スイングに関しては誰かコーチと一緒に取り組んでいる?

昔からコーチはいないです。スイングを習うことは今までなくて。自分で自分のスイングを理解していればいいかなって思っています。

―スイングで迷うことは?

自分の思ったことをやっていい方向にならない時もありますが、大きく崩れることはないです。スイングに関しては、自分で考えられることは全て考えます。スイングの情報も取り入れますし、動画を撮ってチェックもします。その上で自分の中でどれが合うかを決めて、やってみてダメだったら次にいき、良かったら残す。その繰り返しです。ですから調子が悪いとかがあまりなくて、「コレは上手くいった、いかない」だけ。

―元に戻れなくなるようなことはないですか?

スイングをいじるときも一つのことしか変えません。2、3カ所を新たに試すと、ワケが分からなくなってしまいますから。クラブ試すときにヘッドとシャフトを同時に試さないのと一緒です。

―他の選手のスイングも見たりしますか?

はい、参考にします。ただ、大きい選手はスピードが出るのは当たり前なので、体の大きさが似ていて飛ぶ選手のスイングは「どうやっているのかな?」という気持ちで見ます。先日も桂川くん(桂川有人)と同組だったので、どんなトレーニングしているのかなと、スイングより体の使い方を見ていました。本人にも質問させてもらって。

―どのような会話を?

どのぐらいスピードが出るのか、どんなトレーニングをしているのかなど、いろいろ話をしました。彼に話を聞いて、「あ、これぐらいまで行っていいんだ」と思えたのは大きかったです。

「分厚く当たっているかどうか」をいつも気にする

―スイング中、具体的に意識していることなどは?

あんまり考えてないんですよ。唯一考えているのは「どう当たるか」だけ。入り方しか意識していません。

―当て方が一番大事?

厚く当てられていればボールをコントロールできている。かすっているような球は好きじゃなくて、分厚く当たっているかどうかをいつも気にしている。厚い当たりはいいスイングができた証拠ですから。

「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
基本はフェード。ホールに応じてドローボールも打ち分ける

―昔からその考え方?

そうですね。球がねじれるかどうかはインパクト次第。ウェッジにしてもアイアンにしても、インパクトが良ければいい音がするじゃないですか。最初は「なんでその音が出るのか」ってけっこう研究して、インパクトから逆算して考えてきました。矛盾しているかもしれないですけど、いいスイングをしたらいいスコア出るかって言ったらそうじゃない。ただ、当て感があるやつはゴルフが上手いと思います。

―当て感の上手い選手…例えば?
(スコッティ・)シェフラーとか当て感がすごいですよね。あんなスイングしていても、インパクトがすごい。

―生源寺選手が目指すのはそこ?

そうですね。そこ(当て感)を意識して、結果、スイングが安定すればいいんじゃないかなって思っています。“こういうボールが打ちたい”を、毎回再現できればいい。こういう球を打ちたいが先にあって、その次にスイングがくる。ですから毎回同じスイングはしていなくて、ロードローを打つときとフェード系の球を打つ時のスイングは全く違います。

朝の練習は「右」から 試合後の練習は「左」から

―なるほど。では練習場ではどんなことを意識していますか?

まさに試合を意識した練習です。「何ヤード打つ」って、毎回決めてから球を打っています。その上で自分の感覚とボールがどれだけズレているのかを確認しています。

―昔からやっているドリルなどはありますか?

ドリルとかはないですが、打撃レンジのどっち側から打つとかはあります。試合の日の朝は右側から打って、試合が終わったら左側から打つ。

「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
朝の練習、一番右側で打つ生源寺

―それはなぜですか?

基本的には(クラブを)上から入れたくて、下から入るのは好きじゃない。試合前は右の打席である程度ロフトを立てながら打っていき、ダウンブローの度合いを確認する。試合を通して打ち込みがきつくなってきますから、終わった後は左側の打席で打ってバランスを取っています。その週のコースの芝生の感じでも同じように打席を変えていますよ。洋芝だったり、ヘッドが刺さりやすい芝の時は、右から打つと思いっきり刺さりやすいので、左から打つようにしています。

―同じように見えて微妙な変化が必要なんですね

洋芝だったら洋芝なりの打ち方があります。ですから北海道にいったら打ち方も微妙に変わるし、「今週はこうだよね」の変換がいる。もちろんウェッジなどのクラブ選択も変わります。コースに応じたやり方があるので、普段からそれを探しておいて、ストックを増やしている。それが引き出しだと思うんです。フェアウェイの刈り高ひとつでも打ち方が変わるし、「今週はこっちがハマりそうだな」って、気持ちよく打てる方法が必ずあるので、それを週の早めに見つけるのが大事だと考えています。

洋芝には洋芝にあった打ち方があると生源寺は考える
洋芝には洋芝にあった打ち方があると生源寺は考える

◇◇◇◇

さすが賞金ランキングトップに立つ選手。ここまでいろいろなことを考えてゴルフをしているのか。生源寺の練習は無駄なボールが一球もなく、一つひとつの行動にすべて理由があるように見えた。常に「いいものはないか」を探して引き出しを増やす作業。合うものは即座に取り入れ、合わないものは排除していく。これは、過去に見てきた強い選手たちが自然とやっていること。だが、実際に実行できる選手が少ないという事実は、最後に触れておきたい。(取材・構成/服部謙二郎)

最後にもう一度。生源寺龍憲のフェードスイングをご覧ください

「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
基本はフェード。ホールに応じてドローボールも打ち分ける
「スイングは気にしない。唯一考えるのはインパクトの当て感だけ」スイングセルフ解説/生源寺龍憲
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